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安保法制は印象ではなく、中身に即して判断しよう!


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 安保法制において、予想されたこととはいえ、国会が紛糾しています。野党の女性議員が理事会室の前に多数集結し、鴻池委員長が理事会室から出ようとしても阻止し、邪魔をする女性議員を排除しようとすると「セクハラ」との筋違いの言いがかりを加えるという言語道断の事態まで起きています。この結果、参議院平和安全法制特別委員会を昨晩(平成27年9月16日夜)開くことができなくなりました。今朝(9月17日朝)も大きな混乱が続き、夕方には何とか委員会採決までは持ち込めたものの、どうやら明日(9月18日)にもこの混乱は持ち越されそうです。

 今回の安保法制が通ると、地球の裏側でアメリカが引き起こした戦争にも自動的に自衛隊が付き合わされることになるなどという思い込みを世間に広げてきたのが野党とマスコミです。彼らの反対は理に基づくものではありません。このことについて、改めて根拠に基づいて示していきたいです。

 今回の安保法制において、自衛隊が海外で武器の使用が許されるケースは極めて限られており、具体的には以下の2つのケースです。

 第一は米軍等のサポートに関わるケースです。ただ、これには「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に従事しているものの武器等に限る」との規定が入っています。我が国の防衛に資する活動に従事していない部隊の防御を自衛隊が行うことはできないのです。

 例えば、中国が日本を攻撃する場合に、日本の自衛隊や日本国への攻撃を敢えて避け、洋上に出ている在日米軍の艦船に対してのみ攻撃を行ったとしましょう。この場合に、日本の防衛のために駐留している米軍が攻撃されても、我が国自体はまだ攻撃を受けていないので、米軍を助けるために自衛隊が動くことができないというのは正しい状態でしょうか。こうした場合に米軍を助けることができないのでは、その段階で日米安保は機能しなくなります。米軍側が「日本を守るために日本周辺に来ているのに、俺たちが攻撃されても日本の自衛隊は助けようともしないのか」という気持ちを持つのは当たり前のことです。このような不自然な状態を終わらせたいが、かといって無制限な米軍への協力を行うわけにはいかないから、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に従事しているものの武器等に限る」としているわけです。これが危険なことなのでしょうか。

 第ニは国連の平和維持活動(PKO活動)における駆け付け警護です。自衛隊とともにPKO活動に参加している他国の部隊や、NGO活動に参加している民間人が危険にさらされた時に、武器を持って駆け付けて救出活動ができるという規定です。これについても、こうした規定を建前にして、紛争当事国の一方の側に肩入れしてもう一方の側を叩くために恣意的に利用できるのではないかとの心配は一応ありうるかと思いますが、そのようなことができないように、やはり厳しい条件を突きつけています。

 まず、①紛争当事者が停戦の合意をしていなければなりません。そして、②紛争当事者が我が国のPKO活動への参加に同意しており、③PKO活動が中立的立場を厳守している状態でなければなりません。受け入れ同意が安定的に維持されていることが確認できなければ、駆け付け警護はできないことになります。さらに、④国連安保理の決議とか国連総会の要請などがなければならないことになっています。つまり、紛争当事者の両側と国連の支持がない限り、駆けつけ警護はできないわけです。

 また、自衛隊が従来のものを超えた活動ができる規定としては、上記以外には主として以下の2つです。

 第一は在外邦人の保護に関わるケースです。この在外邦人の保護は在外邦人が危険にさらされていれば、常に行使できるというものではありません。例えば、中国において内乱が発生した場合に、邦人保護のために自衛隊を中国に派遣することができるかといえば、事実上無理だと言ってよいかと思います。なにしろ、邦人保護のためには中国政府がきちんと機能して公共の安全と秩序の維持が図られていて、なおかつ戦闘行為が行われていないということが前提なのです。その上で、中国政府が自衛隊が邦人保護のために出動することに同意していなければなりません。そして、中国政府と日本の自衛隊との間で邦人救出のための連携と協力が確保されていないと、自衛隊を邦人救出のために中国に向かわせることはできないのです。ありうるケースとしては、例えば中国国内の内乱が例えば上海周辺に限られていて、北京の方はまだ治安維持がなされており、北京の方では戦闘行為がすぐさま始まるということがない場合に、日本の自衛隊が北京にいる日本人を救出するために自衛隊機を北京の空港に向かわせたいと伝えた場合には、ひょっとしたらうまくいく場合があるという程度の話です。この時も当然ながら、中国政府がその件を了承し、自衛隊と中国政府の間で邦人救出のための連携・協力がとれた場合に限られます。当たり前ですが、この場合には北京にいる邦人は救出できるかもしれませんが、上海に住む邦人を助け出すことはできないのです。つまり、法人保護を建前として外国に攻め込むようなことは全くできない規定になっているわけです。

 以前にも書きましたが、今回の安保法制が成立したとしても、アルジェリアのプラントが襲撃されて日揮の社員が人質として取られた事件と同じようなケースが起こったとしても、自衛隊は邦人保護のために出動することはできません。あの場合にはアルジェリア政府は日本の自衛隊が邦人救出に参加することに反対しなかったでしょうし、アルジェリア政府と自衛隊の間で邦人救出のための連携と協力は成り立ったでしょうが、反政府勢力との間で戦闘行為が行われていたわけですから、自衛隊は出せないということになります。戦闘行為がある時には自衛隊は動けないのです。

 第二は米軍等の後方支援等に関してです。これによって地球の裏側で米軍が起こした戦争に自衛隊は参加させられると思っている方が多いかと思いますが、そんなことはありません。我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でない限り自衛隊は参加はできませんし、例外なく国会での事前承認を要することになっています。

 さらに、この後方支援等に関しては、米軍と一体化して行動することを回避する規定が入っています。現に戦闘行為が行われている現場では自衛隊は行動できません。活動の実施区域は防衛大臣があらかじめ定めなければならず、その範囲を超えた活動は認められません。そして実施区域やその近傍でも戦闘行為が行われるようになった場合、あるいはそのように予測される場合には、活動の一時休止を行わねばならず、実施区域に不都合が生じた場合には区域の変更を行うか、活動の中断を防衛大臣は命じなければならないとなっています。自衛隊は米軍の主力とは離れたところでしか行動ができないし、戦闘行為が自衛隊の展開地域に及んだ場合には活動を休止し、場合によっては撤退しなければならないのです。

 冷静に考えてもらいたいのですが、こうした規定からなる法案をいったいどう読めば「危険な戦争法案」になるのでしょうか。

 安倍首相はこれによって「日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、 切れ目のない備えを行う」と言っていますが、実際には切れ目だらけです。例えば日本の領海内に中国の潜水艦が潜航してきたことがわかったとしても、これを武力で排除することは、この安保法制が成立したとしてもできないでしょう。中国の漁船が再び小笠原の赤サンゴを取りにきたとしても、これを武力で排除することもできないでしょう。中国の潜水艦が領海に入っただけとか中国漁船が赤サンゴの密漁を行っただけでは、我が国の「存立危機事態」だと認定することはできないだろうからです。アルジェリアで起きたような事件があっても、戦闘が行われている限り、邦人救出活動はできません。

 通常の軍隊であれば、自国の領土・領空・領海に外国の軍隊が無断で入ってきて、警告しても出て行かない事態になれば、銃撃することになるでしょう。赤サンゴなどの自国の天然資源が外国人によって略奪されることが予見されれば、やはり警告を発して排除しようとし、それでもうまくいかなければやはり銃撃することになるでしょう。自国民が反政府勢力によって人質に取られる事件が発生し、現地政府が当該国の軍隊の出動に期待を寄せるような事態になれば、戦闘行為が発生していようがいまいが、軍隊が救出に向かうのが普通のあり方でしょう。そうした規定さえ入れられないレベルの今回の安保法制のどこが「戦争法案」なのでしょうか。与党に徹底的に逆らうことでしか存在価値を示せない野党の堕落ぶりと、法案の中身を正確に国民に知らせようともしなかった主要マスコミの歪んだあり方に憤慨するのは、私1人ではないと思います。


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コメント

1. 無題



この法案のメリットが全く解りません

当面の害が無いから、反対がおかしい、という事ですか?

2. Re:無題

>鼻毛さん
米国の力の低下によって、米軍は日本においてもプレゼンスを下げ、日本防衛の主力が米軍から自衛隊に移されたことがまずあるのではないでしょうか。この路線に基づいて、新ガイドラインが策定されましたよね。
もう一つは中国の国内環境の悪化が激しく、国内矛盾を外に向ける可能性が急激に高まっていることがあるのではないでしょうか。
確かにこんなザル法では意味がないという見方もあるでしょうけどね。

3. Re:Re:無題

>朝香豊さん

アメリカの対中東の為

という意見があります

4. Re:Re:Re:無題

>鼻毛さん
ガイドラインの改訂に際しては、日本側から中国に対する危機感を滲ませる文言の提案を行ったけれども、米国側が中国を仮想敵として明確化することへの抵抗があって、今の文言に落ち着いた経緯があるようです。事実、米国は新ガイドラインは中国包囲網ではない旨の発言がなされていますね。対米関係を重視する立場からは、中国の脅威について正確に提起することができず、具体例としてホルムズ海峡の話を持ち出さざるをえなかったというのが実際ではないかと思います。

5. Re:Re:Re:Re:無題

>朝香豊さん

これをやってもアメリカが中国やらから?日本を守る確約は無いと思いますし

アメリカの大義無き中東攻めに加担すると、中東から敵と認識され、それが日本の国益では無いのでは?

と思うのです

まあ、簡単に言うと、アメリカなんか正義では無く、下手すれば世界の火種製造元

左翼?の意見を利用し、のらりくらり、我関せず、の立場が、国益であると考えます


6. Re:Re:Re:Re:Re:無題

>鼻毛さん
いざという場合にアメリカが日本を守るかどうかは確かにわかりません。守るかもしれませんし、守らないかもしれません。それでも、守るかもしれないということが、対中的には抑止力になるはずです。中国だって、アメリカが出てくるかどうかわからないわけですから。
今回の安保法制によって、日米を簡単に離反させるような作戦は中国は取りづらくなったのは確かで、その点では効果はあったと思います。
米国の後方支援などを行う際には、改正前の周辺事態安全確保法の時より要件が厳しくなって、例外なき国会の事前承認が必要ということになりました。その点では中東で米国に協力するのはむしろ今回の法改正でやりにくくなったと思います。(この件については、私は今度の法改正がよかったとは思っていないのですが、中東を心配する世論に対しての配慮を政権側は見せたということだと思います。)
そもそもアメリカが国力の低下から世界の警察の地位から引き下がろうとしていて、日本からさえ米軍を撤退させることを検討しはじめている実情に即せば、先送りできないという判断は間違っていなかったと思います。

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