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IMFの動きと世界史的な変化


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 前回はIMFが歴代の専務理事が欧州勢で占められるくらい欧州と関連の深い組織であることを確認しました。そして、IMFが欧米の金融資本の利益のために動いてきたとしても、欧州の没落を自分の政策によって導くことはやれる話ではなく、ようやく方針転換をしてきたのではないかということを、見ていきました。

 ここまでの知識に従えば、IMF自体が設立当初から欧米の金融資本の代弁者だったように思えてしまうかもしれませんが、実はそういうわけではありません。意外に思われる方も多いと思いますが、IMFの設立趣旨のガイドラインを書いたのは、何とあのケインズです。新自由主義者とはまさに対極的な関係にある、あのケインズなのです。

 ケインズは、市場が有効に機能しないことが多いことをまず前提とします。この上で、戦後の世界を安定したものにするためにはどうすればよいかを考えました。市場任せだけに頼ってはうまくいかないことの多い経済を刺激するためには、支出の増大、減税、金利の引き下げなどの経済拡大政策を各国に取らせなければならないわけですが、これをしっかりとやれるようにするためにこそ、国際協調が必要だと考えていたのです。ですからIMFもそのための機関として構想されたものでした。

 ところがこのIMFが、レーガン・サッチャー時代を経て、新自由主義の経済学が広がっていく中で変質していきました。市場原理に対する信頼を前提とし、赤字の削減、増税、金利の引き上げなど、経済の縮小と破壊につながる政策を取らせる、真逆の組織になってしまったのです。

 このあたりをもう少し具体的に見ていきましょう。IMFは、経済に行き詰まりを見せた発展途上国に対して、融資と引き替えにして、貿易の自由化、資本の自由化、政府系の経済セクターの民営化などの市場経済至上主義(いわゆる構造改革)を求めていきました。こうした処置は、よく耳にする言葉でしかないので、極めて普通のことのようにしか思えない方も多いと思いますが、実はこうした処置が欧米資本の草刈り場を提供する役割を果たしたのです。

 例えば、IMFは、為替相場を維持するためには、外国資本の逃避が止まる水準まで金利を引き上げればよいと言っていました。この策に従えば、金利水準が例えば年利で30%にも引き上げられることになったりします。確かに金利が高ければ、通貨下落のリスクを補ってあまりある利益が得られそうですから、資本の流出は止まるはずです。従って、為替相場を維持する目的だけ考えれば「正しい」処置ともいえなくもありませんが、その副作用として借入に依存せざるを得ない国内企業の経営はどん底にたたき落とされることになります。

 もう一つ別の例を挙げれば、IMFは非効率な国内産業を保護しているから経済が非効率なままになるのだと言い、国内産業への補助金を撤廃させ、グローバル企業との競争に晒させるようにしました。この策を受け入れてしまうと、当然ながら、国内産業がグローバル企業との競争に敗れることになります。そしてこのような国内産業に対してグローバル企業が「救済」に乗り出し、安価で乗っ取るということも行われるわけです。そして乗っ取りが行われた後は、高配当を要求することによって、グローバル企業がおいしい利益をいただくことになる、というわけです。

 前回のブログで、1997年の経済危機に韓国が見舞われた例を取り上げましたが、この後に韓国企業に対する外資比率が急上昇したことはよく知られています。Korea Daily Focus 2012年6月5日号記載の情報によれば、あのサムスンにしても外資比率は43.3%に達しています。そして、韓国企業の挙げた利益は、高い配当性向を通じて、欧米金融資本に吸い上げられてしまう構造となってしまったのです。

 また、例えば、IMFは金融機関の体質を問題にし、自己資本比率を早急に改善せよと迫ります。自己資本比率を引き上げるためには、資本を増強するか、貸出を減らすしかありません。資本増強が容易にできない経済危機状況にあっては、貸出を減らす方向に動くのが普通の流れです。しかしこれはいわゆる貸し剥がしを生み出し、企業倒産を激増させ、銀行側にも却って不良資産を増やさせることにもなるわけです。そのため、否が応でも資本増強の必要に迫られ、結果として外資の導入に頼らざるを得なくなり、金融資本を外資に乗っ取られることにつながりかねないわけです。再び韓国の例を取り上げれば、韓国の国内の大手の7つの銀行は、ウリィ銀行を除いた全てが外資比率5割超という状態になってしまいました。(ウリィ銀行は韓国預金保険公社が7割以上の資本を押さえている、準公営の金融機関です。)

 以上の話を読んで、欧米の資本の悪辣さに驚いた方も多いかと思いますが、これが「規制緩和」とか『構造改革」とか「貿易の自由化」とか「資本の自由化」といった名の下で行われてきたことの実際です。

 こうした悪辣な動きに対する反作用が、近年世界で広がり始めました。「ウォールストリートを占拠せよ」というアメリカでの動きもこの一例です。IMFの方針転換も、直接的にはお膝元の欧州の危機から始まったことですが、世界的な反作用の動きの中にも位置付けられるものでしょう。

 戦後直後の米ソの冷戦構造の中で、社会主義への対抗を必要とした時代には、むき出しの資本主義は許されませんでした。しかし社会主義の実態が徐々に知られるようになり、これに対する幻滅が広がるようになってから、資本主義はだんだんと横着になってきました。これにより1980年前後から古い市場原理主義的な資本主義が徐々に復活していきました。しかしこうした荒っぽい資本主義の弊害がもはやこれ以上は許されない状況になってきて、再び大きな揺り戻しが起こり始めているのではないかと、私は思っています。つまり、世界史的に見ても歴史の転換点に突入してきたのではないかと思います。

 この歴史の転換点にあって、むき出しの市場原理主義的な資本主義とは訣別して、健全な国民経済の発展を求めていく立場に移行すべきだと思われる方はクリックをお願いいたします。


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コメント

1. 明るく振り返りたいです

IMFという組織は、最初から“ああいう性格”ではなかったのですか。
今回も“目から鱗”が落ちました。

今私たちは<歴史の転換点>という、貴重な場面に直面しているのですね。
ならば世界と日本の動きを一段としっかり見ておく必要がありますね。
数年後に(あぁ、あの頃から世界は良い方向に変わってたんだよな。)と明るく振り返りたいです。

2. Re:明るく振り返りたいです

>3saka 脳腫瘍、顔面麻痺、片耳になったが人生悪くないさん
今回の記事は、アップしてから気付いたのですが、かなり難しかったと思います。よく最後まで読んで下さいました。ありがとうございます。
実は世銀の方はスティグリッツの奮闘もあって、すでにかなり変化してきたように思います。IMFも変わってきました。この流れを何とか進めて行きたいですね。

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