記事一覧

米国の1兆ドルコイン構想から学ぶ、財政のあり方


社会・経済(全般) ブログランキングへ

 アメリカが「財政の崖」問題で大騒ぎしていたことは、皆さんもご存知ですよね。一応の決着はついたかに見える「財政の崖」ですが、問題の先送りにすぎず、根本解決には至っておりません。この問題が再燃するのは時間の問題です。

 アメリカも日本のようなデフレ不況に陥りつつあります。従ってアメリカにおいても、真っ当な経済政策を打つには財政政策が不可欠です。しかし、民主党の積極財政政策に対して共和党が強力に反対をするために、積極的な財政政策を打つことが難しくなっているわけです。

 そこで出てきたのが1兆ドルコイン構想です。額面1兆ドルのプラチナ硬貨を、政府の補助貨幣として作ってしまえばよいではないか、というのです。この1兆ドルコインを中央銀行に預け、その預金を政府が引き出せば、政府のもとには1兆ドルの現金があることになります。政府が発行した国債を、この1兆ドルで買ってしまえば、債務の上限は楽々回避できるじゃないかというものです。日本でも政府紙幣を発行すればよいという議論が以前はありましたが、あれと同じようなものですね。

 この件に関して、あのクルーグマン教授が、 Be Ready To Mint That Coin(例のコインの発行に向かおうじゃないか)といった記事を、ニューヨークタイムズに寄稿していたりします。この記事を抜粋でご紹介します。(和訳は私がテキトーに意訳したものです。)

Be Ready To Mint That Coin

 Should President Obama be willing to print a $1 trillion platinum coin if Republicans try to force America into default? Yes, absolutely.(共和党がアメリカをデフォルトに追い込もうとするなら、オバマ大統領は1兆ドルのプラチナ硬貨を発行しようとすべきだろうか)

 He will, after all, be faced with a choice between two alternatives: one that’s silly but benign, the other that’s equally silly but both vile and disastrous. The decision should be obvious.(大統領は最終的には2つの選択肢から選択を迫られれることになる。バカげているがさほどの悪さはしないものと、同様にバカげているが下劣で災いを招くものだ。どう決断すべきかは明らかだ。)


 1兆ドルコインもバカげているけれども、共和党と妥協するのもバカげていると、クルーグマン教授はいいます。どっちもバカげているけれどもその2つしか選択肢がないのなら、マシな方を選ぶしかないではないか、というわけです。

 First of all, we have the weird and destructive institution of the debt ceiling(まず始めに、債務に上限を設けるという奇妙で破壊的な仕組みを我々が抱えていることを確認しておく。)

 債務に上限を設けてしまうと、デフレ不況を克服するために積極財政が必要なときに、できなくなってしまうことになりかねません。真っ当な経済政策を行うには、この仕組みは破壊的で奇妙だというわけです。

 This lets Congress refuse to grant the president authority to borrow, preventing him from carrying out his legal duties and provoking a possibly catastrophic default.(このせいで議会は、大統領から借入できる力を奪うこともできる。大統領が法律に基づく遂行義務を果たすことができなくなり、破滅的な債務不履行を引き起こすことだってありうるのだ。)

 「ザイセイキリツ」という言葉が、必要な財政政策を不必要に縛ってしまうのは、日本でもおなじみですね。アメリカでも同様だというわけです。「ザイセイキリツ」を叫ぶことで財政破綻が現実化する可能性があるというのは、実に皮肉な話です。

 Enter the platinum coin. There’s a legal loophole allowing the Treasury to mint platinum coins in any denomination the secretary chooses.(そこでプラチナ硬貨の登場だ。財務省は自分の決めた額面でプラチナ硬貨を発行できるという、法律の抜け道があるのだ。)

 日本でも記念硬貨が発行されることがありますが、それと同じようなものができるように、アメリカの法律にもこのような規定があるようです。ただ、法律の条文には記念硬貨でないといけないといったことは書いてないようで、そのことを法律上の抜け道があると、クルーグマン教授は説明しているわけです。

 By minting a $1 trillion coin, then depositing it at the Fed, the Treasury could acquire enough cash to sidestep the debt ceiling — while doing no economic harm at all. So why not?(1兆ドルコインを鋳造し、それを中央銀行に預ければ、財務省は債務上限問題の回避に必要な現金を手にすることができるのだ。経済的には何も悪影響はない。だったらやろうじゃないか。)

 そして最後に、皮肉屋のクルーグマンらしい言葉が続きますが、それを理解するにはジョン・ベイナー(John Boehner)という人のことを知っておく必要があります。ジョン・ベイナー氏は現在下院議長で、共和党の大物議員です。オバマ大統領の進める積極財政政策を激しく攻撃する先頭に立ち、2010年の議会選挙で共和党が圧勝する立役者となりました。要するに立法府と行政府のねじれを作り上げた立役者こそ、ジョン・ベイナー氏であり、その功績ゆえに下院議長になった人物です。このことを頭に置いて、以下の文をお読み下さい。

 This still leaves the question of whose face goes on the coin — but that’s easy: John Boehner. Because without him and his colleagues, this wouldn’t be necessary.(コインには誰の顔をのせたらいいかという問題がまだあるが、これは簡単だ。ジョン・ベイナーだ。奴らのグループがいなければ、こんなことは必要とはならなかったからだ。)

 クルーグマン教授の皮肉がわかったでしょうか。

 さて、個人的な見解としては、実はクルーグマン教授ほど1兆ドルコインに関しては楽観的にはなれません。世界の基軸通貨であることで命脈を保っている米ドルの価値を崩しかねない方法は、アメリカにとっても危険なことだと思います。

 しかし、こんな手段によって瞬時に国家債務を帳消しにできる裏技もあるということを知っておくことには、意味はあるのではないでしょうか。我が日本は経常収支は黒字で、世界一の債権国でもあります。従ってもともと財政破綻のしようもないのですが、その日本で財政危機だからという理由で必要な財政政策を打つことを許さないというのは、本当にバカに思えてきませんか。起こりえない危機がたとえ起こったとしても、政府が補助貨幣を1枚発行したら解決できてしまうのです。

 くだらないことを心配しないで、政府は思い切った財政政策を行うべきだと思われる方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


社会・経済(全般) ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

1. お疲れ様です

イヤーアメリカにも、日本にもどこの国にも邪魔するものは必ず居るって事ですねー。
皮肉のセンスがある教授ですねー。

2. Re:お疲れ様です

>syo-tenさん
クルーグマンもサマーズも、本当に皮肉屋です。皮肉がわかると、読んでて面白いですね。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

朝香豊AY

Author:朝香豊AY
FC2ブログへようこそ!