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麻生財務大臣の方針転換に見る、安倍政権内での緊縮財政派の強さ


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 昨日は麻生財務大臣が立場を変えたことへの大きな失望を記事としました。実際、麻生財務大臣がフィナンシャルタイムズに寄稿した記事を読みましても、5年単位の安定した財政出動は期待薄であることがわかります。

リンク先はフィナンシャルタイムズに掲載された、麻生財務大臣の投稿記事

 フィナンシャルタイムズの記事には、次のような記載がありました。(和訳は私が勝手に作ったものです。)

 現在、公的債務がGDPの200%を超えている状況にあり、この問題は喫緊であると我々は思っている。消費税増税には抵抗も大きいが、昨年の夏に超党派の合意が出来ている。我々は財政健全化の国際公約を守る立場だ。2015年には日本の基礎的財政収支の赤字を半分にし、2020年には黒字化を達成する。私は予定通り消費税を増税するつもりだ。
(With public debt now more than 200 per cent of GDP, policy makers have a sense of urgency about this issue. There was bipartisan support last summer for an unpopular rise in the consumption tax. We stand by our international commitment to fiscal consolidation. Japan will halve its primary deficit by 2015 and resolve it by 2020. I intend to raise the consumption tax, as scheduled.)

 「基礎的財政収支」というのは、新たな国債発行による収入や過去の国債発行に伴う元利払いの支出---要するに国債が直接関係する収入と支出---を無視して、政府に入ってくるお金(主として税収)と出て行くお金(政府の通常業務の運営費用)だけで財政収支を見ていくものです。積極財政を行った当初から税収に変化がすぐに出てくるはずはないので、当初は出て行くお金だけが拡大することになりますね。従って積極財政に転換した当初では、基礎的財政収支は一気に悪化します。逆に、増税を図って政府に入ってくるお金を増やそうとし、歳出削減を行って出て行くお金を減らそうとすれば、基礎的財政収支は改善しやすいようにも見えます。要するに、「基礎的財政収支」というものに着目すると、緊縮財政に向かうのが普通なのだということをご理解下さい。

 実際、小泉政権の時からこの「基礎的財政収支の黒字化」という目標が政権内に持ち込まれ、緊縮財政が実施されてきました。実際、この15年間で全世界で最も財政支出を伸ばさなかった国が日本であり、その緊縮度は世界一と言ってよいものです。実はこの結果として経済成長が抑え込まれ、却って政府負債の対GDP比率を大きく高める結果になってしまいました。皮肉にも、緊縮財政世界一であったせいで、財政悪化速度も世界一になってしまったのです。ちなみに、2000年年初の政府純債務の対GDP比は59.60でしたが、2013年の年初では143.42にまで上がっています。従って、基礎的財政収支に着目する政策運営がうまくいかないことについては、すでに明らかになっていると考えてよいものです。

 ところが麻生財務大臣は、2015年には基礎的財政収支の赤字を半分にすることを目標にする政策運営を行うと言っているわけです。とすれば、仮に積極財政に一時的に舵を切るとしても、2014年までということになります。今年は2013年ですから、実は1年プラスアルファしかありません。直接的に基礎的財政収支の赤字半減を直接の目的とすれば、財政規模の切り詰めと増税に頼るしかありません。しかも本年度の当初予算は昨年度の予算と比べても縮小したものでスタートしました。今後国土強靭化対策として補正予算が組まれるのかもしれませんが、このような国土強靭化のための予算が付けられるとしても来年だけかもしれないということになります。

 ところで、麻生財務大臣は、同じフィナンシャルタイムズへの寄稿記事で、次のようにも述べています。

 アベノミクスの着想は世界大恐慌の時のフランクリン・ルーズベルト大統領のリーダーシップに基づくものである。さらには、1920年代・1930年代に日本の大蔵大臣となり、ルーズベルト大統領以前にデフレ対策に取り組み、その積極財政策がルーズベルトの手本になったとも言われている高橋是清のリーダーシップに基づくものでもある。
(The inspiration is Franklin Roosevelt’s leadership during the Depression and, before him, Korekiyo Takahashi, a Japanese finance minister in the 1920s and 1930s, whose stimulus policies are said to have been a model for Roosevelt’s.)

 ルーズベルトや高橋是清に学ぶというのであれば、大胆な積極財政を行うべきではないでしょうか。高橋是清が井上準之助の後を受けて大蔵大臣に就任したのは昭和6年(1931年)の12月でしたが、翌昭和7年の3月には積極財政への転換と国債の日銀引き受けの意向を金融関係者に伝えています。昭和7年の一般会計は対前年度比で伸び率32.1%昭和8年は対前年度比で15.6%という積極財政を行っています。

 さて、高橋是清の政策に学ぶということと基礎的財政収支を重視するということは論理矛盾ではないかとも思えるのですが、これをどう解釈すればよいでしょうか。基礎的財政収支を重視するというというのは、緊縮財政・構造改革派ばかりの状態の中で、高橋是清ばりの大胆な積極財政策を一時的にせよ実現するための、麻生財務大臣の一流の戦術なのではないかと、私は解釈しました。2015年には基礎的財政収支の赤字の半減というスローガンを掲げないと、自らの周りにいる緊縮財政・構造改革派の反発は避けられということなのではないか、基礎的財政収支の重視を共有している立場だと表明することで、最低1年間は思い切った財政出動を認めさせることができるんじゃないかと、麻生財務大臣が考えているというものです。勝手な推測ですから、外れているかもしれません。

 ただ、麻生氏が単年度だけでも積極財政を実現するための捨て身の戦術に出たにせよ、基礎的財政収支重視派=緊縮財政派に転換したにせよ、政権内部における緊縮財政派がいかに強いかがわかるでしょう。アベノミクスの「財政の矢」は実は折れているのだということに、私たちは気付いておくべきだと考えます。

 安倍政権が3本の矢のうちの1本として財政政策を掲げながらも、政権の中では実は緊縮財政派の力が強いことが理解できた方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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