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欧州議会選挙の結果を歪んで眺める朝日新聞


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 5月28日付けの朝日新聞の社説に「欧州議会選挙ー垣根をなくす永遠の試み」と題する社説が掲載されました。当然ながら、EU議会選挙で反EUを掲げる政党が大躍進した結果を受けての社説です。

 この社説の中で朝日新聞は「人も、モノも、カネも、文化も自由に行き交う。グローバル化は止めようのない世界の潮流であり、国境という垣根はますます意味を持たなくなる」ことを前提に、「どんな壁にぶつかろうとも、自由と平等の価値をもって垣根をなくす努力を滞らせてはならない」との立場から「EUは改めて、なぜ国の間の壁をなくすことが利益をもたらすかを説」かなくてはならないとする論を書いています。
朝日新聞の社説

 ところで、EUというものが始まったのはいつのことだったでしょうか。1993年11月、今から20年以上前のことです。このときEU圏に住む人々の中では「国境という垣根はますます意味を持たなくなる」と思った人が多かったから、EUが始まったのでしょう。そしてその当時には存在しなかったり見向きもされなかった反EU的立場の政党が徐々に勢力を伸ばし、今やEU各国で第一党になるのも珍しくない状態が現出しているわけです。

 つまり、当初は国境をなくした方が、「人も、モノも、カネも、文化も自由に行き交う」ようになって便利になると思ったから国境をなくす試みをはじめたのに、20年も続けてみた結果として現実に肌で感じる違和感の増大に「ノー」という声を上げたというのが実際ではないでしょうか。「自由と平等の価値をもって垣根をなくす努力」はすでに20年も続けてきたことであり、その結果として「国の間の壁をなくすことが利益をもたらす」というのがまやかしであることに、生活実感のレベルから感じるようになったのではないでしょうか。そうした現実の経験を経てきて出てきている見解を、「グローバル化は止めようのない世界の潮流であり、国境という垣根はますます意味を持たなくなる」との、20年以上も前から語られてきた勝手な信念から一方的に否定することのおかしさに、朝日新聞は全く気付いていないようです。

 朝日新聞はさらに面白い見解を表明しています。

「長引く不況と失業、福祉カット。緊縮財政を各国に課すEUへの風当たりは強い。移民に対しては、雇用を奪い、福祉を食い物にしている、との批判がぶつけられている。国民感情が経済に影響されるのは世の常だ。むしろ事態を悪化させているのは、真の問題のありかを率直に説かず、ナショナリズムに訴える政治手法だ。」

 どうやら緊縮財政を要求されて経済環境がよくなくなっているという現在の経済環境こそが問題の本質であるのに、それとは関係ないナショナリズムを焚き付けるおかしな政党が各地で台頭しているという認識のようです。つまり、リーマンショック後に襲った欧州債務危機に端を発する経済環境の悪化はナショナリズムの喪失とは何の関係もなく、また一時的なものにすぎないのに、長期的メリットを考えることのできない人々が無関係なナショナリズムと結びつけた極端な議論にだまされているにすぎないと朝日新聞は考えているのだろうと推察されます。

 これについては2つの観点から反論しておきたいところです。第一に、今回フランスで第一党になった国民戦線は、既に今から10年以上前の2002年のフランス大統領選挙において決選投票に残るまでの力をつけていました。今欧州が苦しんでいる経済的苦境がない段階でもこうした勢力は力をつけてきていたのであり、これを一時的な経済的苦境のせいのみにするのは、正しい認識とはいえないでしょう。フランスにおける国民戦線の台頭には、フランスの中からフランスの伝統文化や価値観が失われていくことへの現実的な脅威が背景としてあるということを、絶対に見落としてはいけないはずです。単なる経済問題ではないですし、単なる一時的な話でもないのです。

 第二に、欧州経済がこれほどまでにおかしくなっているのは、人・モノ・カネの移動においては国境をなくし、各国独自の金融・財政政策に大きな制約を課すというその仕組みによってもたらされたものでしょう。つまり、各国が独自の判断で独自の対策を施すことを求めるナショナリズムを否定した結果なのだということです。ナショナリズムを否定された中で対応ができないから、ナショナリズムに回帰しましょうという主張が台頭するのは理の当然ではないでしょうか。朝日新聞は「EUが国の権限を奪ったからだと弁明」するのは「真の問題のありかを率直に説かず、ナショナリズムに訴える」ことだと言いますが、EUが国の権限を奪ったことが真の問題のありかであることを理解されていないようです。

 そして朝日新聞は以下のような文章で締めくくっています。

 「日本もひとごとではない。世界の現実と地続きにある日本の数々の問題を冷静に説き、そして国を開く賢い処方を多角的に論じる。そんな政治が欲しい。」

 安易に国を開いたらどういう事態が待っているかをEUはまさに教えてくれているのではないでしょうか。私たちはTPPや日中韓FTA交渉などにおいても、このEUの経験を踏まえて考え直すべき時に立っていると考えます。


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 なお、今回の私の記事はブログ仲間の「みさか明」さんの記事を参考の書かせて頂きました。よければこちらもご覧下さい。
「みさか明」さんの記事


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コメント

1. ありがとうございます

恐縮です。ご紹介くださり有難うございます。

今日の記事も、とても参考になりました。
本来はこうした記事を書く事こそが、新聞社の務めだと思うのですが。
自分たちの意見をゴリ押しするだけなら、もう新聞など要りません。

2. Re:ありがとうございます

>みさか明さん
こちらこそ、ありがとうございます。
みかさ明さんのご説明は私の書いたものよりずっと簡明でわかりやすいですし、数字の扱いなどもしっかりとしていて、私の方こそいつも参考にさせていtだいています。それぞれの持ち味で頑張りましょう。

3. こんにちは(^^)

ブログを書き始めたので他の人のを見て回ってました!!とても見やすいブログですね(≧▽≦)更新が大変~~気長に更新していきましょうワラ☆

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