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公的債務比率とGDP成長率には、実質的な関係はない!


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 ラインハート教授とロゴフ教授の、公的債務が高まると経済成長が落ちるという関係があると結論づけた研究があります。この二人の大学者による研究は、各国に緊縮財政を取らせていくのに非常に大きな効果を持ちました。公的債務の比率が上がる前に財政再建をしないと先行きはもっとまずくなると、危機感を抱かせたからです。

 これに対して、トーマス・ハーンドンという大学院生を中心とする3人の研究者が、研究を再現してみても同様の結果にはならないと発表しました。3人は、公的債務の対GDP比が90%を超えると経済成長率がグンと落ちるという両教授の結論を否定したのです。一番大事なポイントは、ラインハート教授とロゴフ教授の研究をそのまま再現してみようと試みたら、全然違う結果にしかならなかったというところです。ラインハート教授やロゴフ教授とは違うアプローチによって、二人の結論がおかしいのではないかと疑問を呈したというわけではないのです。ラインハート教授とロゴフ教授は、導きたい結論に達するように、データ自体に作為を加えていた疑いが出てきたわけです。ハーンドンらの指摘に対して二人は確かに誤りを認めましたが、苦しい言い訳をしています。今回はこの批判論文がどういうことを明らかにしたのかを、なるべく簡単に説明してみようと思います。

 まずは論文の要旨をお読み下さい。どういう論文だったのかの概要がわかります。この要旨の私訳(途中まで)を以下に載せておきます。(読みやすさを優先したので、忠実な訳ではないことをあらかじめ断っておきます。)

 我々はラインハートとロゴフの2010年の2つの論文に示された研究をやり直してみて、コーディングに誤りがあり、利用できるデータの中から選択的に除外したものがあり、簡約版の統計に対しては通例では行わないようなデータの重みをつけており、これらが深刻な間違いにつながっていることがわかった。第二次大戦後の20の先進国における公的債務とGDPとの関係を不正確なものにしてしまう深刻な間違いである。正確に計算すれば、GDPに対する公的債務の比率が90%を超えている国の平均的な実質経済成長率は、ラインハートとロゴフが示したマイナス0.1%ではなく、実際にはプラス2.2%である。すなわち、ラインハートとロゴフの主張とは違い、公的債務の比率が90%を超えている国が超えていない国と劇的に違っているということはないのである。(以下略)

 念のために要旨部分の原文(全文)も付けておきます。
We replicate Reinhart and Rogoff (2010a and 2010b) and find that coding errors, selective exclusion of available data, and unconventional weighting of summary statistics lead to serious errors that inaccurately represent the relationship between public debt and GDP growth among 20 advanced economies in the post-war period. Our finding is that when properly calculated, the average real GDP growth rate for countries carrying a public-debt-to-GDP ratio of over 90 percent is actually 2.2 percent, not -0.1 percent as published in Reinhart and Rogoff. That is, contrary to RR, average GDP growth at public debt/GDP ratios over 90 percent is not dramatically different than when debt/GDP ratios are lower.
We also show how the relationship between public debt and GDP growth varies significantly by time period and country. Overall, the evidence we review contradicts Reinhart and Rogoff’s claim to have identified an important stylized fact, that public debt loads greater than 90 percent of GDP consistently reduce GDP growth.


 ハーンドンらの論文を実際に読んでみますと、ラインハート教授とロゴフ教授が随分と不思議な処理をいろいろとやっていることがわかります。例えば、国ごとにデータをとり始めた年代が違っています。1946年からデータを取っている国もあれば、1951年からデータを取っている国もあれば、1957年からデータを取っている国もあれば、1970年からデータを取っている国もあります。また、いくつかの国でそれぞれ別個の数年のデータが組み入れられていません。1973年から1978年のフランスのデータが除外されているとか、1959年から1980年のスペインのデータが除外されているとか、どうして外したのか理解できないような処理がいろいろと見られるのです。なぜわざわざこれらを外したのかについては、二人は説明責任を負っているといえるでしょう。

 とりわけ不思議なのは、ニュージーランドのデータの扱いです。ニュージーランドは公的債務の比率が90%を超えた時にマイナス7.6%の経済成長になった時があるのですが、このデータが「平均」を求める際に非常に大きな役割を果たせるように操作したとしか思えないデータ処理をしているのです。この1年限りのニュージーランドのデータが全体の1/7の重みを持つようにして「平均」を求めるようなことをやっているわけです。この1年限りの例外みたいな事例が「平均」をぐんと押し下げ、公的債務比率が90%を超えると経済成長率は平均でマイナス0.1%になるという結論が導かれたわけです。普通に計算すればプラス2.2%なのにです。

 コーディングのエラーについては、一見では単純ミスに見えます。Australia, Austria, Belgium, Canada, Denmark という5カ国が除外されているのですが、これはデータをとった国々をアルファベット順に並べた時の最初の5カ国です。ですから、何らかのミスによって外れたのであって意図的ではないとの言い訳もできるのですが、それでもこの5カ国を除外すると、二人の導きたい結論にデータがうまく近づいてくれるわけです。

 穿った見方かもしれませんが、二人はこうした不正がばれた時の言い訳まで考えて、導きたい結論に到達するための操作をいろいろと行ったように、私には思えます。

 ところで以下のグラフを見てください。これはハーンドンが全データを打ち込んで作ったグラフの一部を拡大させたものです。横軸が公的債務の対GDP比を表し、縦軸が実質経済成長率を表します。



 バラバラの点が画面上に広がっていることがわかりますね。ハーンドンは平均値や中間値を用いて、一応の傾向線を作ってくれていますが、はっきり言わせてもらってこの傾向線にさえ意味があると思えないのではないでしょうか。現実は、公的債務の対GDP比と実質経済成長率との間には、実質的に関係らしい関係は見いだせないのです。ラインハートとロゴフは、こんなデータしか出てこないことに自分で研究しながら当然気付いたはずですが、それでは自説を説明できなくなるために、いろいろと手を加えてもっともらしく話を作り上げたのではないかと、私は推測します。

 恐らくハーンドンも私と同じことを思っていると思いますが、自分が大学院生でしかないという立場であるのに対して、ラインハートとロゴフの二人は世界的に有名な大学者ですから、あまりに過激な批判となることを避けようとして、大教授に倣った傾向線を描いてみたのではないかと、私は思います。

 公的債務の対GDP比と実質経済成長率との間には、実は相関関係らしきものさえないということがおわかりになられた方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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コメント

1. 等価定理(中立命題)の呪縛ですね

どうもこんばんは、話題のロゴフ、ラインハートの話ですね、そもそも債務の質(外貨建て、自国通貨建て)などの峻別がないんでそんなに意味があるとは思えないデーターでしたが、やっぱりねという印象です。

結局、合理的なエリートは、リカードの等価定理の呪縛の中でしか物を考えられないんでしょうね、実証された訳でもなく、日本でも実証研究で否定的に捉えてる学者も結構いるんですけど、結構これを完全に正しいという前提で捕らえる人は多いですね、合理的期待形成というのは多分頭のいい人が考えれば考えるほど嵌るのかな、
今日、ネットでちょっと話題の”「デフレ脱却」は危ない”という公認会計士の高橋淳二さんという人が書いた本を買って読んでみましたが、恐らく無意識できずいていないのでしょうけど、この等価定理(中立命題)を肯定する理由は一つも述べられてなく、”読者の方もわかるように”とか常識人なら当たり前にわかるだろ?みたいですね騙そうとしてるというより、露ほどにも疑ってないから書いている感じでした。

なぜなら彼ら経済学者や会計士など計算に強い頭のいい人間は、物事を合理的に考えて動くのが空気のように当たり前の行動として自身に染み付いてるんでしょう。故に等価定理が正しい前提は絶対崩れないから現実が間違ってるとなって今回みたい(本当に不正かは分かりませんが)なるんでしょうね。ある意味、信念、信仰のような感じかもしれません

2. Re:等価定理(中立命題)の呪縛ですね

>容疑者フリードマンさん
的確なコメント、ありがとうございます。等価定理のような、まさに机上の空論のようなものを、そんなにやすやすと信じられる人たちが結構いるんですね。私などは肌間隔で「ありえない」って即座に否定してしまうタイプですが、学問的には問題ある態度なんでしょうね。(笑)

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