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捕鯨敗訴と戦後レジーム


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 日本の調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に違反するとするオーストラリアの主張を国際司法裁判所が全面的に認めた判決が出たことは、皆様もよくご存知でしょう。

 これに対して菅官房長官は「日本は60年以上も前に国際捕鯨委員会(IWC)に加盟し、IWC内の根深い見解の相違や近年みられる機能不全にもかかわらず、IWCにとどまり、広く受け入れ可能な解決方法を模索してきた」と言及しながら、「残念であり、深く失望しているが、国際法秩序、法の支配を重視する国家として判決に従う。今後の対応は、判決内容を慎重に精査し、真摯に検討する」との談話を発表しました。

 訴訟指揮を担当し判決内容を総理に報告に行った鶴岡公二日本政府代表に対して、安倍総理は日本の主張が法廷において認められなかったことについて厳しい叱責を行ったという報道もありました。

 さて、これらの発言・報道は、国内で高まる不満を和らげる効果はあったとしても、日本の捕鯨を世界に認めさせることには当然ながら効果を持つものではありません。私たちは日本はこの戦いで完敗したのだという事実を明確に認めた上で、なぜ私たちは完敗したのかということについてまじめに考えなくてはならないはずです。

 今回日本が違反しているとされた国際捕鯨取締条約には前文があり、そこにはこのように記載されています。

 正当な委任を受けた自己の代表者がこの条約に署名した政府は、
鯨族という大きな天然資源を将来の世代のために保護することが世界の諸国の利益であることを認め、
捕鯨の歴史が一区域から他の地の区域への濫獲及び1鯨種から他の鯨種への濫獲を示しているためにこれ以上の濫獲からすべての種類の鯨を保護することが緊要であることにかんがみ、
鯨族が捕獲を適当に取り締まれば繁殖が可能であること及び鯨族が繁殖すればこの天然資源をそこなわないで捕獲できる鯨の数を増加することができることを認め、
広範囲の経済上及び栄養上の困窮を起さずにできるだけすみやかに鯨族の最適の水準を実現することが共通の利益であることを認め、
これらの目的を達成するまでは、現に数の減ったある種類の鯨に回復期間を与えるため、捕鯨作業を捕獲に最もよく耐えうる種類に限らなければならないことを認め、
1937年6月8日にロンドンで署名された国際捕鯨取締協定並びに1938年6月24日及び1945年11月26日にロンドンで署名された同協定の議定書の規定に具現された原則を基礎として鯨族の適当で有効な保存及び増大を確保するため、捕鯨業に関する国際取締制度を設けることを希望し、且つ、
鯨族の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序のある発展を可能にする条約を締結することに決定し、
次のとおり協定した。


 つまりこの条約の趣旨は、鯨の乱獲を防止して資源としての鯨を守りながら、捕鯨産業が健全に発展できるようにしていこうというということです。決して商業捕鯨を原則として認めないという話でもないですし、ましてや調査捕鯨を行ってはならないという話でもないわけです。日本の調査捕鯨が国際捕鯨取締条約に違反するなどということは、条約の文面とその精神を理解し、その道理に基づいて判断するならば、絶対に起こりうる話ではありません。しかし、道理に基づいた日本の主張は認められずに、このように敗訴という結果に至ってしまいました。

 私が不思議でならないのは、世界中の海で鯨類全体で見れば、もうこれ以上繁殖できないくらい鯨の数が増えすぎていることを、日本が世界に向かって積極的に情報発信した形跡が全くないことです。もちろん鯨類の中でも種類と地域を限定すれば、絶滅の危機にあるものがいろいろと存在するのは確かですが、鯨類が年間に食する海産物の量は年間2.8~5億トンと推計されており、これは人類全体が年間に食する海産物の3倍から6倍にも達しています。そして鯨が増えすぎたために鯨に魚を食べられてしまう結果、人間の漁獲にも無視できない影響が出ています。それなのに、こうした事実を知っている人は日本人でもほとんどいないというのが現状です。そもそも国際捕鯨取締条約が商業捕鯨を前提としながら、その健全な発展を実現するために作られているものだということすら、ほとんどの人が知らない状態にあるわけです。

 情報戦など仕掛けなくても道理に基づいたことが実現していくのであれば、確かに情報戦などをわざわざ仕掛けることに意味はありません。しかしながら、この世界は残念ながらそんなきれいごとが通用する世の中ではないわけです。そうした事実を受け入れ、これに対する対策を自らの力で展開していく意志を持つことこそ、戦後レジームからの脱却ではないでしょうか。

 今からでも遅くないです。日本の捕鯨を守るために、世界的に鯨類は十分な回復を見せていて人類全体よりも3倍から6倍の海産物を食べており、人間の食料が圧迫されるに至っていることについて、日本政府はしっかりと情報戦を行っていくべきです。そしてこうした主張が国際的に一定の浸透が認められた段階で、日本は国際捕鯨委員会を脱退して日本独自の捕鯨の再開に道を開くというのは、当然あってしかるべきです。(情報戦を仕掛けないで脱退するという最も愚かな道を進むことを懸念しています。)

 安倍総理が戦後レジームからの脱却を本音として考えているのであれば、1つ1つの情報戦に勝利することに全面的に力を入れることから行うべきだという見解にご賛同いただける方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。


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コメント

1. 無題

だいぶ更新が開いたので、如何お過ごしかと思いましたが、安心しました。

捕鯨については、腹立たしい結果になりました。
政府、関連団体含めて広報周知に努めなくてはならないのは、歴史認識、慰安婦問題含めて同じことなんだと改めて認識しました。正しいことでも受け入れられない。かえって声の大きい方が勝つ。嘘でも百回言えば真実になるくらいのしたたかさ、不誠実さも目的完遂の為にはある意味必要なのかもと思いました。
国際会議のもともとの設立主旨は、商業捕鯨を認めて、乱獲を防止する為のものだったことに驚きました。捕鯨禁止と捕鯨国の批判をする場とばかり、ある意味勘違いしていました。勉強になりました。
ブログ更新楽しみにしております。これからも宜しくお願いします。

2. Re:無題

>グラースさん
コメントありがとうございます。ずっと調子が悪かったのですが、ようやく回復してきました。
やり方を工夫する必要はあるとしても、正しいことを正しいと主張するだけなのに、日本政府は本当に何もやらないですよね。肉食中心の欧米であっても、人間の漁獲資源に影響が出るほどクジラが増えすぎていると聞けば、それならクジラを捕ってもいいんじゃないかという意見が過半くらいにはなるはずです。法廷闘争のやり方の問題としてのみこの問題を捉えるのは誤っていて、総力的な情報戦を展開してこなかったことに敗因があるということから、日本政府は目をそらさないでもらいたいです。

3. はじめまして。・∀・)ノ゛ こんつぁo

良いブログですね(*^o^*)/色々な方のブログを読むのが趣味なのでまた遊びに伺わせて頂きます(_≧Д≦)ノ彡☆♪ではでは♪♪(●^∀^●)♪♪

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