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COP19に見る、日本叩きの構造


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前回に引き続いて、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)関連の話をしていきたいと思います。まずは以下のグラフをご覧ください。これは1990年当時の二酸化炭素排出量の世界シェアを円グラフにしたものです。



 1990年当時の世界各国のGDPではアメリカとEUが概ね日本の2倍であったことと突き合わせて、このグラフを考えてみて下さい。もしこの当時のアメリカやEUが、日本と同程度のエネルギー効率を達成しているのであったならば、アメリカやEUの排出量の世界シェアは、それぞれ17%程度でなければならなかったということがわかると思います。とすれば、1990年段階ではアメリカは実質的に日本の2倍程度非効率で、EUにしても1.5倍くらいは非効率であったことがわかります。しかも、当時においてもアメリカには主な製造業はなくなっていましたし、EUにしてもドイツを除けば、製造業はそれほど盛んではありませんでした。つまり、まだまだ製造業が残っている日本との比較においては、実質的にはもっと大きなエネルギー効率の差が存在していたわけです。

 さらに、ロシアのことも見てみましょう。1990年当時に混乱期にあったロシアは、国の名前も定まらないような状態だったために、どの程度の経済力であったかの公式統計が見当たらないのですが、高く見積もっても日本の1/10程度、低く見積もれば日本の1/40程度のGDPしか存在しませんでした。しかしながら、エネルギー効率が恐ろしく低かったために、二酸化炭素の排出量は当時でも日本の2倍以上もあったのです。

 なぜ私が1990年の経済状態にフォーカスしているかといえば、1997年に結ばれた京都議定書が、1990年の排出量をベースにした上で何パーセント増やしたかとか減らしたかを問題にしているためです。日本以外の国は環境対応が明らかに遅れていました。ですから、日本がすでに開発していた省エネ技術を自国に導入しさえすれば、容易に京都議定書の目標値を達成することができる条件になっていたということがいえるわけです。これに対して日本だけは、更なる省エネ効率の向上を目指し、さらに先進的な技術を開発していかなければならなかったのです。しかもすでに省エネ技術自体が非常に高いレベルに達していたために、更なる向上は口で言うほどやさしいものではなくなっていました。

 さて、1990年当時の排出量のシェアと昨年(2012年)のシェアとを比較してみましょう。以下のグラフは2012年の排出量シェアです。



 上記の円グラフを見れば、2012年の日本の排出量のシェアは4%だということになります。なお、このグラフでは小数点以下が切り捨てられているため、私が個人的に手計算してみたところ、実際には3.8%という数字が出ました。ということは、なんと日本の排出量のシェアは1990年の8.5%から3.8%へと半分以下に大幅に減っているのです。

 世界中が経済成長をして、世界全体での排出量が2倍以上に膨れあがっている中で、日本はこの間にわずか1.4%の二酸化炭素排出量の増加に留めてきたというのに、世界各国から排出権を買い取らねばならない立場になっていました。しかもこのために支払った金額は、恐らくは兆を超える金額だったと推察されるということは、前回の記事でも明らかにした通りです。

 ロシアが京都議定書の枠組みに参加したのはロシアが環境意識に目覚めたからだと考えるのは、あまりにナイーブです。1990年の段階では笑えないレベルでエネルギー効率がひどかったわけですから、京都議定書の枠組みに参加するだけで、膨大な排出量を売ることができる立場に転じることができるようになったわけです。それはまさに国益に適うことだったのです。

 しかもこの京都議定書に、アメリカは調印していません。アメリカが調印していないのは、そんな約束をすれば、自分たちの首を絞めるだけであることを十分理解しているからでしょう。そして、この枠組みに参加していないことによって、このような会議が開かれても、ほとんどおとがめなしになるわけです。中国も「発展途上国」ということで、排出量の削減義務から免れています。ところが、この両国が占めるシェアは2012年段階で合わせて45%に達しています。中国は1990年のグラフでは「その他」に属するわずか0.6%のそのまた一部でしかなかったところから、2012年段階では世界の30%程度を占めるところまで急拡大してきました。そして、現在では日本の7倍以上の排出を行うようなところまで達しているわけです。そして皆さんよくご存知の通り、中国の抱える環境問題とは、二酸化炭素の排出量の問題だけではありません。大気汚染にせよ、水質汚濁にせよ、明らかに世界の環境問題に対して最大の問題国になっています。

 この状況を理解した上で、中国政府代表団の解団長の「日本の今回の決定はCOP19に冷や水を浴びせた。同会議の進展に最も必要なことは互いの政治的信頼関係を増やすこと。公約したことを守らなければ、会議そのものが基盤を失うことになる」との発言、蘇偉副団長の「言葉では言い表せないほどに失望している」との発言に、私たちは留意すべきです。そしてこの発言に対して批判めいた言葉が、中国以外の国からも出ていないのが世界の現実です。

 自分が責められる立場にないと、ここまで厚顔無恥なことが言え、しかもそれに対して何らの違和感もないというのが、現在の世界をよく表しています。日本人の一般的な感覚では、あまりに利己的に感じられるでしょうが、お互いが国益を賭けて利己的に振る舞い合うというのが、実際の世界の流儀であり、その中で丁々発止のやりとりを行っていくのが国際交渉の実際です。中国の言い分は道理の観点からは全く成り立ちえないものですが、中国以外の国にしても、日本から多額のお金を引き出させるという国益を考えれば、この発言を非難しない方が都合がよいわけです。つまり、いじめのような形にはなっても、日本批判に終始することが国益に適う道になる以上、その道を進むわけです。しかもこの間に世界のCO2の排出総量が2倍以上に膨れあがっていることからわかる通り、京都議定書はCO2の排出削減には全く寄与していないのが実際なのです。

 このように見てきた時に、京都議定書というのは、実質的には、日本に多額の排出権を買わせることを目論んだ仕組みであったと考えるべきでしょう。さらに、この仕組みがある状態の中で、日本の製造業の「国際化」=「産業の空洞化」が進展したという側面も私たちは見落とすべきではありません。多額の排出権を購入してまで日本に工場を建てたくないというコスト意識は、経営者の視点で見れば当然のことでしょう。表側の美しい理念の裏側で実質的にこの枠組みが果たしてきた役割というのは、日本を弱体化させることだったともいえるでしょう。日本がこの間経済成長しなかったために、思ったほど日本に排出権を買わせることはできなかったということだけが、この仕組みを考えた人たちの思惑から外れたところだったかもしれません。

 私たちは統一的なルールの上では、参加者すべてが平等に扱われていると考えがちですが、実はそんなことはありません。どのようなルールを作るのかによって、どこが有利でどこが不利かは当然決まってきます。美しい理念が表に立てられると、ついついそれに騙されてしまいがちですが、だからこそ、それを現実に適応した時にどういうことが起こるのかというシミュレーションによって、現実の得失を冷静に判断する目が必要になるわけです。このような視点を完全に喪失した国が我が日本であることに、私たちは気付くべきではないでしょうか。現実的におかしなルールにはしっかりと異を唱えた上で、どこが不条理であるかを徹底的に広報することも必要です。さらには、本質的に平等に近い提案を日本自身が作り上げ、世界にこれこそが平等であると、これまた粘り強く広報することも必要になります。

 戦後レジームからの脱却を政府が本気で考えるのであれば、外国だのマスコミだのの顔色を窺うところから始めるのではなく、日本が正しいと考える正義と道理を真正面から打ち出し、粘り強く広報するということを徹底することから絶対に逃げるべきではないということを、この問題をきっかけに考えてもらいたいと思っています。


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コメント

1. 無題

国際政治は利己的だと、つくづく思います。アメリカにしても多国籍企業が環境規制を嫌いロビー活動を相当行って、規制の骨抜きに努めていますね。日本だけがデフレで経済成長出来ず、オフショアリングで国内の産業空洞化してしまうと酷い状況になってしまいました。ご指摘の通り、世界的にガス排出量が完全に増加傾向にあることを指摘して、日本の環境対策技術を導入してもらうべきだと思います。発展途上国が先進国へ言う理屈は、先進国が環境破壊して、経済成長の利益を先行して享受してきたから、現在は積極的に排出権を購入して貢献しろとなるのでしょうが、排出権取引は一見良いように見えてもなんだか釈然としないところがあります。ODA等で日本企業が発展途上国に環境対策技術を導入出来る方向であれば、幾分かはましな状況になるのではないかと思います。

2. Re:無題

>グラースさん
国際社会が利己的であると言うことを、日本ではタブーにされていますよね。この状況を何とか変えたいものだと思っています。この点で韓国がいい働きをみせてくれているとも思っています。(笑)

3. 人のいい日本

初めまして。
そうなんですか1990年から日本ひとり涙ぐましい努力をしていましたか。
2009年鳩山由紀夫がコペンハーゲンで「排出量を2020年まで25%削減する」と無責任発言を公言しましたが、みなさん批判するべきでした。

4. Re:人のいい日本

>hoenteさん
コメントありがとうございます。本当に非難すべきでしたね。非難の声もあったのですが、大きくは取り上げられなかったのが残念です。

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