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シンガポールを見習っての国際化などありえない!


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 シンガポールに見習って日本も国際化すべきだという見解があります。この考えについて、今回は考えてみたいと思います。

 シンガポールには非常に多くの外国人労働者が働いており、人口のおよそ1/4を占めています。その中にはいわゆるエクスパットと呼ばれる人たち(先進国から来た大企業の駐在員たちで、大変な高給取り)がいて、彼らを多数呼び込める環境を作り出すことで、シンガポールは経済を拡大させる戦略をとってきました。この路線を日本も見習うことによって経済が活性化するんじゃないかというのが、「シンガポールに見習え」という議論の基本的な考え方です。

 しかしながら、こうしたエクスパットが快適な生活を行うためには、面倒臭い家事を一手に引き受けてくれる安価なメイドがいることが大きな役割を果たしています。彼女たちはフィリピンやインドネシアなどからやってきた出稼ぎ女性で、雇い主の台所で寝泊まりしています。彼女たちの働き場所はエクスパットの家庭だけでなく、シンガポール人の共働き家庭の家事の手伝いをすることもありますし、シンガポール人の老人介護を行うこともありますが、手取りの月収は日本円で4万円程度にしかなりません。しかも、半年に一度妊娠検査を受けなければならず、雇い主に強姦されたような場合を含めて、妊娠が判明した場合には、有無を言わさず強制帰国させられる立場です。

 シンガポールの3K労働を支えるワーカー(肉体労働者)も、バングラデシュとかインドなどから来ている出稼ぎ労働者です。熱い太陽の下で建設労働を行うのは彼らであり、彼らも一日働いて800円程度のお金しか手にできない立場に置かれています。(ちなみに日本で3K労働と呼ばれるもののことを、英語圏では dirty(汚い), dangerous(危険), demanding(きつい) の3Dsと呼ぶことがあります。)

 そしてこうしたメイドやワーカーに居着かれると困るので、彼らは家族を呼び寄せるようなことも認められていません。教育とか福祉とかの対象でも全くありません。そもそも不況になって全体の仕事が減れば、それだけで解雇され、本国に戻されてしまいます。労災事故にあっても、本国に強制送還されておしまいというドライぶりです。シンガポールを豊かにするためにはこのような使い捨ての労働力を必要としながらも、彼らの人権を認めるような真似は国家を滅ぼすとして排除しているわけです。シンガポールのリー・シェンロン首相は「外国人労働者はバッファに過ぎないと認識している」と明確に言い切っています。

 ここまでドライに割り切った政策だからこそ、シンガポールはその恩恵を十分に受けて発展できたともいえるわけですが、ところでこのようなドライな政策を私たち日本人は受け入れられるのでしょうか。あるいは「世の流れ」として受け入れるべきなのでしょうか。私からすれば、それが「世の流れ」だというなら、そのような「世の流れ」の方が間違っていると感じます。

 「国家戦略特区」という名の下に、シンガポールを見習った「規制緩和」を行っていこうということを、政府はまじめに追求しようとしています。むろん、シンガポールほどのドライさを発揮することは日本政府にはできないでしょうが、だとすればシンガポールが達成してきたような「成功」もまた望めないでしょう。

 「シンガポールに見習え」と主張している方々は、このようなことをどこまでまじめに考えて発言されているのかと、思わずにはいられません。


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PS 京都の国際シンポジウムでは、多くの方から「ブログ読んでいます」と声を掛けられ、大変驚きました。ブログランキングで100位にもなかなか入れないようなマイナーなブログですが、注目して下さっている方々が多くいるというのは、実に嬉しいことです。この場を借りて御礼申し上げます。


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PS 皆さんは北野幸伯氏のことをご存知でしょうか。北野氏は「(ソ連の)外交官およびKGB要員養成所」とも呼ばれていた、ソ連外務省付属のモスクワ国際関係大学国際関係学部に留学して卒業し、カルムイキヤ自治共和国の大統領顧問としての仕事もされた、まさにスーパーマンです。現在も日本の自立を願って、カリスマ的なメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」を発行されています。

 この北野氏が最近「日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら」(集英社インターナショナル)を出版されました。プーチンが日本にやってきて、日本の政治家の指南役になったら、どんなことをアドバイスするかというのを、物語仕立てにして読みやすく書かれたものです。

 「日本は自立を目指すべきだが、孤立してはいけない」というのがこの本の基本メッセージですが、その主張の根底にあるのは、私見では確かなリアリズムだと思います。とても読みやすい本ですから、さらさらと流れてしまいがちですが、この本の通底に流れているリアリズムというものがどういうものかという問題意識を持って読んでいくようにすると、北野氏のメッセージがなおくっきりと理解できるのではないかと思います。

 ぜひ手に取ってみていただきたいと思います。なお、アマゾンの販売サイトは以下です。
「日本自立のためのプーチン最強講義」


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コメント

1. 勉強になりました

シンガポールがここまでドライな労働施策を行っているとは、驚きです。竹中平蔵氏でさえ、そこまでは考えていないとは思いますが、この現実を国会議員をはじめ広く知るべきですよね。FB等で拡散させていただきます。

2. Re:勉強になりました

私の経済への根本的な疑問、というか不満なんですが

供給能力が上がっているのに、国民が不幸になるのは、完全に政治のせいです

調整しろ、富の偏在

過剰競争していて国民が不幸とかもうアホです

イオン含む大きなスーパーばっかりになったのは法的不備ですよね

その辺の問題が、多くの国民に知られる様になって欲しいです

3. Re:勉強になりました

>ことよさしさん
決してシンガポールだけが特別というわけでもなく、例えばマレーシアも外国人労働者は3Dsに限るなんてことを平然と言ってのけていたりします。日本が同様の政策を行うのは反対ですが、一方でお花畑思考から脱却してリアリズムに基づいてものごとを見ることができるように日本も変わっていかなくてはいけないとも思います。

4. Re:Re:勉強になりました

>鼻毛《甘さ控えめ》さん
まさにその通りですね。そして富の偏在を小さくすれば、それだけで新たな需要が生まれて、資本の側にとってもメリットがあるはずなのに、マクロ的な視野を失ってしまっていることが実に残念です。

5. 外国人を犠牲にしたシンガポール

そうですか。外国人が難儀をしてシンガポールは発展したのですね。
日本は見習うべきかな。
お人よしの日本は、逆に入ってきた外国人に食い物にされるのではないですか。

6. Re:外国人を犠牲にしたシンガポール

>hoenteさん
まさにその通りだと思います。「とにかく時代は国際化なのだから、国際化するのだ」という路線なのでしょうが、シンガポールのようなえげつなさを発揮する気がないなら、やるべきではないということなんでしょうね。外国人にも生活保護を出すようなお人好し国家が追随するような話ではないと思います。

7. 朝香様シンポでの堂々とした質問に感服いたします

シンガポールは右の北朝鮮とも呼ぶべき恐ろしい国ですね。この国を見習おうという人物はまあ狂っていると考えて差し支えないでしょう。地球には色々な場所があり、人間社会には色々なあり方がある、という意味で人類学や社会学の研究対象とすべきということはできるでしょう。

8. 無題

日本の文化が如何に人に優しい文化かてことがよくわかります。しかし、移民化政策をこれからは取って行く訳ですから、日本人が変わって行く必要があります。日本がドンドン破壊されていきますね。

9. 無題

シンガポールの外国人労働者の扱いの酷さは、当該ブログを読んではじめて知りました。勉強になりました。
竹中平蔵さんが、どこかで日本も女性の社会進出を今後より一層進めていくとフィリピン女性のメイドに家事をさせるのが良いと慶応の女子大生に話している記事を目にしたんですが、相変わらず酷い人だと私は思いました。

日本でも、少子高齢化、生産年齢人口減少で将来的に供給能力不足で労働者不足と言う人がいますが、生産性向上、技術革新の進展の早い日本では、やはり永遠の需要不足こそ心配すべきと思います。
外国人労働者ではなくて、ヒューマノイドロボットになることでしょう!

10. Re:朝香様シンポでの堂々とした質問に感服いたします

>maomasamaoさん
シンガポールは国民全体で国際化の活用の仕方を心得ているとも言えますね。こんな有様でも、「移民が増えすぎた」として、与党が手厳しく国民に攻撃される国家です。これに違和感を感じる日本人は、やなりグローバルスタンダードにはほど遠い存在であり、私たちよりももっと倫理的にしっかりしていた戦前の日本人たちが残虐非道なことをしたなどということは、なお一層考えられないことだと思います。

11. Re:無題

>大国男児さん
結局変わりきれずに、外国人に奉仕するだけで終わるのかもしれませんね。

12. Re:無題

>グラースさん
竹中平蔵氏がそんなことを言っていましたか。彼は日本がシンガポールのようになるべきだと考えているのでしょうね。彼の発想は日本人のものではないと思っていましたが、これを裏書きするものになったと思います。

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