記事一覧

デフレの問題を、銀行の貸出姿勢の問題に矮小化してはならない!


社会・経済(全般) ブログランキングへ

 新銀行東京という銀行がありますね。銀行の貸し渋りに苦しめられている中小企業に対して、経営相談にも乗りながらきめ細やかなサービスを行っていくという理念のもとに、石原都知事(設立当時)の肝いりでできた銀行です。適切な資金注入によって中小企業が元気になれば、それは日本経済再生の原動力になるとの触れ込みでした。

 「既存の銀行は十分な担保がないと貸さないというが、そんなことなら誰でも貸出はできる。担保がないところに対して十分審査をし、必要なアドバイスも与えながら、中小企業の経営者と同じ目線に立っていくようでないと、真の銀行業とはいえない」・・・このような感じのことが設立当時に語られていました。また社会としても、こうした新銀行東京のスタイルはかなり高い評価をされていたように思います。行員の募集倍率は50倍を超え、大変やる気に溢れた有能な方々がこの銀行には集まっていたともいえるでしょう。

 しかしながら、2005年の開業から4年で累損は1000億円を越え、大幅な軌道修正が図られることになりました。

 同様の趣旨のもとに設立された日本振興銀行というのもありましたね。こちらは完全に経営破綻をし、消滅に追いやられました。

 仮に一般の銀行の能力不足のために貸出が進まないことが問題であるなら、精査する能力を持つ銀行が現れて積極的な貸出を行うことは、意味のあることだったでしょう。しかしながら、一般の銀行が無理な貸し剥がしをしているわけではなく、新たに貸し出せる健全な融資先が存在しないということが問題であるとすれば、一般の銀行が貸出をためらった企業に貸出を行う銀行が現れても、不良債権だらけになるだけで終わることになるはずです。そして、新銀行東京も日本振興銀行も、不良債権だらけになってしまったことからすれば、一般の銀行の審査能力に問題があるから、貸出が伸びていないわけではないことは、すでに明らかになったかと思います。

 さて、以上の経緯を頭に置いた上で、大阪府の松井知事の以下の発言について、皆さんはどう思われるでしょうか。

 「金融機関にはお金はありあまっています。しかし、そこから先に貸出が回っていかない。これはやっぱり金融のプロの人たちが新しい商売をしたい、起業したい人たちの可能性を見つけられていないというところに一番の問題があります。だから今、お金の借りたい企業が銀行に行きますとね、一番訊かれるのは、保証協会が保証できますか?であると。これでは銀行は全くノーリスクでお金貸しているようなものですから、この変の感覚をしっかり変えていっていただく、こういうことに力を尽くさないといけないと思います」(以下の動画では、2分27秒あたりからです。)



 すでに破綻が証明されたようなことを、今更ながらに繰り返しているようには感じなかったでしょうか。

 需要不足によって経済が縮小サイクルに入っているデフレ経済下では、需要不足を埋める施策がどうしても欠かせません。一般企業がリスクを背負って需要不足を埋めるということが期待できないほど大きな需要不足が生み出されている環境では、国家の役割がどうしても大きくならざるをえません。デフレギャップを埋めるための大規模投資が欠かせないわけです。

 デフレギャップを埋めるだけの大規模な公共投資には反対しつつ、銀行の貸し出し姿勢を改めさせるように行政指導をすればうまくいくというような議論は、もうやめにした方がよいかと思います。

 笹子トンネルの天井崩落事故などもあって、公共投資の必要性はそれなりに認められるようにはなってきましたが、優先順位をつけて絞り込んでやるべきだという議論がよく見受けられます。しかしながら、デフレギャップを埋めるだけの需要を国家が作り出していかない限り、デフレスパイラルから日本が抜け出すことはできないのですから、そんな中途半端な政策では克服できないということに、私たちは気がつくべきではないでしょうか。

 平成の高橋是清の登場を待ち望むという方は、クリックをお願いいたします。


社会・経済(全般) ブログランキングへ


 
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

朝香豊AY

Author:朝香豊AY
FC2ブログへようこそ!