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「成長戦略」から導く「女性が輝く日本へ」という考え方のおかしさについて


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 政府は持続的な日本の経済成長につなげるための「成長戦略」の一環として、「女性が輝く日本へ」を打ち出しました。このことに私は違和感を持ちます。

 働きたい女性が思ったように働けないという状態を解消すべきではないのかと言われたら、別にそのことに異論はありませんが、しかしそうしたことは「成長戦略」とは全く関係なく論じるべきものではないかと思います。今回の政府の方針の底流にあるのは、「働きたい女性が思ったように働ける状態に近づける」ということが「経済成長につながる」と考えているからその施策を推進しようということでしかなく、逆に言えば「経済成長につながるというのが幻想だった」ということになったら、この政策は消えるということになるということをも意味するわけです。

 そしてそれはまた、「女性が輝く」という言葉の意味を限定していることになります。専業主婦としての誇りを持って頑張っている女性は、この定義においては「輝いているとはいえない」ということになります。本当は専業主婦として子育てにもっと愛情を注ぎ込みたいと思っていても、経済力が許さず、家計のためにやむをえずフルタイムで働かなければならなくなっている女性もいるでしょうが、こうした女性の方がこの定義では「輝いている」ということになります。「立派にお金を稼いでいる」ということは輝かしいが、「立派に子育てをしている」ということを輝かしいとはみなさないというのは、社会のあり方としてそもそも不健全でしょう。

 そしてそのことは、子供の生育環境の良否に対して無頓着であることを、明白に露呈させています。かつてベビーホテル問題というのが大きく取り上げられたことがありました。劣悪な環境のもとに多くの乳幼児を預かるベビーホテルにおいて、病気になっても看病してもらえないとか、場合によっては死んでも気付いてもらえないといったことが問題視されました。こうした事例はとても許されるものではありませんが、ではこのような極端な事例さえなければベビーホテルには何の問題もなかったのかといえば、そういうわけではなかったでしょう。母親ならば必ず無限の愛情を注いでくれるというわけではないでしょうが、ビジネス上の制約の中で多くの子供達を同時に相手にしなければならない(職業)保育者よりも、母親が直接責任を負って育てている子供の方が、一般には生育環境がいいのは論をまたないところだと思います。待機児童ゼロを目指すことのみを目的とした規制緩和が、子供の生育環境の悪化につながるのはほぼ確実でしょうが、この件についてまじめに考察している形跡は、残念ながら私には感じられません。

 以下のグラフは、特別支援学級(特殊学級)や特別支援学校(養護学校)に通う生徒の割合ですが、近年大変激しい勢いで上昇してきていることがわかります。発達障害に対する理解が広がり、従来であればそういう学級・学校に通わなかった子供達が通うようになったという側面もあるものの、それだけでが原因とはいえないでしょう。生育環境の劣化も影響を及ぼしていることは見逃すべきではないでしょう。

  特別支援学級や特別支援学校に通う生徒の割合

 さらに言えば、発達障害児が増えていることには、高齢出産が増えていることにも原因の一端があると思います。例えば、20才で生んだ子供と35才で生んだ子供を比較すると、ダウン症の子供が生まれるリスクは実は4倍化しています。他の先天性異常についても高齢出産によって同程度のリスクの上昇が見込まれるのであり、私たちが持つ生物としての肉体的な限界を謙虚に理解することも大切であると考えます。加齢によるリスクの上昇は低線量被爆によるリスクの上昇などとは比較にならないくらい大きなものだということも、まじめに考えてみる必要があるのではないでしょうか。


  出産年齢別のダウン症児の出生割合

 人間が持つ生物学的限界とか文化的に望ましい生育条件というものをまじめに考え、この見地から若いうちに結婚し、子供を産み、安心して育てていける社会をどう作るのか、子供に手がかからなくなって女性が働きに出たいと考えた時に、男性に対して大きなハンディを負うことなく働ける環境をどう作っていくのかを考えるということこそが、正しい論の進め方だと思います。この論の進め方はミクロな経済合理性の観点からは答が出て来ないものでしょう。長年企業において仕事に揉まれてきた男性に対して、子育てばかりに注力してきた女性が評価されにくいというのは、ある意味で仕方のないところがあります。しかしながら、子育てという大きな事業を行ってきた女性に敬意を表して、いくらかの経済合理性を無視してでも子育てを卒業した女性に活躍の機会を作っていこうというのであれば、それは求められる国家建設だろうと思います。

 このような見地から「女性が輝く日本へ」と言っているのであるならともかく、成長戦略の柱として位置づけているという点で、私は大きな歪みを感じざるをえないのです。


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コメント

1. 初めまして

働きたい女性が働くのを応援するのは、
やって欲しいとは思いますが。
私の母もそうなのですが、今の日本は
多くの家庭内で女性(妻、母)が「働かざるを得ない」状況に陥っているのが問題です。
嘗ての日本はそうではありませんでした。
女性が外で働かなくても、十分に各家庭がやっていける、これを取り戻した上で働きたい女性を積極的に登用するべきなのです。
今の政府の「女性の社会進出」に対する考え方は、かなりずれているように思います。

2. Re:初めまして

>雪灯さん
まったくおっしゃる通りだと思います。
欧米では経済的な力を背景に男性が女性を抑圧することが広く見られたために、女性が経済的に「自立」することが「男女平等」の当然の前提のように考えられたところもあるようですが、これを文化や家族のあり方の違う日本にそのままスライドして考えるということ自体がおかしいですよね。自国の文化の固有性というものを見失っているために、このような馬鹿げた発想が広がっているように感じます。

3. 女性活用

竹中平蔵が目論む成長戦略とは家庭内から非正規の労働者を引っ張りだして、外国からも流入させて労働市場の更なる流動化を図って人材派遣業界を潤わせ、企業は安い労働力でコスト圧縮してグローバル市場においての価格競争力を高めることであって、完全に両者の合作ですね。国民の幸福や国家の繁栄など全く眼中にはないと思います。

4. 無題

経済の不安定で所得は伸び悩み、晩婚化して弊害が出てきているように感じられますね。労働者不足、供給能力不足が女性、高齢者の労働参加を解決策としていますね。外国人労働者を含めて私は懐疑的に思いますが、結局、成長戦略の具体策が考えつかず、スティグリッツ、クルーグマン教授の発言である女性の労働参加をうたっているだけなのかと思います。政府が産業政策をすることに無理があると思われてなりません。

5. Re:女性活用

>さむらいさん
まさしくその通りですね。グローバルに競争した時に、日本の労働者の賃金は発展途上国より高いことが問題だと考え、そのために日本は発展しないという視点でものを考えると、日本の労働者の賃金が発展途上国以下になれば問題が解決するという発想になりますよね。それが日本人や日本国にとって幸福なのかという当たり前の問いかけが必要だと思います。

6. Re:無題

>グラースさん
晩婚化を減らし、若年のうちに子供を産み、育てやすい環境をどう整備するかという視点でものを考えた場合に、配偶者控除の廃止という方向は出てこないでしょうね。結婚して同居している夫婦は夫婦の平均年齢が30才になるまでは賃貸住宅を借りる際に賃料の半額を補助するとか、出産に関わる経費が実質的に無料になるようするとか、医療費や教育費は公立に通っているうちは高校までは給食費等も含めて実質無料にするとか、若くして安心して子育てができる環境づくりを真剣に追求してもらいたいなと思います。

7. こんにちわ~★

記事読ませて頂きました。現在アメブロユーザーに話題の自動いいねツールを無料で配布させてもらってます♪結構高機能なのでアクセスアップにつなげてみてください♪

8. 何でもありの経済成長戦略(・_・;)

こんにちは♪

“下手な鉄砲数打ちゃ当たる”戦略って感じがします。

等々、女性のことを経済の成長の一環として言ってきたか!!って感じます。

これがダメなら、今度は子供!?って感じ。


どこかの研究発表でもありましたが、子供を産むのは男女ともに20代が一番良いと言っていました。まあ、当たり前って言えば、そうなんですけど(笑)

子供の発育にも影響あるのは記事にもありますように、その通りですよね。

それなら、20代に結婚し、20代で子供を産む!!という、普通のことが出来る社会を作ることが、結果として経済成長にも繋がることの1つだと思います。

寿命が長いのは、戦争を知っている方々。

昭和30年以降の方は、食生活も含め、長生き出来ない身体の作りになっていると思います。(添加物まみれの食生活ですから)

それらも、年頭に入れて考えるべきだと思います。

女性に矛先を向けるのは、ナンセンスです。

上手く言えないですが・・・(^_^;)

9. Re:何でもありの経済成長戦略(・_・&#59;)

>アクアさん
「20代に結婚し、20代で子供を産む!!という、普通のことが出来る社会を作ること」…国民の幸せと国家の未来を考えた場合に、まさにこれが政策の基本に来るべきですよね。
なお、食品添加物の害は科学的には100%無視しえるといってもいいレベルですので、過剰に考えなくても大丈夫です。これについてもそのうち記事を書きますね。

10. ご無沙汰しております

朝香さんお元気でしょうか^ - ^
私は相変わらずです

「女性が輝く日本」は、良いと思いますが朝香さんのおっしゃるように、「成長戦略」の一環で、その成長戦略の中でもそれが大きく占めているのだとすると(O_O)どういうこと???
ってなります
これは、成長戦略とは切り離しやることではないかなぁと素人の私でも思います
別物ってやつです
これが成長戦略の一環なのであれば、何だかとってもお粗末に感じます

景気良くなりませんねー思った通り(; ̄ェ ̄)
デフレ脱却
忘れさられてる感半端ないです

11. こんにちは(。・ω・)ノ゙

色んなブログ見てたら来ちゃいました(・∀・)人のブログを見てると楽しいですね♪更新が大変~~気長に更新していきましょうワラ☆

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