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NHKスペシャル「日本国債」は、大きな誤解に基づいて作られたものだ!(12)


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 引き続き、NHKスペシャル「日本国債」について考えていきましょう。今回は第12回です。今回で最後とします。

 番組の最後の方で、サラリーマンと酒場のマスターとの、次のような会話が交わされます。

サラリーマン 「借金は減らない、頼みの日銀も大変だなんて、じゃあどう
        すればいいんですか?」

マスター   「俺に訊かれても困る。でも実際のところ、今はヨーロッパ
        もアメリカもぱっとしなくて、お金の行き場は他にない。
        その結果、皮肉にも、借金漬けの日本国債が安全だと言っ
        て買われているんだ。」

サラリーマン 「じゃあ他に行き場ができたら、日本の国債は…」
マスター       (お手上げの表情をする)
サラリーマン 「そのXデイはいつ来るんですか?5年後?」
マスター       (首を振る)
サラリーマン 「来年?」
マスター       (首を振る)
サラリーマン 「明日?」
マスター       (首を振る)
サラリーマン 「じゃあ僕らどうしたらいいんですか?」
マスター   「私が答えられるのはここまでだ。」
サラリーマン 「そんな…」
マスター   「どうすればいいか、誰もが満足できる答があった時代はもう
       終わりなんだ。もはや目の覚めるような解決策はない。入るを
       はかりて出ずるを制す。入るものを増やすのか、増えないとい
       うのなら出ていくものを抑えるしかないのか。そういう当たり
       前のことを当たり前に実行するしかないんだ。」


 今回はこのマスターの考えについて考えてみましょう。

 まず、「ヨーロッパもアメリカもぱっとしなくて、お金の行き場は他にない。その結果、皮肉にも、借金漬けの日本国債が安全だと言って買われている。他に行き場ができたら、日本国債は破綻することになる」というところを考えてみましょう。

 このことを考えるのに、日本国債は日本円で発行されているということを確認しておきたいところです。ドルやユーロで発行されているわけではありません。

 さて、Aさんが今日本国債を持っていたとします。しかし、Aさんは日本国債に不安を覚え、アメリカの国債に乗り換えた方がいいんじゃないかと思いました。この時、Aさんはどういう行動を取ることになるでしょうか。

 ①保有している日本国債を日本円で売ります。
 ②日本国債を売って手にした日本円を売って、米ドルを買います。
 ③手に入れた米ドルでアメリカ国債を買います。

 ところで、Aさんが日本円を売って米ドルを買った時に、Aさんに米ドルを売って日本円を買ってくれる人がいなければなりません。そうでなければ売買は成立しませんから、Aさんはアメリカの国債を買いたくても買えなくなります。Aさんに米ドルを売って日本円を買った人をBさんとしましょう。Bさんはその手に入れた日本円を銀行などに預けるとかするでしょう。Bさんが銀行などに預けずに車を買うなどして使ってしまったとしても、Bさんが使った日本円を手に入れている別の人が必ずいるはずです。つまり、日本円の持ち主は変わっても、日本円は相変わらず存在し続けているということです。

 そして日本は膨大な対外純資産を持ち、経常収支も黒字の国です。これは、国内の貯蓄の方が国内の借入よりも大きいということを単純に意味します。そしてこの国内の貯蓄も国内の借入も、原則としては日本円ですね。ということは、ヨーロッパやアメリカがパッとしようがしまいが関係なく、日本円の貯蓄が日本円の借入よりも多い状態に変わりはないということになります。余剰の日本円は必ず日本国債を購入する資金として使われることになり、日本国債は今後も安定して消化される以外に選択肢はないことになります。

 繰り返しますが、対外純資産を保有する経常収支黒字国では、国債を含めた国内の借入合計を上回る過剰貯蓄が安定的に発生しているので、国債は安定的に消化される以外の選択肢はありません。アメリカやヨーロッパの経済がどうであるかということとこのことは全く無関係です。

 では、もう一点の「入るものを増やすのか、増えないというのなら出ていくものを抑えるしかない。そういう当たり前のことを当たり前に実行するしかない」という点についてです。これは「増税をするか、歳出削減をするしかない。それがどんなに辛くてもやっていくしかない」という意味なのでしょうが、これは政府の財政赤字を一般家庭の話と同レベルに語った間違った理解です。

 何度も繰り返しますが、借りている金額の合計と、貸している金額の合計は、常に一致します。「民間」(「国民」+「企業」)において、貯蓄が多いけれども借入が少ないという状態になっているとすれば、「民間」は貯蓄過多となります。これとバランスを取るためには「政府」がその分借入をしていなければなりません。これが財政赤字です。

 財政赤字が大きく、国家の累積債務の対GDP比が高まってしまうという時には、「民間」の貯蓄過多のレベルが大きすぎるということを意味します。つまり、積極的な投資が行われる際に必要な「借入」があまり行われていない状態にあるということです。特にデフレ不況下では、企業が生き残りをかけてリストラに励むことはあっても、バンバン雇用を拡大するということはありえません。つまり、国内には利用されていない人材や設備が余っているということになります。こうした人材や設備をきちんと働かせることができれば、国家は最大の力を発揮することができます。従って、財政赤字という局所的なところに目を向けるのではなく、人材や設備をきちんと働かせることに目を向けるべきです。この結果として景気が回復し、「企業」が今後のマーケットを有望と考え、積極的な投資に踏み切るようになったとき、「民間」の貯蓄過多のレベルは下がっていき、財政赤字も小さくなっていくことになります。

 さて、12回に渡って様々にNHKスペシャル「日本国債」を取り上げてきました。日本国債は決して危険ではありません。日本政府に求められるのは、デフレ不況を終わらせるための正しい財政・金融政策を打つことだけです。財政赤字ばかりに目を取られてはいけません。そんなことがわかってもらえたなら、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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