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福島市長選挙の結果を考える


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 福島市長選挙で、現職知事が新人候補にダブルスコア以上の大差で敗れました。当選を決めた小林香氏は、「変えよう福島」をキャッチフレーズにして戦われたそうです。そして当選後のインタビューに対しては、「『現状を変えてほしい』という思いが、市民の皆さんに根強いものがあったことの表れ」であり、「(除染で取り除いた土などの)仮置き場の設置について、住民の皆さんに多くの調整、議論を任せるのでなく、市役所がもっと前面に出て、住民の皆さんとの調整を進める」ようにすることを、話されておりました。原発事故対応などの震災復興への処理がなかなか進まない行政に対する不満を持たれている方々が大変多く、その反発票が新人候補に大きく流れた結果として捉えるべきなのでしょう。

 しかしながら、今年に入って、近隣の郡山市、富岡町、いわき市でも相次いで現職が敗れていることからしても、どうもポイントは市長や町長のやる気のあるなしの問題ではなさそうであることが伺えます。とりわけやる気のない首長ばかりが福島近辺に集まっていたと考える方が不自然だと感じられるからです。だとしたら、なぜに市民や町民の期待に応える行政を、これらの首長たちはいずれもできずに終わったのでしょうか。

 その要因にはいろいろとあるかと思いますが、自治体が過重な負担に耐えかねている実態もかなり大きいのではないかと思います。こうした実態は日本のマスコミではあまり報道されておりませんが、わずかながら報道されているものもあります。例えば、NHKは本年(平成25年)3月12日に以下のような報道を行いました。

 震災で被害を受けた岩手・宮城・福島の沿岸部の自治体では、今年度だけで少なくとも500人以上の職員が病気を理由に長期間、仕事を休み、このうち半数以上はうつ病などの精神疾患だったことがNHKの調べで分かりました。復興事業が進むにつれて現場の職員に負担がかかり、長期的な支援が必要な実態が浮き彫りになっています。…(中略)…生活環境の変化や体調の悪化などから、震災後、退職する職員も相次いでいて、その数はおととし4月から去年3月までに699人、去年4月から今年1月までに213人に上っています。各自治体には、全国から1300人を超える応援の職員が派遣されていますが、まだ必要な数には足りていないということです。復興事業が進むにつれ、仕事の量とともに、専門知識を必要とする複雑な業務も増えて現場の職員に負担がかかっていて、職員のサポート体制の充実など、長期的な支援が課題になっています。

 本年(平成25年)3月8日の朝日新聞にも、以下のような記事が掲載されていました。

 過労やストレスによる被災地の自治体職員の休職が目立っている。復興事業の本格化に伴い、さらに負担が大きくなることが懸念され、心のケアに力を入れる市町村が増えている。「家族宛てに遺書を書いていた」。津波と原発事故に見舞われた福島県南相馬市。40代男性職員は2月、知人にこう打ち明けた。事故後、30キロ圏内に避難指示が出され、震災4日目に自衛隊に言われて市役所から退避した。職員は家族を市外へ避難させ、自らは市内に残る住民の対応にあたった。遺書を書いたのはその頃だった。自治労福島県本部の調べでは、南相馬市で2011年度、123人が定年前に退職した。前年度の7倍近い。過労によるストレスや精神疾患が要因とみられるという。除染や農作物などの汚染問題が生じた中通りの自治体でも早期退職者が急増。県全体では11年度、前年度より161人多い457人が早期退職した。怒った住民にカウンターを飛び越えて詰め寄られたり、罵声を浴びせられたりするのに耐えられないケースが目立つという。今野泰書記長は「早期退職の予備軍は多い」と話す。岩手県内では、他の自治体からの応援職員2人が自殺した。1月3日、兵庫県宝塚市から、昨年10月から半年の予定で大槌町に派遣されていた職員(当時45)が仮設住宅で亡くなった。昨年、宝塚市の上司に「自分が役に立っているのか」という趣旨の話をしていたという。昨年7月には、岩手県陸前高田市に盛岡市から派遣されていた男性職員(当時35)が自殺。4月に志願して赴任したが、仕事がうまくいかないことを悩む遺書が残されていた。専門外の漁港設計などが担当だった。戸羽太・陸前高田市長は「親しい人を2、3人で派遣してもらうなど、精神面に配慮していく必要がある」と話す。(笠井哲也、杉村和将)

 「民間が必死で頑張っている中で、公務員がぬくぬくとしているのはけしからん」といった批判から、我が国では公務員の削減がどんどんと続いてきました。この結果、このような非常事態が発生した時に、全国の自治体から応援をしてもらっても、ろくに対処ができない状態に陥ってしまったのではないでしょうか。以下のグラフは、公務員に支払っている給与総額の対GDP比をグラフにしたものですが、日本がどれほど公務員の少ない国になっているかがわかるかと思います。



 山がちで、いったん大雨が降れば土砂崩れや河川の氾濫が起きやすいことに加えて、台風の通り道でもあり、地震もすこぶる多いという国土的な条件を持っていることからすると、むしろ公務員数は標準的な国よりも多くないといけないのではないかとさえ、私には感じられます。

 こうした実態を頭に入れたなら、当選した小林氏がいくら「変えよう福島」と叫んでみても、どうにもならない現実が控えていることになるのではないかと思います。

 現在の歪んだ情報空間の中で、日本人同士が相互不信の中で生きるようになっていますが、では日本人よりもアメリカ人の方が信頼できるのでしょうか。中国人の方が信頼できるのでしょうか。韓国人の方が信頼できるのでしょうか。日本人ほどまじめで人を傷つけることをしようとしない国民はいないということは、3.11でもはっきりと証明され、日本国内だけでなく、世界的にも広く認められていることなのに、当の日本人自体が日本人を信用しないというバカバカしいことを繰り広げています。その結果が、このような震災が発生した時にまともに対応できない国家を作り上げることだったというのは、笑えない現実だと、私には感じられます。


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コメント

1. 無題

日本人の一番悪いところが自分よりも境遇の良い人を嫉む、足を引っ張ることだと思います。あきらかに公務員が少ないのにも拘らず、未だに公務員削減、給与削減、行政の無駄の削減ばかり言われてますね。議員定数の削減も必要とは思えないですが、世間一般の受けがいいのか、民主党、みんな、維新等が人気とりの為に主張していますね。身を切る改革で議員定数削減とは、あきれる限りです。優先順位が滅茶苦茶だと思います。不景気だし、被災地は仕事量が多いなら、公務員雇用を増やすべきです。まとまらなくてすみません。

2. Re:無題

>グラースさん
国会議員は秘書だけでなく、様々なブレーンも多く必要としているはずなのに、政策担当秘書2名しか公設秘書としては認められていないというのが、そもそも無茶苦茶ですね。近年のアメリカでは、TPPにもよく表れているように、一つの法律が六法全書1冊分以上にもなるほど、複雑なものが作られるようになっており、日本からすればありえないくらい充実したスタッフが認められているのに、国会議員は内容にキャッチアップできていないようです。国会議員がキャッチアップできないように法律案が作られるようになっているといってもよいのですが、ひどい話です。日本の政治がアメリカに牛耳られていることから、日本の法律も今後アメリカ化の傾向を辿るとすれば、本当に恐ろしいですね。確か小林興起だったかと思いますが、郵政民営化の時に、投票直前まで内容の危険性に気付かず賛成していたと言っていたのですが、国会議員が法律に賛成する時に法律の文面を一通り見て、全体像を理解した上で賛成・反対を決めているわけではないという現実は、相当に恐ろしいものだと思いました。

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