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ケインズは単純な自由貿易論者ではない!(1)


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 誤ったケインズ理解が広げられてきていることに危機意識を持って、これから時々ケインズがどのような考え方をしていたかをご紹介したいと思います。今回は、自由貿易か保護貿易かという問題についてのケインズの考えの一端をご紹介します。

 ケインズは自由貿易主義者か保護貿易主義者かというと、実は話は単純ではありません。少なくとも一部の人が強調するほど、ケインズは自由貿易論一辺倒であったわけではありません。

 ケインズが書いた面白い論文に「国家的自給」というものがあります。ケインズの論文にしては実にわかりやすいですから、ぜひご一読いただきたいと思います。この論文の表題(国家的自給)から想像がつくと思いますが、国際的な分業の行き過ぎは好ましくなく、それぞれの国家はそれぞれにある程度の自給能力を持っているべきだという話が書かれたものです。自由貿易論というのは、それぞれの物品を作るのに最適な場所で生産を行い、自由に移動させるのがよいという考え方ですから、ケインズのいう「国家的自給」という考え方とはあまり相性がいいわけではありません。このことからしても、ケインズが単純な自由貿易論者ではなかったということがわかると思います。この「国家的自給」も、松川周二氏が全訳をアップされていましたので、リンク先を載せておきます。
松川周二氏の論文


 この「国家的自給」の中から、今回は「平和」の問題に絡めて、ケインズが経済的国際主義者(単純な自由貿易万能論者)に対してどのような批判を展開しているかをご紹介します。

 平和の問題から始めよう。われわれは今日,強い信念をもった平和主義者であるから,もし経済的国際主義者がこの点で説得的ならば,彼らはわれわれの支持を得るだろう。しかし,経験と洞察によれば,これとは全く逆であると主張する方が容易である。なぜならば外国貿易の獲得に国家的な努力を集中していること,外国の資本家の資力と影響力によって一国の経済構造が支配されていること,そして外国の変化する経済政策によって自国の経済生活が大きく左右されることなどが,国際平和を守り保証しているとは思えないからである。

 「外国貿易の獲得」というのは、主として自国で生産した生産物を売り込んで行く外国市場を獲得することです。ですから「外国貿易の獲得に国家的な努力を集中していること」というのは、競争力の高い自国商品を売り込むために外国の市場を開かせようとすることを言っていると考えて下さい。植民地の獲得競争に国家が必死になっている感じで捉えてもよいでしょうし、「自由」とか「公正」とか「平等」を圧力として保護主義的な相手国市場を開かせていこうと国家が相手国に脅しをかけたりするようなことを考えてもよいかと思いますが、こうした行動が平和に結びつくとは考えられないですよね。また、外国の資本家の資力と影響力によって一国の経済構造が支配されていれば、この資本家がもっと儲かる先を別の国に見つけた時に、遠慮することなくそちらに資本を移すことを考えることになります。「もっと優遇しないと出て行くぞ」と、圧力をかけることもあるでしょう。従って外国資本が国内に入り込みすぎていると、国家としての安定性が損なわれ、平和を傷つけることになるわけです。このような国家としての安定を損ねてしまうというデメリットが、自由貿易によって得られる経済的な利益より大きい場合には、自由貿易をある程度制限することも必要ではないかということを、ケインズは述べているわけです。

 国家的自給を目指すならどんなやり方でもいいとケインズが思っていたわけではなく、ロシア(ソ連)やドイツ(ナチス)などのやり方には批判的な立場であったことも付け加えておきます。それでも単純なグローバル資本主義的な考え方だと国家の自立と安定性が失われ、平和への脅威となるというケインズの考えは、着目しておきたい考え方ではないでしょうか。TPPなどの議論などでも問題にされるような論点ですよね。


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コメント

1. 遊びに来ました♪

記事読ませて頂きました♪私も色んな記事書いているので良かったら読みに来てみてください♪また遊びに来ますね♪

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