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台中サービス貿易協定は、我が国の安全保障にも重大な影響があることを直視せよ!


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 台中サービス貿易協定で、台湾が大いに揺れています。日本のマスコミはあまり大きく取り上げませんが、人口2000万人あまりの台湾で主催者発表で50万人、一般報道においても10万人とされる大集会が台北で開かれました。(上の写真参照) これは日本の人口規模に置き換えれば、主催者発表で250万人、警察調べなどでも50万人の大集会が行われたに等しいくらいの大きな集会になっているという話になります。日本のマスコミが大きく取り上げない理由が全くわかりません。

 この台中サービス貿易協定を考えるにはいろんな視点がありますが、ここでは両者の社会制度の違いという点に立脚して考えてみたいと思います。

 この問題を考える上でヒントになるのは、中国のWTOへの加盟によってどんな事態が引き起こされたかです。中国がWTOに加盟した結果として、中国資本は諸外国で自由に投資することができるようになりました。外国メディアを買収して、中国国内と同様の報道を海外において行うことも可能になりました。そして自由主義社会においては中国系だからという理由でメディアを規制することなど当然できない社会的な仕組みがもともと備わっていますから、彼らにも自由な発言・報道が認められることになります。

 もちろんWTOへの中国の加盟は、確かに中国国内への外国メディアの進出も可能にしました。しかし中国は中国共産党が支配する管理社会であるがゆえに、自由な発言・報道が行えるわけではありません。中国共産党が気に入らない報道が行われると、報道したマスコミの記者にはビザが発給されなくなるなど、各種の干渉がなされることになります。そしてこの圧力に、日本のメディアのみならず欧米のメディアも屈してきていることについては、皆さんもご存知ではないかと思います。

 「相互に自由化を進める」ということ自体にももともと問題ははらんでいるわけですが、相互の社会制度が非対称である場合には、問題のレベルは格段に変わるということが、このことから理解できるかと思います。そして、目下問題とされている台中サービス貿易協定のはらむ問題も、この点から考えることができるのではないかと思うのです。

 例えば、印刷分野の相互開放について考えてみましょう。台湾企業は中国の印刷会社を買収して商業規模を拡大することはできるかもしれません。しかし買収した先の中国の印刷会社が中国共産党の気に入らない出版物を印刷する自由はありません。他方で中国企業が台湾の印刷会社を買収した場合には、その中国企業は中国共産党政府から印刷物に関する統制を受けているために、台湾における出版についても干渉を受けることになります。つまり、買収先の台湾の印刷会社においても、中国に対して批判的な印刷物を印刷・出版することなどできなくなってしまうわけです。このように、このサービス貿易協定は、出版の自由、言論の自由などとも密接に絡んでいる話でもあるわけです。(しかも、この台中サービス貿易協定は中国から台湾への投資の自由度の方がなぜか高いという不平等性までもっています。)

 台湾には大陸から渡ってくる中国人の数が増大し、労働市場において低賃金化が進んできています。今回学生が危機意識を持って大きく立ち上がった背景には、こうした雇用環境の激変が背景にあるようです。そしてこの台中サービス貿易協定が実現すると、現在以上に大陸からの移民が容易になり、彼らが参政権まで保持できる条件のもとでは、中国人に容易に台湾が乗っ取られてしまうと、まじめに危機感を募らせているわけです。

 台湾はすでに経済の中国依存を大いに深めており、GDPの4割は大陸関連だと言われています。つまり、中国政府の反感を買うと、台湾は国内経済が立ち行かなくなる状態にすでに追い込まれています。

 中国には以商囲政という四字熟語があります。「商をもって政を囲む」→「経済的な関係を深めることで政治環境を囲い込んでいく」というような意味ですが、台湾はすでに自分たちの命運が決せられるレベルにまで中国共産党に経済を牛耳られるようになってしまったわけです。日本政府が全力で台湾を支援するようなことを行わないと、もはや台湾の命運は見えているも同然だと思いますが、そこまでの危機感を日本政府がもっているとは、残念ながら思えません。そして台湾が完全に中国の手に落ちた時に、我が国のシーレーンに重大な影響が及ぶこと、すなわち我が国の経済も中国の手に握られることになることにも、正当な危機感を抱いているとも思えないわけです。

 台湾の国民運動に対して私たちは全面的に応援をすべきなのでしょうが、それは台湾の人たちのことを思ってというレベルだけでなく、自分たちにも大いに関わる話として理解すべきではないかと思います。


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コメント

1. 無題

親日的な台湾が中共に飲み込まれてしまうのは本当にまづいと思います。やはり経済的に取り込まれて、政治的に完全に制圧されてしまう感じですね。大陸に飲み込まれてしまうのは、台湾の人々の政治的、経済的自由が失われてしまう不幸なことだと思います。香港の人たちは果たしてイギリスから中共に帰属して、幸せだったのかと疑問になります。

2. 無題

台湾が中共に帰属することになった場合、東支那海が中共にシーレーンを押さえられることになり、公海上とは言え、海上航行に不安を抱える日本、極めてまづい状況ですね!果たしてマスコミの警告も全くない一般の人びとが危険性を理解することがあるのでしょうか、マハンの海上権力史論の世界は一般受けしそうにないと思いますが…

3. Re:無題

>グラースさん
地政学的な視点は戦後の日本ではタブーですが、絶対に必要ですよね。台湾が飲み込まれないようにするために日本に何ができるのかというのは、今絶対に見失ってはいけない視点だと思います。

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