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TPP と社会的共通資本

 TPP に対しては、自由貿易か保護貿易かという視点で語られることが多いですね。もちろんその視点からも TPP について有益な議論を展開することはできますが、その問題よりも社会的共通資本との関係で考えることの方が、私としてはむしろ大切な気がします。

 「貿易」とは生産物のみに関する取引の話です。TPP にも生産物の話は当然ありますが、むしろ土地、資源、資本、食糧、医療、教育、労働、交通といった、社会的共通資本と関わる話が主たるものとなっています。こうした社会的共通資本は人間の社会生活に密接に関連し、国の経済と国民の生活の安定に重大な関わりがあるものだけに、もともと自由な市場取引とはなじまないということを理解してほしいわけです。

 タイで大洪水があって大変なことになっているのは報道でもよく知られた話ですが、あのタイの大洪水はどうして起こったものでしょうか。例年にない豪雨が襲ったからだともいえますが、恐らく30年前のタイのままであれば、大した被害にはならなかったはずです。といいますのは、田んぼをつぶして工業団地を造成していなければ、豪雨時の保水能力が低下することはなかったからです。すなわち今回の洪水は、土地という社会的共通資本の扱い方と密接に絡んだ出来事だったわけです。

 社会的共通資本に関わるものは国民生活や国家経済の安定と強く関わるために、単純に市場原理に従わせることになじみません。したがって、このようなものを通常の生産物と同じように自由に売買して処分できるようにするというのは、絶対に避けるべきことであり、どの程度まで認めるかということについては慎重な考慮が求められるわけです。

 タイ政府はこんな豪雨が襲ってくることを元々想定した上で、今のような工業団地の造成を行ったわけではないでしょう。ですから、新たな工業団地を造成する場合には、今までの豪雨対策に対する反省をした上での整備を、今後は考えていくことでしょう。

 こうした点を考慮すると、単純な市場原理に任せては解決しえない問題をはらんだものに対して、ラチェット規定(一度緩めた規制を強化することができないルール)を設定するということは、もともと無理があるのではないかと思います。そしてこの無理を TPP は行おうとしています。この点からも TPP には賛成できないわけです。

 そしてなぜそんな誰が考えてもわかるようなことを無視するようなことが押し進められているのでしょうか。そういった問題をまじめに考えていくと、投資会社が自由に利益を上げることを妨げてしまうからでしょう。誰の利益を考えた施策なのか、私たちはよく見ておく必要があります。

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