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エネルギーに関わる不可思議な政府の立場について

 東日本大震災及び福島原発の事故を踏まえて、政府は8月に「革新的エネルギー・環境戦略」を定めるためのパブリックコメントを求めているのは、皆さんご存知でしょうか。これに関わる意見聴取会で認められた発言者の中に電力会社の社員もいたことが「やらせ」ではないかと問題にされたりしましたが、あれもパブリックコメントの集約のためのやり方の一つです。国家戦略室のサイトからも意見表明はできますので、ここに皆様もご自身のご意見を書き込みして頂きたいと思っています。

政府がパブリックコメント書き込み用に用意したサイト
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120702/20120702.pdf

 政府の側では2030年に向けての具体像として、3つのシナリオを用意しています。1つは原子力発電の依存度を2030年に0%にしてしまおうというシナリオ、1つは原子力発電の依存度を2030年に15%にしてしまおうというシナリオ、もう1つは原子力発電の依存度を2030年に20~25%にしてしまおうというシナリオです。
 
政府がパブリックコメントの前提として用意した資料 「3つのシナリオ」
http://www.sentakushi.go.jp/scenario

 それぞれのシナリオを場合に、温室効果ガスの排出量と化石燃料の輸入額がどうなるかのデータも用意しています。温室効果ガスの排出量は、0%シナリオの場合と15%シナリオの場合は23%減であり、20~25%シナリオの場合は25%減となっています。その差はわずかに2%です。化石燃料の輸入額は、0%シナリオの場合と15%シナリオの場合は16兆円であり、20~25%シナリオの場合は15兆円となっています。その差はわずかに1兆円です。

 こんなデータを見せられると、原発を完全に停止した場合でも、震災前と同じくらいに25%程度まで原発に頼った場合でも、大差ないように感じるのが普通だと思います。そして原発に頼らなくても大差ないなら脱原発でいいじゃないかと感じるのは普通の話で、どうもこの方向に世論誘導したいという流れが、政府の側にあるように感じられてなりません。

 以前「太陽光発電を考える」という記事の中でも書きましたが、福島原発の事故を受け、2011年全体で、原油・LNGなどの鉱物性燃料の輸入量は4.4兆円増え、日本の貿易収支は赤字に転落しました。この1つの事例だけからでも、20~25%シナリオの場合と0%シナリオの場合で、化石燃料の購入代金が1兆円しか変わらないというのは、およそ考えられない話です。16兆円とか17兆円という金額での1兆円ですから、6%程度しか変わらないという話なのですが、いったいどういう計算をしたらこうなるのか、さっぱり理解ができません。政府の示すグラフでは、20~25%シナリオの場合の火力発電の比率は50%、0%シナリオの場合の火力発電の比率は65%となっており、0%シナリオの場合の方が火力発電が3割多いことになっています。それなら化石燃料の輸入代金も3割ほど変わると考えるのが適切な判断ではないでしょうか。温室効果ガスの排出量にしても3割ほど変わると考えるのが自然な発想だと思います。

 また、いずれのシナリオにおいても「再生可能エネルギー」の比率は30%前後となっています。この「再生可能エネルギー」の中には、水力も含まれているようですが、水力では国内のエネルギーの8%程度しかまかなうことはできていませんし、今後の大幅な積み増しの余地はないでしょうから、太陽光と風力に頼る割合が大きいということなのでしょうが、こうした発電がどの程度環境破壊的であり、採算にも問題があるかというようなことを、まじめに検証していないのではないかと思います。実際政府のシナリオでは、風力発電用に東京都の面積の2.2倍の敷地を確保し、1200万戸の住宅に太陽電池パネルを敷設するということを前提としていますが、これがコスト面や環境面でどれほどのレベルのことを意味しているのかを具体的に考えた形跡はありません。環境負荷が高く、出力も安定せず、コスト的にも合わないことに邁進するというのは、単に非現実的であるだけでなく、日本の競争力を削ぐ要因にも当然なります。

「以前のブログ記事 太陽光発電を考える」
「以前のブログ記事 風力発電について考える」

 そして、さらに信じられないのは、2030年における年間総電力量が2010年よりも10%ほど下がることを前提としていることです。2010年から2030年の平均的な経済成長率が仮に3%であったとした場合、2030年には2010年よりも年間電力量は1.8倍程度になるはずです。省エネ技術の進展によって、幾分必要量が減るとしても、1.6倍から1.7倍くらいは見ておくべきだと思います。デフレ不況が当たり前になっている現在の日本を基準にすると、3%の経済成長なんてできるのかと思ってしまいがちですが、1990年から2010年までのアメリカの経済成長率の平均が3%程度ですから、別段高い成長率ではないはずです。

 にもかかわらず、2030年における年間総電力量が2010年よりも10%ほど下がることを政府は前提としているというのは、日本経済のゼロ成長が続くどころか、日本経済がマイナス成長気味に動いていくことさえ想定している可能性すらあるという話になります。

 現実的な見通しのもと、事実をリアルに正しく伝えるデータを用意し、その上でパブリックコメントを求めるというのであれば、意味はあるでしょうが、少しまじめに数字の根拠を考えていくだけでほころびだらけというデータを用意して、政府は何をしたいのでしょうか。

 国家戦略室というのは、強い日本を築き上げていくための戦略を練るために作られたものだと思っていました。強い日本というのは、食料やエネルギーの心配が小さく、確かな経済力と国防力の裏付けのもとに実現できるものだと思いますが、どうも現政府の国家戦略室にはそのような前提がないようです。

 むしろ、日本を弱体化するには、どうすれば戦略的に動かすことができるかを考え、それを立案しているところにさえ思えてしまいます。

 野田総理は大飯原発の再稼働を強行したように見えますが、実はこれとて反原発世論をわき上がらせるための戦術だったのかもしれません。意見聴取会における電力会社の「やらせ」を報道させたのも、世論を反原発に誘導するための戦術だったのかもしれません。そのように考えでもしないと、この国家戦略室の用意しているデータを理解することができないのです。

 パブリックコメントを集約して、8月に政府は「革新的エネルギー・環境戦略」を発表するというスケジュールで動いていますが、この時に『国民の皆様がこの間表明された、大きな反原発の声に真摯に耳を傾け、2030年には原発をゼロにすることにしました』といった話にもっていき、反原発に意図的に傾かせた世論の支持を政府側に一気に集めたいという思惑ではないのか、そんな疑いすら私には感じられるのです。

 少なくとも、日本の将来を見据えたエネルギー政策を、真剣に一生懸命考えて作ったものとは全く思えませんでした。

 皆様はどのようにお感じでしょうか。

 書き込みサイトには以下から入ることができます。
政府がパブリックコメント書き込み用に用意したサイト
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120702/20120702.pdf
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