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NHKスペシャル「日本国債」は、大きな誤解に基づいて作られたものだ!(8)


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 引き続き、NHKスペシャル「日本国債」について考えていきましょう。今回は8回目です。

 前回は、日本が外国に最も多くお金を貸している債権国であるから、国内の債務を国内のお金で賄える力が最もある国であるということを書きました。しかしながら、日本が今後高齢化していく中で、今後もそんな力をずっと持ち続けていけるのかは疑問ではないか、という声もあるでしょう。このような考えについて、今回は考えてみましょう。

 この問題を考える上で大切なものが「経常収支」というものです。「経常収支」とは、端的に言えば「稼ぎ」です。外国が日本から稼ぐ金額よりも、日本が外国から稼ぐ金額の方が多い場合に、経常収支は黒字になります。逆に、日本が外国から稼ぐ金額より外国が日本から稼ぐ金額の方が多ければ、経常収支は赤字になります。そして、経常収支が黒字であると、稼いだ分のお金を日本は結局外国に貸し出すことになりますから、対外純資産は増えていく関係にあります。逆に経常収支が赤字になれば、日本の対外純資産はその分減っていく関係にあります。

 経常収支には4つの柱があります。1つ目は貿易収支です。外国との貿易を通じて日本が外国から稼いだ金額の方が大きいか、外国が日本から稼いだ金額が大きいかを見たものです。2つ目はサービス収支です。貿易がモノのやりとりであるのに対して、サービスはモノ以外のやりとりです。例えば旅行というのは、お金を出した代わりにモノがもらえるわけではなく、行きたいところに移動させてくれるサービスです。特許使用料というのも、お金を出した代わりに特定の技術を使えるというサービスの代金ですね。日本が外国に提供したサービスが大きいか、外国が日本に提供したサービスの方が大きいかが、サービス収支です。日本人は海外旅行にでかけることが多いために、サービス収支は年間で2兆円程度の赤字だと思ってください。3つめは経常移転収支です。これはモノやサービスなどの引き替えになるものがなく、お金が動く際の収支です。日本に出稼ぎに来ている外国人が国内の家族に送金する場合、外国から引き替えに何かもらうということなしに日本国内にあったお金が外国にそのまま移りますね。また、日本が発展途上国に無償援助を行う場合にも、日本のお金が発展途上国に、外国から引き替えに何かもらうということなしにそのまま動きますね。これが経常移転収支です。経常移転収支も年間で1兆円ほど赤字です。そして4つめが所得収支です。これは外国に貸しているお金から得られる利益だと思って下さい。例えば、アメリカの国債を保有していれば、アメリカの国債の利息は日本の所得収支になります。

 さて、経常収支の4つの柱のうち、サービス収支は年間で2兆円程度の赤字であり、経常移転収支も年間で1兆円程度の赤字であることは確認しました。では、貿易収支はどうなっているでしょうか。

以下のグラフを見て下さい。



 日本の貿易収支は、ほぼ一貫して黒字基調が続いてきたのですが、2011年には赤字に転落し、2012年はその赤字幅も6兆円を越えたのは確実となっています。(まだ2012年が終わって日が浅いために、2012年の統計結果は最終的にはまとまっていません。)2012年にこれほど大きな貿易赤字になってしまったのは、国内の原発を停止して、国内の電力を火力発電ばかりに頼る構造に切り替えたために、火力発電の燃料である天然ガスなどの輸入が10兆円ほど増えたことが原因です。原子力発電を停止させるという政策的判断によって、日本のお金がこんなにも多く失われる結果になっていることは、そのことの是非は別にして、頭に置いておきたいところです。ともかく、2012年の貿易収支が仮に7兆円の赤字だとすると、貿易収支、サービス収支、経常移転収支の合計で、10兆円という巨額の赤字が生まれていることがわかります。

 では、最後の柱である所得収支はどうなっているでしょうか。実は、2011年の所得収支は14兆円を越える黒字です。2011年末段階で253兆円にも及ぶ対外純資産を日本は抱えているために、そこから生み出される収益もこれだけ大きくなっているわけです。つまり、貿易収支、サービス収支、経常移転収支の合計の赤字を補って余りある黒字を所得収支が稼いでいるということがわかります。そして、日本の対外純資産は世界最大になっているほど巨額であるため、比較的安定しています。

 リーマンショックやユーロ危機を通じて、欧米の金利が低迷するようになっているため、対外純資産がいくら多いと言っても、所得収支の黒字は今後減っていく傾向にあるとはいえるでしょう。その点では完全な楽観も間違っているかもしれません。それでも、これまで築き上げてきた対外純資産がもたらす所得収支は非常に大きく、これが日本を支えていることをしっかりと確認しておきたいところです。また、たとえ経常収支がわずかながら赤字に転じたとしても、それがこれまでに蓄積した対外純資産をおいそれと食いつぶすことはできないでしょう。

 ところで、ここで私たちが忘れてはならないのは、私たちの判断で日本の進路を大いに変えることができるということです。日本の経済を強化して、経常収支の黒字を今後も続けていけるようにするためにはどうすればよいのかという観点で政策を練っていけば、それが容易に実現できる環境に日本は置かれています。国債の発行残高などに惑わされずに、日本をどうすれば強化できるのかということを真剣に考えさえすればよいのです。だとすれば、その方向性を考えずに国債の破綻を心配するというのは、やっていることが違うのではないかと思います。

 国債の破綻という雑音に惑わされずに、日本をゆたかに強化することを真剣に考えるべきだと思われる方は、クリックをお願いいたします。


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コメント

1. お疲れ様です

これは、凄く解りやすいです。
対外純資産から生み出される収益が凄いですね。

これのおかげで成り立ってるんですね。

2. Re:お疲れ様です

>syo-tenさん
アメリカはもっとすごくて、対外純資産が大赤字であるのに、所得収支は日本と同じくらい稼いでいます。どれほどアメリカがあこぎなことをやっているのか、日本がどれほどおとなしいか、こういうところからもわかります。

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