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今の日本でインフレの加速化はありえない!


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 「物価上昇率が2%に達するまで、無制限に金融緩和をする」といった話が、時々聞かれるようになりました。これについては言っていることがよくわからないといった人もいるのではないかと思います。そこで今回はこのことを考えてみましょう。

 まず、「無制限に金融緩和をするなら、無制限に物価が上がるのではないか。2%で収まらないのではないか。」という疑問から考えてみましょう。

 この場合の「無制限に」というのは言葉のあやにすぎないと思って下さい。自動車で例えれば、「時速100キロに達するまで徹底的にアクセルをふかす」というのと、同じような感じです。実際にはどんなに徹底的にアクセルを踏み込んでも、ペダルの限度以上には踏み込むことはできませんね。それと同じことで、「現実的に使える手段はすべて動員して徹底的に金融緩和を行う」というのが、「無制限な金融緩和」ということの意味です。

 上記の理解ができたとしても、さらなる疑問がわいてくるかもしれません。「そうやって徹底的に金融緩和を行って、物価上昇率が2%にまで上がった時に、そこでめでたくインフレが止まるとは限らないのではないか。インフレは勝手に加速していく心配はないのか。」というような疑問です。

 この疑問を持つ方には、それ以上どんどんとインフレが加速する気配があれば、その時には金融引き締め政策を採用すればよいということを、まず考えてもらいたいところです。目標が物価上昇率2%ですから、それ以上に物価があがりそうならば、当然引き締め政策を実施することが前提だからです。

 そうはいっても、「いやいや、インフレというものはいったん暴れ始めたら手が付けられなくなる恐れのあるものではないのか。第一次世界大戦後のドイツのインフレとか、第二次世界大戦後の日本のインフレとかの時には、なかなか抑制できなかったではないか。」と思われる方もいるかと思います。確かにこういった歴史的事実があるのは確かですから、心配になるのは無理もありません。このように暴れだしたら手のつけられないようなインフレを、ハイパーインフレと呼ぶと考えて下さい。(ハイパーインフレは、経済学者ケーガンの定義では、月率50%、年率13000%以上の物価上昇のことです。国際会計基準では3年間で累積インフレ率が100%のことですから、年率平均26%以上のインフレだということになります。こういう数字に基づく定義もきちっとした議論をする際には必要になりますが、通常のインフレと違って、インフレがインフレを呼んで大暴れするタイプのインフレをハイパーインフレとするとした方が、世間的なイメージは近いと思います。)

 ところで、インフレというのはそもそもどうして起こるのでしょうか。おおざっぱすぎるのを承知の上でざっくりと言ってしまえば、需要の方が供給よりも強い時に、インフレが起きると考えることができます。買いたい力が売りたい力を上回ると、インフレになるということです。

 このことを逆にとらえると、需要を超える供給力がある国では、インフレは起きにくいということです。今の日本はデフレ不況で苦しんでおり、供給力がフルに使われている状況ではありません。休んでいる工場も多いですし、失業者もたくさんいます。ですから、仮に需要が多少高まったところで、供給力をオーバーすることはありません。仮に需要が大幅に伸びて供給力をオーバーするような事態に陥ったとしても、その時に不足した供給力を補っていけるように生産力を拡大させていく余地は、日本には十分にあります。つまり、現代の日本においては、需要に対して供給力が圧倒的に不足するという事態が生まれることは、よほどの天変地異でも起きない限りは、考えられないわけです。

 これに対して、終戦直後の日本はどうだったでしょうか。アメリカ軍の空襲によって日本の国土は焼け野原にさせられ、工場などは跡形もなく消え去っていたわけですから、国民の需要を支えるだけの供給力が圧倒的に足りなかったわけです。焼け野原になっていただけでなく、お金も建設資材も機械類もなかったわけですから、工場を新しく建てることもなかなか思うようにはいきませんでした。そうした基礎的な供給能力が失われてしまった時には、需要の方が供給に比べて圧倒的に強いために、物価はとめどなく上昇していくことになります。しかしどれほど物価が上昇しても、破壊された供給力がなかなか回復することがないとすれば、供給力不足は継続し、物価はさらに上がり続けていくことになります。「インフレがインフレを呼ぶ」というのは、こうした状態のことだと考えて下さい。

 したがって、このような「インフレがインフレを呼ぶ」ような激しいインフレは、第一次世界大戦後のドイツとか、第二次世界大戦後の日本といった、供給力を大幅に失ってしまった国において生じるものなのであり、国民の需要を普通に満たせるようになった国において起きるものではないのです。

 第二次世界大戦後の日本のインフレを、国債の日銀引き受けによる通貨膨張のせいにする議論がありますが、それは現実的には違うでしょう。戦前において戦費の調達のために、国債を直接日銀に買わせるようになったのは、1932年からのことです。もし日銀による国債の直接引き受けがインフレの直接的な原因であったなら、これ以降激しいインフレ状態が出現していないとおかしいはずです。しかしながら、実際には、下図に示されているように、終戦の年である1945年になるまで、日本に激しいインフレが押し寄せた形跡はないのです。




 戦時の統制経済のために、必需品の価格が統制されていたという事情も幾分考慮しなければならないとは思いますが、いずれにせよ、国内の需要を満たすだけの供給力が足りている時には、無茶苦茶なインフレは起きないものなのです。

 国内需要を満たすだけの供給力がある場合には、手のつけられないようなインフレの加速化は起こりえないということについて、ご理解いただけたのであれば、クリックをお願い致します。


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コメント

1. こんばんは!

ハイパーインフレなんて騒ぎ立て、安倍さん批判です。
物が、満たされてる日本にハイパーインフレなんて普通に考えても起きないと思うのですが。

2. Re:こんばんは!

>syo-tenさん
まさにそういうことですね。
インフレには私が記事に書いた側面以外の要因も関係してくるところもありますが、基本はやはり需給関係で、供給力が確保されている中では原理的にハイパーにはなりえませんね。ハイパーを煽る議論は本当にやめてもらいたいです。

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