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企業の無駄の削減と国家の無駄の削減は真逆のこともある!


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 今回は「無駄の削減」について考えてみます。

 まずは具体例からです。不況で売り上げが3割ほど落ちた製造業の会社を頭に浮かべてみて下さい。この会社には3つの工場があったとして、工場の運営はどうするのが最も効率的でしょうか。

 1つの工場は休止させて、2つの工場に絞って生産をするというのが、どうやら適切ではないかと考えられませんか。必要となる従業員の数をバッサリと削減できますし、稼働している工場の稼働率を下げなくてもすみます。原材料の調達も、稼働している工場だけに一度に大量に送ってもらう方が、少ない量を分散して送ってもらうよりメリットがあるはずです。

 1企業で見れば、これが最も適切な選択肢だと言ってもよさそうに思えます。コスト高となる要因をバッサリ削って、なるべく製造原価を低くする形で需要減という新たな状況に対応しているからです。

 もちろん、成長する産業もあれば、衰退する産業もあり、勝ち組の企業もあれば、負け組の企業もあります。衰退産業で人手が余ったとしても、それが成長産業での雇用として吸収されるならば、大きな問題にはならないでしょう。負け組の企業で働いていた方が勝ち組の企業に雇用されるなら、これも大きな問題にはならないでしょう。

 しかしながら、国全体がデフレ不況に陥り、全体的な需要不足に陥っている場合には、成長産業や勝ち組企業が吸収できる人員は、たかがしれたものです。明らかに需要と供給のバランスが崩れていて、デフレのスパイラルに入り込んでいる場合には、企業が「無駄の削減」を行うのは、国全体で見た場合には、却って状況を悪化させます。

 デフレ不況で売り上げが減少 ⇨ 企業は無駄の削減で雇用減少 ⇨ 勤労者の購買力が低下して需要減少 ⇨ デフレ不況が更に進んで売り上げが減少 ⇨ 企業はさらに無駄の削減で雇用減少 ⇨ 勤労者の購買力がさらに低下して需要減少 ⇨・・・という悪循環に陥ってしまうというわけです。

 厳しい経営環境にさらされている中で、企業が生き残りを考えて、できるだけ「無駄の削減」に取り組もうとするのは当然です。それがデフレ状況という直面している経営環境に対処する上で最適な行動だからです。

 しかしながら、それが国家全体の経済で見た場合には、デフレの悪循環を強化させる役割を果たしていることになります。

 デフレ不況を放置した結果として、国内に稼働していない工場がたくさんあり、働けなくなった人たちがたくさんいるという状況が出現します。そしてこうした稼働していない工場や失業者は、うまく使えば有効活用できたはずの資源だと見なすこともできるはずです。つまり、個別の企業が「無駄の削減」に徹底的に取り組んだ結果として、遊休施設や失業者という膨大な「無駄」が社会的に発生しているということになるわけです。個別企業がそれぞれ「無駄の削減」にせっせと取り組んだ結果として、社会全体として膨大な「無駄」がかえって生まれてくるという視点を、ぜひ持ってもらいたいと思います。

 こうした社会全体に生まれた膨大な「無駄」をなくすために、個別企業の頑張りに期待できるでしょうか。個別企業が世の流れに逆らったことをやろうとしても、しっぺ返しを受ける確率は極めて高いでしょう。そしてしっぺ返しを受けた時にはその企業は淘汰されることになります。そんなリスクを引き受けて企業が行動することを期待するのは不適切です。

 ところが、こうした膨大な「無駄」をなくすために積極的に行動できる組織が1つだけあります。それが政府です。政府が行うべき「無駄」をなくす行動とは、できるかぎり失業者にきちんと働ける職を与え、遊休施設をなるべく稼働できるようにしていくことです。

 「民間が絞りきったタオルをさらに絞るようなことをやっている時に、公務員たちはぬくぬくとしていてけしからん!」という批判があったりします。確かに厳しい環境にあってやりたくないことをどんどんとやらないと生きていけない状況にあれば、そのようなこととは無縁に見えがちな公務員に批判の目を向けたくなるのは、気持ちとしてはよく理解できます。

 しかしながら、デフレ不況の時に、政府が「無駄をなくす」と称して公務員の削減を行うとすれば、それはデフレ不況をより深刻化させることはあっても、デフレ不況を解消する方向にはつながらないという仕組みに、私たちはもっと自覚的になるべきではないでしょうか。

 個別企業にとっての無駄の削減と、国家にとっての無駄の削減は意味が違うということをご理解いただけた方は、クリックをお願い致します。
 

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