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太陽光発電について考える

 太陽光発電所を建設する動きがいろいろと大きくなってきましたね。例えば京セラは、IHI、みずほコーポレート銀行と共同で、鹿児島に70メガワットの太陽光発電所を建設すると発表しました。敷地面積は127ヘクタール(東京ドーム27個分)にものぼる大規模なもので、ここで使用されるソーラーパネルは、昨年日本国内で出荷された産業用太陽電池の約4割に相当するほどの量だそうです。

 いよいよ自然エネルギーの時代の幕開けになったなと、感慨深げに思われる方も多いかと思いますが、冷静に見ていくと、そんなに手放しで喜べるものでもないことがわかります。

 まず、70メガワットというのは、一見するとものすごく大きな発電容量のように思えますが、通常よく用いられる「万キロワット」で表示すると、7万キロワットにすぎません。しかも、この7万キロワットというのは、真夏の快晴の正午頃といった、太陽光発電を行うのに極めて理想的な状況が全て揃った時の発電量にすぎません。この発電所が生み出す発電量は、恐らく年間で8000万キロワット時程度だと思われますが、現在の日本の年間発電電力量は1兆2000億キロワット時ですから、ここから単純計算をすると、年間発電電力量の15万分の1を賄うだけの容量しかありません。
1年間に日本国内で出荷された産業用太陽電池の約4割に相当する量を使っている割には、生み出せる電力量はあまりないことに気がつくと思います。

 この鹿児島の太陽光発電所を例えば、東京電力の東扇島火力発電所と比較してみましょう。東扇島火力発電所は敷地面積が47ヘクタールで、鹿児島に建設予定の太陽光発電所の127ヘクタールの2.7分の1しかありませんが、出力は200万キロワットと、太陽光発電所の7万キロワットに対して28.5倍もあります。発電所の同一面積あたりの最大出力でみて、77倍の違いになります。しかも、火力発電は太陽光発電とは違って、気象条件などに左右されずに出力を調整でき、必要とあればほぼ最大出力の状態で運転を続けることもできますから、実質的な単位面積あたりの発電量は数百倍の違いになるはずです。

 鹿児島の太陽光発電所は投資額は250億円にのぼるそうです。IHIの所有地を利用するそうですから、土地の取得費は投資額には入っていないと思われます。仮に同レベルの太陽光発電だけで日本の年間発電電力量を賄おうとした場合には、どのくらいの投資額が必要になるでしょうか。
250億円×15万で計算すると、3750兆円という金額が算出できます。太陽光発電の場合、耐用年数は20年ほどだと思われますが、仮に30年だとしても、年間で125兆円の投資が必要になります。そしてこれはもちろん、ソーラーパネルを敷くのに適した場所があってのことです。そして、実際に必要な敷地面積を出そうとすると、20万平方キロメートルほど(日本の国土面積の半分以上)が必要となります。

 こうした私の計算に対しては、「太陽光発電がまだまだ普及していないから、パネルの生産費が高いのだ」といった批判があるかもしれません。では仮に生産と設置に関わる投資額が1/3になったとしても、年間40兆円の投資額が要求されることになります。この発電システムの効率性のレベルがどの程度であるか、理解できるでしょう。そして、この発電システムが生み出す電力コストがいかに高いかも、想像できると思います。

 私たちが電気を必要とするのは、夏の晴れた日だけではありません。夜間だって必要になります。自然条件の変化に出力が翻弄され、夜間は初めから発電が望めない太陽光発電を、本当に日本で普及させようということが正しい考えかどうか、冷静に計算した上で考えたいものです。

 気分や雰囲気に流されると、とんでもない損を被ることがあります。例えば、この1年間、国内で原子力発電が行えない環境に置かれたために、化石燃料の輸入代金が激増しました。具体的には2011年全体で、原油・LNGなどの鉱物性燃料の輸入量は4.4兆円増えました。これによって日本の貿易収支は赤字に転落したわけです。膨れあがった政府の借金を何とかするために、政治生命を賭けるという首相がいるもとで、これほどの大金を日本から失わせてしまう政策が行われている矛盾は、どう考えればよいのでしょうか。

 気分や雰囲気に流されてしまい、原発を止め、自然エネルギーにシフトすることが疑いなく正しいと思ってしまう立場は、あまりに無定見ではないかと、個人的には思います。

 さらに、原子力発電が止まったせいで、国内の優秀な原子力技術者の行き場所がなくなりました。こうした人材を韓国などが迎え入れようと働きかけを行っており、日本の独自技術がまた易々と海外に流出する可能性が高まっています。そうなるように意図的に政府が動いているとまでは思いませんが、そのような結果を引き起こしていることについての危機感を、政治家の方々もマスコミの方々もほとんどお持ちではなさそうに見えることについては、不安を感じざるをえません。

 福島第一原発の事故の教訓を活かすにはどうすればよいのかは、建前などにとらわれずに正確に検討していくことはもちろん必要です。これまでの原子力政策に批判的だった専門家たち(小出氏や武田氏など)の意見も積極的に取り入れながら、どうすれば国民に納得のいく原子力利用が可能になるのかという議論を、きちんと煮詰めるべきだとも思います。そして、そのような方向に動いてこなかった政権のあり方も、当然攻められるべきだと思います。

 ただその一方で、日本の利益をできる限り失わないようにするためには、どういう政策を考えるべきかということについて、しっかりとした数字やデータに基づいて考えていかなければならないのではないかと思っています。
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