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アジアインフラ投資銀行への我が国の参加はありえない


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 AIIB(アジアインフラ投資銀行)へ我が国も参加すべきであるとする議論が、マスコミから広く出ています。日経新聞は「AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」と書きました。毎日新聞「加盟国の裾野が広がり、多様性を持った国際機関になる可能性が見えてきた以上、傍観を続けるのは得策ではない」とし、「AIIBの仕組み作りに関わる「創設メンバー」の申請期限は31日。なお距離を置く日米の孤立感が強まっている。」と書きました。朝日新聞「現実が変われば、それを仕切る制度も、遅かれ早かれ変わらざるを得ない。現実に不適合な古い制度を維持しようとしても、どこかに無理が来る。あるいは、現実不適合を起している制度の上に胡坐(あぐら)をかいて、米国や日本が、世界経済の国別・地域別バランスが大きく変わったにも関わらず、従来と同じ様に主導権を保持しようとしても、関係者から愛想を尽かされるのが落ちだ。」と書きました。いずれも、アメリカの顔色を窺ってAIIBに慎重姿勢を崩さない日本政府の姿勢を揶揄した記事の書き方です。確かにAIIBに日本が参加しないとすれば、AIIB融資と絡んだインフラ案件に日本企業が参画できる道はほとんどないでしょうから、実利面で日本にマイナスになるという側面はあるでしょう。
 しかし、そのような表面的なところだけで参加問題を議論するのは正しくありません。そもそもAIIBとはどのような銀行になることになっているのでしょうか。私たちがきちんと認識しておかなければならないのは、AIIBが純然たる国際機関になるわけではなく、中国共産党流の組織になるという前提です。世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)などの既存の国際金融機関は一様に主要出資国代表で理事会を構成し、この理事会の議事に基づいて運営されています。当然国際機関として位置づけられるAIIBも同じ仕組みに基づくべきものであるべきですが、これに対して中国の楼継偉財政相「西側諸国のルールが最適とはかぎらない」と、明確に否定しています。AIIBの最大の出資国は中国であり、本部は北京に置かれ、主要言語は中国語で、総裁は中国の政府高官経験者が担うことが表明されています。そしてその総裁によるトップダウンによって融資案件を決定することにすると表明しているわけです。つまり、実質的には中国共産党直系の組織だと見るべきものです。
 もちろん、欧州勢なども参加することから、採算性を度外視した運営をとることはできないと思われます。しかしながら、そのやり方は恐らく悪徳金融筋に近いものになることが予想されます。つまり、投資採算性の評価については緩く審査を行い、取り立ては厳しく行うというものです。そしてその過程を通じて、中国が周辺国への金融支配を行い、その金融支配を通じて周辺国を実質的に中国の植民地的支配領域へと変えていこうとするものではないかと想像できるわけです。IMFや世銀においても欧米による金融支配の様相は色濃くありましたが、恐らくAIIBを通じた中国による金融支配はそれを上回るものとなる可能性が高いでしょう。
 それでもそこから実利をえられるならば、参加すべきではないかというのが日本の主要マスコミの見解のようですが、あまりにも矜持のない判断だとは言えないでしょうか。無前提に参加すべきだというのは無責任すぎると考えます。最低限のこととして国際基準を受け入れた機関とさせなくては、参加するという選択肢はありえないでしょう。
 そしてこれは、戦後を支えてきた米ドル一極支配に対する明らかな挑戦だともいえます。中国は人民元を基軸通貨とする経済圏をアジアで構築しようという意図を隠していません。ですから、米ドル支配を快く思わない欧州勢がこのAIIBに乗ったのは、そういう意味では国家戦略的な意図もあったともいえます。米国は当然面白くないはずです。米ドルが世界的な基軸通貨から転落すれば、アメリカは従来のように経常収支の赤字を続けていくことができなくなり、米国の没落は必然になるからです。従ってAIIBにより将来の米中対立は不可避となったと言ってよいでしょう。この点からも対中戦略的に米国を味方に引きつけたい日本としては、参加しないことが正しい判断だといってよいと考えます。
 中国の外貨準備は3兆5000億ドル程度に達し世界最大と言われていますが、一方で不正に中国から持ち出された外貨は3兆8000億ドルとも言われています。つまり、実質的には外貨準備はないともいえる状態にあるわけです。さらに、中国は今バブル崩壊の瀬戸際にあり、それゆえにAIIBの設立によってインフラ輸出を急激に増やして、国内の過剰生産力を活用したいとの意図を持っているのでしょうが、バブル崩壊を止められなかった場合にはそこに莫大な資金が必要となり、対外融資どころではなくなる可能性もあります。そもそも人民元は資本取引においては今なお厳しい規制のもとにあります。要するに人民元は発展途上国通貨を脱していない存在で、この状態を維持したまま国際通貨になろうというのがもともと無理筋だともいえます。その観点からも、AIIBは大きな矛盾を抱え込んだ組織だと言うこともできるでしょう。
 こうした全体像を理解した上で、AIIBへの参加の是非を議論してもらいたいものです。


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