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安直な発送電分離の議論は危険である!


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 電力において、発送電の分離が行われようとしています。今回はこの是非について考えてみようと思います。

 現在の発送電が一体となった地域独占体制では総括原価方式が採用され、電力会社が必要だとした原価に利益を上乗せする方式が採用されています。このため、電力会社は電力料金を引き下げる努力をしなくても、掛かったコストに利潤を上乗せでき、電気料金の引き下げにつながるコスト削減を真剣に追求しなくなる傾向にあるとされます。むしろ、総括原価が高いほど、却って電力会社の利益が増える結果にもつながるため、値段が高くなる傾向にあると言われています。従って、発送電を分離して、発電部門に新規事業者の参入を促せば、そこに自由競争が生まれ、地域独占にあぐらをかいてきた電力会社にもコスト意識が必ず芽生えることになるということになっています。

 ところで、マスコミでは当たり前のことのように語られているこのお話は本当でしょうか。福島第一原発事故当時に東京電力の社長だった清水正孝氏のことをウィキペディアで調べてみますと、以下のような説明が出てきます。

 発電所や変電所で使用する資材の調達部門を長く担当してきた。本社資材部長就任後は、各支店の資材調達を本社に一本化、費用切り詰めに成功した実績から「コストカッター」と呼ばれる。海外出張で遣う航空会社の絞り込みなど、日常業務まで徹底してコストカットを進めた。大量発注によるコスト削減には限界があると見て、納入業者を競わせてコストを下げる方式を導入している。また、発電所の六十数万点の部品・部材の調達方法を見直し、全体で2兆円かかっていた調達費を4割削減に成功した。その結果として資金繰りが悪化し、廃業した中小取引先の元経営者にも親身に相談に乗り「飾らない人材」と評された。

 2兆円かかっていた調達費の4割削減ということは、削減金額は8000億円ということになるでしょうか。すさまじいコストカッターぶりです。そして、そのあおりを喰らって倒産してしてしまった下請け企業もあったということのようです。
ウィキペディアの東電の清水元社長の記事

 清水氏がこの辣腕を振るったのは本社資材部長時代ですが、清水氏がこの本社資材部長に就任した時は1995年です。実はちょうどこの年から大口電力については電力自由化が開始され、電力の大口需要家は東電以外から電力を購入してもよいことになりました。清水氏が「コストカッター」となったのも、こうした背景とも関わるところだと思います。

 以下のグラフを見てください。青色の線が電力9社(沖縄電力を除く、日本の地域の中核となる電力会社9社)の設備投資額の推移を表しています。1993年をピークにして、電力会社の設備投資額が急激に減少に転じているのがわかります。しかも2005年前後ではピーク時の1/3にまで設備投資額が減っていることがわかります。


              (グラフは島倉原様が作成されたもの)

 このような投資額の減少には、国内が不況で電力需要が伸びないために、新たな設備投資を行う必要がなかったという要因も関係あるでしょうが、一般に機械類の耐用年数は10年程度のものが多いとされる中で、10年を超えても減少を続けていたのは、こうした要因だけでは説明がつかない話です。確かにその後に幾分かの回復はありますが、その回復にしても非常に弱いものでしかないところにも、目を向けておきたいところです。

 こうした事実を追っていくと、マスコミが大いに宣伝してきた、「総括原価方式を採用しているから、電力会社はコスト意識に無頓着なのだ」という議論は、全く事実に反する話だということがわかります。

 さて、福島第一原発事故の国会事故調査委員会の報告書を読みますと、以下のような記述が出てきます。

 平成18(2006)年に、耐震基準について安全委員会が旧指針を改訂し、新指針として保安院が、全国の原子力事業者に対して、耐震安全性評価(以下「耐震バックチェック」という)の実施を求めた。東電は、最終報告の期限を平成21(2009)年6月と届けていたが、耐震バックチェックは進められず、いつしか社内では平成28(2016)年1月へと先送りされた。東電及び保安院は、新指針に適合するためには耐震補強工事が必要であることを認識していたにもかかわらず、1 ~3号機については、全く工事を実施していなかった。

 この記述を読めば、東京電力は必要な安全対策を先送りしていたということになりますが、ではなぜ東京電力は安全対策を先送りしていたのでしょうか。総括原価方式によって、掛かったコストを電力料金にやすやすと上乗せできるのであるならば、先送りなどする必要はなかったのではないでしょうか。

 むしろ、総括原価方式が採用されているからといって、電力会社の思い通りに価格が決まっているわけではない実態が明らかになってきます。デフレ不況が続き、他の物価も上がっていない中で、電力料金だけが値上がりするというのは、社会的に簡単に容認される話でもないでしょう。しかも大口電力においては既に自由化が進められ、そんなにやすやすと値上げをするわけにはいかない状態にもなっていました。こうした中でコスト意識に駆り立てられてしまったために、安全対策が疎かになってしまったのではないかということが見えてくるのではないでしょうか。

 もし東電が、平成18年に求められた耐震安全性評価をクリアするように即座に動いていたならば、今回の福島第一原発の事故は起きていなかった可能性すら高いともいえるでしょう。だとすると、電力という国のライフラインを左右するようなものに対しては、安易に自由競争原理を持ち込んでコストカットに邁進させてしまったことの方が問題の本質に近いのではないかとも考えられます。

 こういう視点を持ってみた場合に、現在当たり前のように進められている発送電の分離は、問題を解決するどころか、さらに大きな問題を持ち込んでくるものになる恐れも高いということになります。国会においては、ぜひこのような点をしっかりと検証した上で、発送電分離について考えるようにしていただきたいと考えています。


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コメント

1. 発送電は分離しない方がいいです

発送電は、絶対に分離しない方がいいですね。電力会社設備の重要部分は、発電所ばかりに一般は、目を向けがちですが、送電網、配電網等、家庭や企業まで電力を送る設備がとても重要です。このネットワークを維持していくことが、現在の地域電力会社が創設された理由と思います。新規発電会社参入により、電力を安価にする話ばかり言われていますが、過疎地、僻地でも都市部と同じ料金で安定的に供給されるユニバーサルサービス義務が国民全体の利益と理解して、急激な改革は絶対に行うべきではないと思います。

2. 無題

連投失礼します。私は通信、電力設備向け資材メーカーに勤務していましたが、納入数量が減る流れの中で競争入札方式で相当苦労した覚えがあります。国内生産を止めて、中国韓国生産に会社方針で切り替えて、品質不良をたびたび起こしてクレーム対応にだいぶ動いた感じでした。また電力会社のメンテナンス等は、損益勘定で余分な費用と見られ、先送りしているケースはたしかにありました。老朽化、劣化したものを騙し騙し使う方が費用削減で利益が出ると内部の話でもありました。次の担当者はメンテナンス費用が一気に計上されて、たまったものではないと思います。設備のメンテナンスは軽視されがちですが、本当に大事なことだと思います。

3. 鋭い指摘に感銘!

発送電分離に関しては、他国での事例から停電の発生や価格高騰等問題が多いことは認識していますが、自由化以降このような凄まじいコストカットが行われてきたこと、そしてそれが安全性にも問題を引き起こしていることに関しては、見落としていました。ありがとうございます。拙ブログでも、電力自由化の問題を取り上げた際に、御ブログの紹介リンクを貼らせていただきますね。

4. Re:無題

>グラースさん
やっぱこりういう動きがあったんですね。関係した当事者の方から教えていただけると、実感が違います。
ユニバーサルサービスのためにも、電力の安定性のためにも、そして国民の安全のためにも、安易な発送電分離は、何とか阻止したいですね。

5. Re:鋭い指摘に感銘!

>憂国の一国民(財政危機はウソ)さん
嬉しいコメント、ありがとうございます。また、たびたび弊ブログをご紹介下さり、ありがとうございます。
貴ブログの躍進ぶりは、目を見張るものがありますね。ますますのご活躍を期待しております。

6. 初めて来ました!

いきなりすみません!初めてコメントします!今日は休みだったので、ネットサーフィンしてたらたどり着きました!次の更新も楽しみにしています!また来ますね!

7. こんにちは!

どうもです!初めて訪問させていただきました!色んな人のブログをまわっていたらたどり着きました!またコメントさせて頂きますので、更新ファイトです!

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