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イラクに見るアメリカの無節操さ


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 イラク情勢を見ながら、私はアメリカの無節操ぶりもここまで来たかとあきれています。

 いうまでもなく、イスラム教スンニ派過激組織「ISIL(イラク・レバントのイスラム国)」がイラクでの攻勢を強め、イラク政府軍との戦闘に次々と勝利してその支配地域を拡大しているのが、現在のイラクです。このようなテロ組織がイラク内部の国家分裂を企図しているのは明白であり、アメリカが「テロとの戦い」こそ重要だとする従来の立場を堅持しようとするなら、ますはこのISILの勢力を削ぐことに全力を傾け、現政権であるマリキ政権を擁護することこそ当然のあり方だということになります。

 ところがこともあろうに、米オバマ大統領は、すでに6月23日の段階で「イラクには新しい政府を形作る機会がある」と述べ、マリキ政権の追い落としに動き出したわけです。「マリキ政権には宗派対立を収拾する力がない」というのが表立った理由ですが、これが現在行うべき行動でしょうか。現政権を弱体と混乱に陥れる処置はイラクの分裂を必然的に促進する処置でしかありません。マリキ政権の担当能力に疑問符があるとしても当面はISILを叩くことに集中し、ISILを叩き終えてからマリキ政権の交代を民主主義のプロセスを守りながら促していくというのがあるべきあり方でしょう。マリキ首相が「(現政権に代わる)救国政権を作ろうという試みは憲法と政治プロセスに対するクーデターだ」と述べましたが、これは実にもっともな話で、アメリカが現在進めているのは民主主義が定める手続きを敢えて無視するクーデターまがいの行動です。

 そしてイラクで暴れているのはISILだけではありません。クルド人勢力も軍事力を背景に北部の主要油田都市キルクークを掌握し、「クルド人による原油輸出は憲法違反」だと主張する中央政府の言うことは無視して、これまで限定的にしか認められてこなかったクルド人自治区の原油輸出を8倍に増やすことを明言しました。クルド人自治区のハウラミ天然資源相は、「モスル(陥落)前のイラクは消滅し、新たな現実が生じた。われわれは中央集権化と脅迫を望む一部の政府当局者の指図は受けない」とまで言ってのけています。これは明白に国家分裂を企図する動きではないでしょうか。

 ところが米オバマ政権のケリー国務長官はクルド人自治区を訪問し、クルド人自治政府のバルザニ議長と会談してみせました。表向きは「挙国一致の政権づくりのためには、クルド人の協力が欠かせない」というものですが、実質的には国家分裂を容認する方向に動いているのは明らかでしょう。

 ついこの間、住民投票の結果としてロシアとの併合を望んでいることが明らかなクリミアがロシアと一体化することにまさしく強硬な反対姿勢を見せ、激しい経済制裁まで行ってみせたアメリカの態度と、今回のイラクにおいて見せているアメリカの態度の落差には、驚きを禁じえません。しかも今回のこの混乱をきっかけにして原油価格が暴騰しており、これがエネルギー価格によって国の経済の浮沈が決まるロシアを大いに助けることになっているというのも、まさに皮肉です。

 アメリカはイラクに軍事顧問団や特殊部隊(査察チーム)の配備は行い始めたものの、ISILらと直接戦うための米軍の派遣は考えていません。実質的には現在の流れを止める気はさらさらないということなのでしょう。ISILが力を持つスンニ派勢力・クルド人勢力・国内最大派のシーア派勢力の3つに国内が分裂するのは抑えようがないと考え、その新たな体制のもとで最大の権益を確保すべく工作を行っているというのが現在のアメリカの姿のように思えます。そしてそのアメリカの姿には、統一した世界戦略からものごとを考えるという姿勢は全く感じられません。地域地域で利権の最大化を目指していて、政策相互に明らかな矛盾があっても開き直っているようにすら感じます。

 もともとアメリカは崇高な理念に基づいて行動する国ではありませんでしたが、最低限の建前はそれなりに保持してきたところがあったように思います。しかしながら、それすらも完全に失ってしまったようです。

 統一した世界戦略を立案できなくなった現在のアメリカと我が国はどう付き合っていくのかについて、私たちは根本的に見直していく必要がありそうです。義理堅くアメリカの要求を呑んだらアメリカはそれに応えて行動してくれるということは、これまでも期待するのはおかしなことでしたが、明らかにこれまで以上に期待できないわけです。ましてや核大国でアメリカに次ぐ世界第二位の軍事予算を持つ中国とまじめに対峙して、同盟国である日本を守ってくれるとアメリカに期待するのはお門違いということになるでしょう。このアメリカの変化を見逃してはならないと、私は思います。


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コメント

1. オバマは二期目です。

米国大統領が第二期に入った際、起こるべきことが起こっているように思われます。彼の後釜にする大統領候補のキャンペーンとホワイトハウスを引き上げる前にやっておかなければならないことは山ほどあると聞きます。特にオバマの二期目は完全に「ラッキー」で再選された為、事実上彼の影は「非常に」薄いんですね。となると、日本の執権や摂政と同じく大統領のブレーン集団および既得権益に甘んずる財閥・企業(日本と同じく)+ロビイストにほとんど(99%)政策決定が任されているといっていいでしょう。こうなった際、もちろん政策にゴーサインをだすのは確かにオバマですが、政策の内容は、すべて上記の人々によるものです。要するに、今起こっていることは、間違いなく、それらの人々に最多の利益が行くように立案された政策が生んだ結果と言えるのではないでしょうか。オバマ自身の政策ではなく、今起こっていることを観察することによって、アメリカでは今誰がパワーを握っているかが分かります。

2. ☆朝香豊さん★

ブログサーフィン中ですー
こういう感じの記事は共感できます!
絶対また来ます!

3. 初めまして(´∀`)

タイトルが気になったので拝見させて頂きました。
見やすくてすごくいいブログですね!
また覗きに来ますね(゚ー゚)

4. ごめんください~♪

ウロウロしてたら辿りついちゃいました
ご挨拶代わりに書き込みしていきます。
私もペットなどの記事を書いてるので、よかったら遊びに来てくださいね^^

5. はじめまして(^^)ブログ読ませていただきました!

実は、朝香豊さんのブログが好きでいつも読んでます。
私もブログ書いてるので、ぜひ遊びにきてください♪
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6. はじめまして、朝香豊さん

いつも楽しませてもらってますよ
楽しんでブログを書いているんですね♪
また来ますよ~

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