記事一覧

ヨーロッパの現実から、電力自由化の是非を一から問い直そう!


政治 ブログランキングへ

 ウォールストリートジャーナルに、「新たな暗黒大陸 風力・太陽光発電強制買取制度がヨーロッパの電力施設を破壊している」(The New Dark Continent ー Wind and solar mandates are breaking Europe's electric utilities)との記事を載せました。

 米オバマ政権が再生可能エネルギーへの取り組み強化の動きを見せる中で、これに警告を発するためにこの記事は書かれたわけですが、当然日本の現実を考える上でも役に立ちます。

 この記事に書かれていることを簡単にまとめた段落があります。その部分だけ抄訳で示します。

 電力会社はかつては自分たちで予測可能だった電力需要が、天気と同じで全く予測不可能な電力需要に取って代わられる経験をしてきた。再生可能エネルギーがあまり生まれない時には、明かりをともし続けるために発電量を上げる必要がある。再生可能エネルギーの方がエネルギーとして優先されてしまうために、再生可能エネルギーの発電量がどう動くのかを気にしていなければならないのだ。電力会社は今なお高い固定資本が要求されているのに、再生可能エネルギーに特権的な立場が与えられているために、彼らだどれだけの電力を生み出したらいいかは、風が吹くか止まるかで増減してしまうのである。(The utilities have seen their once-predictable power needs replaced with demand that is every bit as unpredictable as the weather. When conditions are poor, they need to step up generation to keep the lights on. But because of the priority given to renewables, they have to be mindful of the possibility of being pre-empted. They still have high fixed costs and capital needs, but thanks to the renewables' privileged position, demand for what they produce waxes and wanes with the wind.)

 火力や原子力の電力会社は、高い固定費がかかっているのに、その固定費を回収できるように発電を行っていくことができない環境に置かれているわけです。電力が足りなくなりそうだという予測のもとに発電を増やした時に、再生可能エネルギーが予想以上に発電されてしまったということになると、無駄なエネルギーを生み出しただけになる可能性があるわけです。この結果、自分たちにも再生可能エネルギーの業者と同じように補助金をもらえないとやっていけないと主張するようになっているわけですが、これは電力会社の立場からすれば当然でしょう。ただ、このように従来の火力や原子力の発電事業体に補助金を出すとしたら、何のために再生可能エネルギーに補助金を出して推進したのかという問いかけも、当然あるはずです。そしてそのしわ寄せは、電気料金という形かもしれませんし、税金という形かもしれませんが、いずれにせよ国民負担の増加によって賄うしかないわけです。

 今年の3月に、「一般財団法人日本エネルギー経済研究所」から、「平成24年度電源立地推進調整等事業(諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査)報告書」というものが公表されました。(経済産業省のウェブページから見ることができます。)
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003213.pdf

 かなり詳細な報告書ですが、ここには例えばドイツの電力料金が、電力自由化(1998年)の後に、ものすごい勢いで上昇したことがグラフで示されています。特に再生可能エネルギーの強制買取制度の実施(2000年)以降の上がり方が凄まじいです。

 この報告書に載っているものとは別のデータですが、ドイツの産業用電力料金と一般家庭用電力料金の推移を表したグラフを掲載しておきますので、2000年から現在に至るまでに電力料金がほぼ2倍になっていることをご確認ください。(ちなみに日本は同期間で若干値下がりしています。)




 この報告書には「成果の要約」という記述がありますが、ここだけは全文を載せてみたいと思います。FITというのが、再生可能エネルギーの強制買取制度のことを言っているということを理解した上で、読んでみて下さい。

 日本を除く調査対象国では、電力自由化開始当初に電気料金が低下していた国・州もあったが、概ね化石燃料価格が上昇傾向になった2000年代半ば以降、燃料費を上回る電気料金の上昇が生じている。ドイツ、ノルウェー及びイギリスでは、市場で取引される卸価格の変動が特に家庭用電気料金に反映される傾向にある。それ以外の国では家庭用電気料金で規制料金が継続していることも多く、それ以外の要因で電気料金が上昇している模様である(幾つかの国・州ではFIT費用負担又は送配電費の上昇が原因)。幾つかの国・州では、市場で取引される卸価格が産業用料金を上回る時期も見られた(フランス、イギリス、ノルウェー、ニューヨーク州、カリフォルニア州(電力危機の期間)、ペンシルベニア州)。

 要するに、電力自由化を実施した後に、化石燃料の上昇以上に電気料金が上がるようになったというわけです。電力を自由化して競争を激しくすれば電気料金は安くなるという触れ込みだったはずなのに、真逆のことが実際には起こっているというわけです。

 こうした事実を目の前にして、私たちは電力自由化・発送伝分離を実施すべきか、再生可能エネルギーの固定買取制度をどうすべきかについて、一から考える必要があるのではないでしょうか。電力自由化によってバラ色の未来がやってくるというのが幻想であるどころか、大変な電力料金の値上がりにつながり、我が国の経済力の低下にもつながりかねないことを、私たちはしっかりと見据えておくべきだと思います。


政治 ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

1. もっと議論すべきですね

FIT、発送電分離、電力自由化は、何の目的のために行うのか?全く意図の見えない規制緩和だと思います。もっと議論すべきと言わざる得ないですが、本音は全部実施してはいけない政策だと思いますね。どこかで規制改革会議や政商がレントシーカーを目指しているだけなんでしょうが、この問題は左派が反原発原理主義で自然エネルギー大好きな点や東電など電力会社が地域独占していることに反発する気持ちを持っているので反対の声をあげてくれないことも問題ですね。ユニバーサルサービス義務を新規参入事業者が果たしてくれるのか?も問い質すべきてんでしょうね。送電網を毀損してしまうことが心配です。

2. Re:もっと議論すべきですね

>グラースさん
外国と摩擦を小さくすることが外交であると考え、外国が喜ぶことを率先してやろうしているのか、あるいはより進んだシステムは欧米にあると妄信しているのか、いずれかなのかなと思っています。
安倍政権の動きを見ていると、外資による投資が増えることを単純に善と考え、どうすれば外資による投資が増えるかという見地から、彼らが確実に儲かるように、この分野の開放を目しているように感じます。与野党を問わずに国会議員へのアクセスを強化する必要がありますね。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

朝香豊AY

Author:朝香豊AY
FC2ブログへようこそ!