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危険なGPIF改革


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 GPIF(政府の年金運用基金)の「改革」が発表され、これまで国内債券の運用比率が60%であったものを35%にまで激減させる方針が明らかにされました。国内株式はこれまでの12%から25%へ、外国株式もこれまでの12%から25%へ、外国債券はこれまでの11%から15%へ、それぞれ引き上げるとされています。この制度改革に、私は賛成できません。

 年金というものは長期にわたって安定的に運用されることが求められるものであって、リスクを冒してでも高い利回りをめざすものではないでしょう。仮に「想定外」の大変動が経済に押し寄せたとしても、運用に与える影響が比較的軽微であることが求められるものです。「想定外」のことが起こったので予定通り払えなくなりましたなどということがあってよいものではないのは、わざわざ言うまでもないでしょう。この点で、年金というものにおいては、結果としての運用利回りが高ければ高いほどよいというようなものではもともとないわけです。

 その点を確認した上で、もう一度運用比率がどう改められることになったかを確認してもらいたいのです。長期において最も安定した資産となる国内債券の運用比率を60%から35%にまで引き下げ、為替変動や株価の上下によって大きな影響が生じる国内株式、外国株式、外国債券の比率を合計40%から65%にまで大幅に引き上げるというのです。これではリーマンショック時と同様のことが仮に再び起こって、急激な円高によって外国債券の日本円での評価額の暴落が生じ、内外の株式の急落が発生するといったことがあった場合、非常に大きなダメージが生まれることになるわけです。

 現在GPIFが保有する国内債券の運用額は68兆円ほどですが、今回の「改革」が実行されれば45兆円ほどにまで引き下げられることになります。これは23兆円ほどの国内債券(主として国債)をGPIFが売却するということを意味します。恐らくこのことと日銀が追加緩和によって国債の買い取り額を20兆円ほど増やすと言っているのとは、連動したものなのでしょう。また、アメリカが量的緩和を終焉させたのと軌を一にしており、米ドルが担えなくなった役割を米ドル同様の国際通貨である日本円に肩代わりさせるという意味合いも恐らくあったのだろうと思います。

 政府はなぜこんな「改革」を進めようとしているのでしょうか。年金の莫大な資金で株の購入を行えば、株価の上昇をもたらすことができます。株価の上昇を喜んだ株主が財布のひもを緩めてくれることで景気回復を図ることができると踏んでいるのでしょう。政府からすれば「資産デフレからの脱却」ということになるのでしょうが、私に言わせれば「資産バブルの発生」です。

 実物経済が順調な成長軌道に乗り、それに伴い企業業績が回復し、企業の評価といえる株価が上がるというのは決しておかしな話ではありません。しかしながら、実物経済の動きが悪いから、実物経済から切り離して金融経済におけるお金の流れを厚くして株価を引き上げてやろうというのは、筋が悪いでしょう。そこで形成される株価は実物経済での実力から乖離していることになるからです。そしてそのような実物経済から乖離した株価によって私たちの年金基金が支えられることになるということについて、我々はもっと警戒心を持ってよいのではないかと思います。量的緩和をさらに拡大して株価の上昇を図った場合に、リーマンショック的な破綻につながる原因を作っているという意識を、私たちは持つべきではないでしょうか。


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