記事一覧

歪みつつあるアベノミクス


社会・経済(全般) ブログランキングへ

 アベノミクスが歪み始めています。このことは、昨日発表された政府と日銀の共同声明にも表れているように、私には思えます。今回はこの点について述べていきます。

 確かに「日本銀行は物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」とし、「日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」との文言が入ったのは、画期的だったといえるかもしれません。共同声明に合わせて、日銀は無期限の国債等の購入も表明しました。

 ただ、この無期限の国債購入については様々な疑問がつきます。まず、従来にしても日銀は継続的に国債を購入してきました。これを単に続けるという意味でしかないとも、意地悪な立場に立てば解釈できます。恐らくは、これまでは買い入れの期限を定めて「断続的」買い入れていたのをやめるというようなことだと推察しますが、従来とどのように違うのかは、明確には明らかにされていません。念のためですが、共同声明に書かれているのは「無期限」であって「無制限」ではありません。

 また、この無期限の国債購入の開始時期は平成26年初めからとのことです。平成25年初めからではないのです。消費者物価の前年比上昇率2%を「できるだけ早期に実現することを目指す」としながら、なぜその政策の開始までに1年も待たなければならないのでしょうか。

 さらに、日本銀行は「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」のだそうです。「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因」とは、恐らくはバブル経済化の危険性について論及したものだと思われます。要するに、日銀がバブル経済化の恐れがあるかを確認しながら金融政策を行うことを認めたわけです。従来もバブル経済化への懸念から、日銀は思い切った金融緩和に二の足を踏んできました。こうした従来の日銀のあり方への抜本的な変更を迫ったものには、どうもなっていないようです。

 そして、アベノミクスの3本柱(「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」)の中で、最も重要な柱である「機動的な財政出動」にブレーキをかけさせようとするかのような文言さえ挿入されました。具体的には以下です。

 「政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」

 今は財政政策のアクセルを思い切って踏み込む必要があるときなのに、なぜにここにこのようなブレーキを加えるような文言を加えたのでしょうか。

 以上を通じてわかるのは、金融緩和についても実質的には随分と後退をし、財政政策にも枠をはめる方向性が打ち出されてきたということです。

 クルーグマンは Japan Steps Out(日本、踏み出す)と呼んでくれましたが、これでは Japan Steps In Again(日本、もとに戻る)ではないでしょうか。

 そして政府は、「革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する」のだそうです。「大胆な規制・制度改革」を行い、「税制」を思い切って変更し、「経済構造の変革を図る」というのでは、小泉構造改革路線と大差ないようにも感じます。こうした行動は「日本経済再生本部」の下で行われるそうですが、「日本経済再生本部」はその「中間とりまとめ骨子」において、「世界水準を目指した法人税の大胆な引き下げ」とか「企業の活動のしやすさを世界最先端にするための国際先端テスト」の導入とか、「新陳代謝・構造転換の促進」などを謳っています。

 国内投資を積極化してくれる法人に思い切った設備投資減税などを行うというのならわかりますが、一律の法人税減税を行って何をやりたいのでしょうか。企業の内部留保(=貯蓄)を拡大して、過大な貯蓄と過小な投資のバランスをさらに悪化させて、デフレをさらに強化するような政策を、なぜ今のタイミングで考えているのでしょうか。

 日本の国柄に合った諸制度を構築するというのが、自民党が政権公約に掲げた「日本を取り戻す」ということだと思っていたのですが、これも違っていたようです。「国際先端テスト」を行って、規制のなさで世界の最先端を走りたいようです。つまり、日本固有の規制を撤廃していくつもりのようです。TPPに入らなくとも、TPPに入ったのと変わらないようなことをやろうとしているようにさえ見えるのです。「新陳代謝」なんてのも、乱暴に言えば「古いものはぶっ壊す」ということでしょう。

 アベノミクスが危険な方向に歪められつつあることについて、当の安倍総理がどの程度自覚しているのかはわかりませんが、楽観は許されないと思います。安倍政権をものわかりよく見守っているだけではダメなんだということが理解できましたら、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


社会・経済(全般) ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

1. 今後も大いに参考にさせていただきます

安倍総理は、竹中・吉川・伊藤・丹呉といった連中を“抱き込む”作戦かと思っていたのですが・・・。
この連中が巻き返してきているようですね、「構造改革~、規制緩和~、財政規律~、財政再建~」といった文言を見聞きする機会が増えてきています。
「<自民党政権>に戻ったから、全てがすぐに“バラ色”」というわけにはいきませんね。

それでも×、私は「去年に比べれば、日本は“晴れてきた”」と思っていますが。

<懸念>は<懸念>で、きちんと指摘なさる朝香様のブログを、今後も大いに参考にさせていただきます。

2. Re:今後も大いに参考にさせていただきます

>3saka 脳腫瘍、顔面麻痺、片耳になったが人生悪くないさん
コメントありがとうございます。気になる人選に続き、「骨太の方針」なんてものも言葉そのままに復活してきましたね。
政権交代前の段階で、甘利氏がアベノミクスを理解していない発言をされていましたから、この人が経済財政政策担当大臣に就任したときに、おっかないなあと思っていました。安倍総理と麻生財務大臣だけで乗り切れるのか、疑問です。リチャード・クーあたりを、財政諮問会議の民間議員に入れてもらえたら、随分変わると思うのですが。

3. ふぅー

どうしてこうなったんだろう!
理由が知りたいです。

4. Re:ふぅー

>syo-tenさん
理由については私もよくわからないのですが、考えられるのは以下でしょうか。
1)安倍総理自体がアベノミクスについて、実は深くは理解していなかった
2)安倍氏が総裁に選ばれたとはいえ、自民党全体としては、むしろアベノミクスに反対する勢力が強い
3)「お友達内閣」批判を避けようとして、挙党態勢にしたために、安倍氏と意見の違う勢力を勢いづかせることになった
4)アメリカが水面下で圧力をかけており、中国問題で弱みのある立場から、それに屈した
恐らく、このどれもが関係していると思います。

5. Re:Re:ふぅー

>朝香豊さんへ
そうですか~。
敵が多いという事ですね。

丁寧に教えて頂きありがとうございました。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

朝香豊AY

Author:朝香豊AY
FC2ブログへようこそ!