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TPP について考える 2

 TPP をめぐる問題を、今回はもっと長い歴史の上で考えてみることにします。

 20世紀という時代は、社会主義というものが大変大きな影響力を行使した時代でした。1917年にロシア革命が成立して、万人の平等とあらゆる搾取の廃止を訴えるボリシェヴィキ(共産党)が政権を取ったときに、こうしたロシアの未来に将来の夢を重ねる人たちが多く出てきたのは、当然だったように思えます。

 そしてこれに対抗する動きが資本主義の側でも発生しました。1918年にイギリスで成年男子による普通選挙法が実施されるようになり、1920年にドイツで社会権を謳ったワイマール憲法が登場したのは、まさにその反映だったと言えます。我が国において1918年に原敬内閣が初の本格的な政党内閣を組織することになり、1925年に普通選挙法が制定され、ほぼ同時に社会主義運動の取り締まりのための治安維持法が制定されましたが、これらもそうした時代の流れを受けたものだったでしょう。

 実際、社会主義に対抗するために、社会保障制度や累進課税制度などを採用・強化することにより、勝ち組が勝ちすぎることを修正し、弱者の生活水準を引き上げるということが、資本主義国において普通に行われるようになりました。これは社会主義を理想的に捉えてそれに魅了される者が多かったために、これに対抗するためにむき出しの弱肉強食の資本主義を修正する方向が模索された結果といえます。そしてこれはそれ自体が市場の拡大にもつながり、資本主義の発展にも寄与した側面がありました。

 ところが理想と思われていたはずの社会主義ロシア(ソ連)の実態が少しずつ明らかになり、社会主義が理想から幻想に変わっていく中で、社会主義に対抗する必要性は薄れていきました。世の中に不満を感じていても、その不満が社会主義を打ち立てようという動きに結びつくことが事実上なくなったからです。これにより強者の手足を縛る政策が緩められ、古典的な弱肉強食型の資本主義に回帰する動きが強まっていきました。

 この中で私がものすごく皮肉だなと感じることも進行してきました。社会主義の理論では資本主義(独占資本)が最終的に陥っていく特徴として、「寄生性と腐朽性」というものが挙げられています。これは、独占企業体となった企業がやがて独占の力にあぐらをかくようになり、革新的な新しい製品を作るために真剣に努力したり、価格競争に負けないように価格の引き下げを必死にやるといったことをしなくなり、右から左にお金を動かす中で利益をかすめ取るような存在に成り下がっていくという指摘です。今のアメリカを見るとまさにそんな感じがしないでしょうか。一部の多国籍企業と金融資本だけが決定的な力を持ち、本質的に社会に役に立つとは思えない形で利益を上げているような状態です。社会の変化に合わせて自分たちの組織を意味ある形で発展させるのではなく、むしろ社会のルールそのものを自分たちにとって都合のよいものに変えていくことによって、利益を上げていくようになりました。ロビー活動などという不健全なものが公然と行われるようになっているのは、まさにその典型ではないでしょうか。その結果、1%の大金持ちと99%の一般庶民に国民が分裂していき、「ウォール街を占拠せよ」といった運動が引き起こされるまでに至っています。社会主義の理論が資本主義の避けられない傾向として指摘していたことが、その社会主義の力が減退していく中で、実際にどんどん強まっていったわけです。これはものすごく大きな皮肉ではないでしょうか。

 アメリカで広がっているこのように不健全な資本主義は、その活躍の場を広げていきたいとの思惑を当然持っています。例えば膨大な含み資産を持ちながらも業績が低迷している企業を見つけたら、これを買収し、その事業を停止して、所有している土地を切り売りすることができれば、彼らは大いに利益を上げることができます。もちろん会社や工場が普通の商品と同じ扱いを受けたとしたら、そこで働いている人たちの雇用や生活に莫大な影響を及ぼしますから、社会の安定を考えてこうした取引には規制が行われるのは当然のことです。このために、不健全な企業売買を禁止していたり、外資規制を設けていたり、厳しい解雇制限を設定していたりするわけですが、こうしたものを「非関税障壁」とみなし、これらを取り除かせることを、不健全な資本主義は考えることになります。

 アメリカは従来我が国に対して、このような「障害」を取り除くように再三圧力をかけてきましたし、実際に我が国もそういった圧力に次々と屈してきました。TPP を考える場合に、こうした文脈の中に位置付けて考えて欲しいと思うのです。アメリカが TPP 交渉で最も力を入れているのが金融と投資の分野であることを忘れてはいけないところだと考えます。TPP には、緩めた規定を再び強めることができないラチェット規定や、政府の政策で投資家が損害を被ったと感じた場合に、国家主権を越えたところで損害を提訴できるISD条項が盛り込まれているのは確実視されており、TPP に参加すれば、世界に誇る日本の国柄が大きな変容を迫られることになるのは避けられないところです。

 もともとは社会主義にシンパシーを感じていた人がかなり多いと思われる、民主党という政党が日本の政権を取っている中で、このような事態が進行しているのも、大変大きな皮肉です。彼らはどうやら自分たちがどういう局面に立っているのかを見失っているようです。自分たちが置かれている歴史的位置というものを、大局的な目から確認してもらいたいと、切に願う次第です。
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