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バブル崩壊後に取るべき経済政策とは

 New York Times に載っている、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンの "Coulda Been Worse"(まだましだったのだ)というコラムを見ていましたら、Josh Lehner という方が行われた興味深い実証研究が出ていました。

 クルーグマンはこのように書いています。

 Josh Lehner does something I’ve been meaning to do: he compares US economic performance since the financial crisis with other episodes of major financial crisis. (ジョシュ・レーナーは私がずっとやりたかったことをやってくれている。彼は今回の金融危機以降のアメリカの経済状態を、他の金融危機の時がどうだったかというのと比べてくれているのだ。)

 そこで、このジョシュ・レーナーが行ってくれた実証研究がどのようなものか、ここで見てみようと思います。

 ジョシュ・レーナーは、今回のアメリカの大不況が、第二次大戦後にアメリカが経験してきた他の不況と比べれば極めて深刻なものであることを示しながらも、1929年から始まる大恐慌とか、諸外国の大不況と比べると、まだましだったということを示しています。彼は次のように書いています。

 While the initial path of both the global and U.S. economies in 2008 and 2009 effectively matched the early years of the Great Depression – or worse – the strong policy response employed by nearly all major economies – both monetary and fiscal – helped stop the economic free fall. (2008年、2009年の世界経済とアメリカ経済が当初たどった道は、大恐慌の深刻化の初期とほぼ同じか幾分今回の方が悪いという感じだったが、ほぼ全ての経済大国が採用してくれた、金融・財政両面の強力な施策により、経済が滑落することを防いでいたのだ。)

 以下のグラフを見て下さい。これは危機発生時と比べて、何%の雇用が失われたかを示したグラフです。黒い破線が1929年からの大恐慌が見せた動きで、赤い太線が今回の危機でアメリカ経済が見せた動きです。確かに当初2年くらいまでの落ち込みは、大恐慌時と大差ない動きでしたが、今回の大不況はその後においてはかなり持ち直していることがわかります。



 ところで、このグラフの別の部分に着目して下さい。群青色と黒を混ぜ合わせたような色で示された線の部分です。グラフでは一番上の方に位置しています。これが1990年代からの、我が日本のバブル崩壊後のグラフです。随分と善戦していることに気がつかないでしょうか。

 日本政府は1990年の6月に、10年間で総額430兆円の公共投資を行うことを決めました。(国と地方自治体の合計であり、国単独ではありません。)実際にはここまで大々的なことは行われず、1996年を除いては、単年度で総額40兆円を越えたことはありませんでしたが、それでも確かに公共投資は急拡大しました。



 この経済政策に対しては、思っていたほどの効果がなかったとして、無駄だったとの評価が一般化しています。確かに経済状態がみるみる回復した感じはありませんでしたし、こうした積極経済策の結果として財政赤字が膨れあがっていったようにも見えました。この状態に対して恐怖を覚えた政治家・エコノミストも多かったと思います。

 しかしものごとは相対化して見てみないとわからないことも多いのでしょう。あの時の積極財政政策に対しては、確かに実感としては効果はほとんどなかったかのように感じられました。しかしながら、バブルの崩壊によって巨大な経済負荷がかかった中で、1997年までは雇用をほとんど減らさない形で日本が耐えてこられたのは、まさに積極財政政策を採用してきたおかげなのではないかということが、このグラフからわかるのです。

 むしろ、財政の悪化に怖じ気づき、財政再建を優先課題にしなければならないということで緊縮方向に舵を切ったことによって、不況はより深刻化し、今日まで長引いているのではないかということも考えたいところです。実際、1997年に橋本内閣が消費税増税政策を実施して以降の方が、国債依存度は跳ね上がり、国債残高の伸びも大きくなっているというのは、下図を見ても明らかなのです。




 積極財政策をとっても景気がそんなによくなった実感なんてないぞとの批判が寄せられたわけですが、実際には積極財政策を採用しなかったとしたら、言語を絶するほどに恐ろしいまでの経済の落ち込みを経験していたはずなのです。確かに実感としては経済がよくなったとは思いにくいということがありますが、それだからといって効果がなかったということにはならないということに、私たちは気がつくべきではないでしょうか。

 なお、ジョシュ・レーナーの実証研究の要旨はこちらのリンク先にあります。
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