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世界は公正と信義に満ちた国々か?


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 第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)に関する報道に接して、意外な事実がわかりました。何と1997年に締結された京都議定書に定められた、1990年比6%減のCO2削減義務を、日本が達成していたというのです。朝日新聞の記事を見てみましょう。

 環境省によると、日本の2008~12年の温室効果ガス総排出量の平均(速報値)は1990年比で8・2%減となり、先進国に排出削減を求めた京都議定書で日本に義務づけられた「6%削減」の達成が確実になった。
朝日新聞の記事

 ところが、これには裏があります。朝日新聞の記事には、この後があります。

 08~12年の実質的な排出量の平均は12億7900万トンで、90年比1・4%増。だが、森林による吸収や排出量取引などの京都メカニズムを使い達成した。

 要するに、本当は6%削減ではなく、1.4%増だったのだけれども、排出権取引などを利用することによって、計算上は8.2%減になったということになります。ということは、日本は大量の二酸化炭素排出権を、外国にお金を支払って購入していたということになります。総額でいくらだったのかは大変気になるところですが、これを報じているマスコミは見つかりませんでした。実に残念です。

 さて、日本政府は2020年に温暖化ガスを2005年比で3.8%削減する目標を表明しましたが、1990年と比べて排出量は3.1%増加することになり、世界中からこれに対して非難が浴びせられました。民主党政権時代に当時の鳩山首相が1990年比で25%削減すると大見得を切っていたのと比較すれば、大幅な後退であると受け取られるのはやむを得ないところかもしれません。エドワード・デイビー英エネルギー気候変動相「深く失望した。日本政府に対して決定を見直すよう求める」との見解を示し、フィリピン代表団のイエブ・サノ氏「後ろ向きな目標ではなく、より高い目標や強い姿勢を見せるべき」との不満を表明し、中国代表団の解団長は「日本の今回の決定はCOP19に冷や水を浴びせた。同会議の進展に最も必要なことは互いの政治的信頼関係を増やすこと。公約したことを守らなければ、会議そのものが基盤を失うことになる」とのコメントを発しました。ブラジル「個別の国の前言を翻す発言」に懸念を示し、太平洋の島国のグループ「我々をより大きな危険にさらす」との緊急声明を発表しました。その他の国々も一様に日本非難の論調ばかりで、日本を擁護する立場からの発言は一つも確認できませんでした。

 しかしながら、福島第一原発の事故以降日本では原発の稼働がストップする状態になり、日本では電力用の化石燃料の輸入量が急激に増大していることを、世界は知らないのでしょうか。こうしたやむにやまれぬ状況の中でぎりぎりの判断をしていることを、世界は本当に理解できないのでしょうか。

 ここで私たちが思い出すべきは日本国憲法です。今さらな話ですが、日本国憲法の前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書かれています。つまり、この憲法の前提は、世界にいる諸国民は平和を愛する立場から、公正と信義に満ちた存在であることを前提としているはずなのですが、このCOP19での日本に対する過剰ともいえる非難を見れば、公正と信義にしっかりと依拠している国などどこにもないことがわかります。この意味では、中国・韓国・北朝鮮だけが特別なわけともいえない現実に気がつくべきです。

 石原環境大臣は、今後3年間に官民で計160億ドル(約1兆6000億円)の途上国支援を行うことを打ち出しました。排出目標を緩和することになれば、その分の排出権の購入を控えることになります。日本に排出権を売ることで利益を得ていた途上国からの不満が出てこないように計算されて出てきた金額なのだろうと推察するのが妥当なところだと思います。つまり、民間企業が購入してきた排出権のコストを国が肩代わりすることによって、日本の民間企業の事情を考慮しつつ、諸外国の批判もそらしたいという意図ではないかと感じられます。それは逆に言えば、日本の企業が排出権の購入でどれほどの負担を強いられてきたかということを如実に物語るものである可能性が高いわけです。

 排出権はリーマンショック以降の景気減速で、ここ5年間は実は暴落していたらしいので、当初懸念されていた支払い金額と比べると意外に小さかったようですが、それでも3年間に1兆6000億円もの支払いをするくらいのことを約束しないとバランスが取れないような話であったということなのでしょう。

 この排出権をめぐる話は、次回にも引き継いで考えたいと思います。


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コメント

1. 凄いエントリです

中韓ガーとかいう産経新聞風の記事と違い、今日は凄いエントリだと思います。
日本国民が一体どれだけの負担を強いられたか。天文学的数字になるのでしょう。日本人はカモられるのが嫌ならもっともっと勉強して、自覚的に、自らの人生の主人公にならなければなりませんね。

2. Re:凄いエントリです

>maomasamaoさん
日本のカモられレベルは本当にひどいですよね。この意味からも、京都議定書という仕組みに埋め込まれた隠れた意味を明確にすることも、本当に必要なことだと私は思っています。(これは次回のエントリーで詳しく書きます。)CO2削減にほとんど効果を持っておらず、日本から金を引き出させ、日本を弱体化させることがその目的ではないかということを、まじめに日本人は考えてみるべきだと思います。

3. 無題

お調子者だった鳩山氏の25%削減目標の話も大言壮語で、今に迷惑を掛けていますね。日本は石油ショック以来、世界的に省エネには先行していますし、高度成長期の公害対策にて、様々な環境対策技術には相当先行しているので、今更日本が排出ガスの大幅削減目標を掲げるのは、それこそ乾いた雑巾を絞るが如く苦労をしないとならないでしょう。天然ガス、石油等使用量を減らす為には原発再稼働が必要な措置となるでしょうし、中国、米国、発展途上国等環境規制の緩い国に日本の脱硫技術、コジェネ技術等を導入してもらうほうが、削減効果は高いような気がします。援助金を出すにしても、日本企業の環境対策技術の導入をしてもらえる様な方向の紐付きを検討していくべきではと私は考えます。

4. Re:無題

>グラースさん
「環境規制の緩い国に日本の脱硫技術、コジェネ技術等を導入してもら」った方がいいというところは、まさにその通りなのですが、なぜこの点を日本政府は攻めないんですかね。大々的に打ち出せばよいのに、やらないですよね。発展途上国への1兆6000億の援助の表明が「攻め」なんだそうです。何を考えているのか、さっぱりわかりません。

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