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サマーズ教授の論に耳を傾けよう!


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 ハーバード大学ローレンス・H・サマーズ教授のことはご存知ですか。サマーズ教授は、父方の叔父にポール・サミュエルソン、母方の叔父にケネス・アローと、二人のノーベル経済学賞受賞学者が親類にいる家系に生まれ、彼自身も弱冠28歳でハーバード大学における終身教授資格を得た天才です。世界銀行のチーフエコノミストとか、米国の財務長官や国家経済会議委員長を努めたこともあり、さらにはハーバード大学学長だったこともある、まさに華麗な経歴の持ち主です。

 かつてはかなり強烈な新自由主義者と言ってもよく、「民営化」とか「自由化」といった言葉が大好きで、経済危機に陥った韓国やインドネシアに構造改革を断行させたときにも、大きな役割を果たしました。

 しかしながら、サブプライムローンの破綻に端を発するリーマンショックやユーロ危機への対応を考える中で、新自由主義的な手法では効果がないことに気がつき、その立ち位置を大きく変えてきました。このサマーズ教授がロイターに寄稿したコラムが話題を呼んでいます。

サマーズ教授のコラム(英語版)

サマーズ教授のコラム(日本語版)

 この中でサマーズ教授は面白いことをいろいろと言っています。

 今後の赤字削減は優先課題であるべきだが、強迫観念となり経済政策を支配してはならない。(中略)インフラや予防医学など高いリターンを生み出し、長期的な財政状況の改善につながる分野への投資を妨げる恐れもある。

 政府の赤字の削減はしっかりと考えなければならないが、必要な分野への積極財政をやっていかないと、経済成長させることができず、かけって財政状況は悪化するということを指摘してくれているわけです。同様の警告をまた別の文章でも指摘してくれています。

 インフレ抑圧が誤った方向に導かれるのと同様に、財政赤字の抑圧も深刻な間違いとなり得る。企業経営者が単年だけの業績をみて行動すれば、結局は株主に有害な結果となってしまうように、政府当局者も問題解決とはならない行動に動きがちだ。その場しのぎの歳出削減が行われると、政府機関によるメンテナンス作業が先延ばしされ、これが後に大きな負担となってしまう。

 財政が不足しているからという理由で、我が国も必要なメンテナンスを怠ってきました。例えば、老朽化した水道管を更新する費用はないということで放置され、各地で水道管の破裂事故が引き起こされるようになりました。笹子トンネルの事故があるまで、老朽化したインフラの更新すら許されない空気が日本を支配してきましたが、そういうバカなことをやると、却って後の負担が大きくなると、サマーズ教授は言っているわけです。

 ところで、ここでサマーズ教授は、ユニークな視点を披露してくれます。

 重要なことは、財政赤字に焦点を絞ることが現実の赤字を犠牲にしたものであってはならないということだ。

 この文の言う「現実の赤字」とは、よく言えば気の利いた表現、悪く言えばややわかりにくい表現かなと思います。今取り組むべきでありながら、取り組みが不足している問題を、サマーズ教授は「現実の赤字」と読んでいるわけです。国家の財政赤字を気にして「現実の赤字(今取り組むべき問題)」を無視するのは馬鹿げていないかという、彼らしい皮肉です。

 では、サマーズ教授の言う「現実の赤字」とは、一体なんでしょうか。その代表はインフラの整備です。そのことを念頭に置いて、以下の文章をお読みください。

 米国や多くの先進国の金利は現在、かなりの低水準にある。海外に目を向けると、米国のインフラに大きな弱点があることは明らかだ。景気刺激効果を差し置いても、今の経済状況は国のインフラ整備に理想的と言える。金利が実質ゼロであることを考えると、これらの投資は景気刺激による税収増の効果はあっても、GDPに対する債務の比率を押し上げることはない。

 政府が借金をしてインフラ整備をすれば、GDPは間違いなく拡大します。GDPが拡大しても、借金が増えたら意味ないじゃないかとよくいわれますが、金利が実質ゼロなのですから、借金が雪だるま式に増えるわけではありません。確かに借金をしただけ政府債務の絶対額は増えますが、GDPが拡大するため、GDPに対する政府債務の比率は上がらないと言っているわけです。

 サマーズ教授がここで言っていることを、日本に当てはめて考えてみましょう。日本の場合、GDPは約500兆円、政府の債務は約1000兆円です。政府の負債はGDPのおよそ2倍です。仮に20兆円のインフラ整備を行い、この景気刺激策の波及効果も伴って、GDPが30兆円増えたとしましょう。そうするとGDPが530兆円で政府の債務が1020兆円ですから、GDPだけでなく政府の負債も確かに増えています。しかし、政府の負債はGDPの2倍から1.92倍へと低下していますから、GDPに対する政府債務の比率は上がっていません。むしろ政府債務の対GDP比は低下しているわけですから、財政状況は改善しているということになります。

 さて、サマーズ教授は、「現実の赤字」をインフラ問題だけに絞っているわけではありません。ではどのようにとらえているのでしょうか。

 インフラ問題は米国が直面する赤字の傑出例にすぎない。金融危機から約6年が過ぎたが、雇用と成長は大幅な赤字状態だ。ここで考えてみよう。わずか0.15%の成長率拡大が今後10年間続けば、2023年の対GDP債務比率は約2.5%ポイント低下する。これは年末の税制協議で語られてきた水準だ。成長拡大は雇用と収入の拡大にもつながる。

 実は、サマーズ教授のこの結論は、日本のバブル崩壊後の経済政策の展開を研究して得てきた結論です。バブル崩壊後に、当初日本政府は財政政策を活発化することで対処していきましたが、財政悪化を気にするあまり、途中から財政政策を後退させました。むしろ消費税増税を図るなどの緊縮路線に舵を切りました。その結果として、失われた20年とも呼ばれる長いデフレ不況に突入しました。そしてその結果、1994年には世界経済に占める日本のGDPの比率は18.1%もありましたが、それが2011年には8.4%にまで低下しました。つまり、日本経済の世界における大きさは、半分以下に下がってしまったのです。これが日本の経験した「雇用と成長の大幅な赤字」です。財政赤字ばかりを気にして、雇用と成長の赤字に気がつかないでいると、国民経済にとってもっとマイナスではないのかというのが、サマーズ教授の言いたいことです。そしてそんなことをしていると、却って財政赤字を悪化させてしまうことになるというのが、日本の辿った経路から得られる教訓だというわけです。

 そして、この点を強調した文を、サマーズ教授はコラムの最後に置きました。

 最終的に現世代の国民の生活、そして将来の世代に最も大きな影響をもたらす雇用と成長の赤字という点を忘れてはならない。

 サマーズ教授のこの結論は、アベノミクスが本来目指している方向と完全に一致しているというところに目を向けてもらいたいです。アベノミクスに対する妨害がいろいろと広がってきている中で、サマーズ教授のこの見解は、こうした妨害に対抗するのに極めて有用な武器になるでしょう。

 妨害に屈することなく、本来のアベノミクスを貫くべきだと思われた方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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コメント

1. お疲れ様です

こんなに有能な方の発言は日本にとっては、力強いですね。
コラムだけでは、意味が分かりませんでした(笑)
詳しい解説があって、良かったですf(^_^;
日本の失敗が役に立ってる訳ですね。

2. Re:お疲れ様です

>syo-tenさん
コメントありがとうございます。
サマーズ教授は、日本の大都市圏の地価が87%も下落していながら、この程度のデフレで留まっていることを知って以降、日本に対する評価をガラッと変えたようです。(この点はクルーグマンも同じです。)

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