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冷静な議論を求めたいイギリスのEU離脱



イギリスのEU離脱に関して思うところを述べます。

今回の離脱決定に対して、非合理で感情論に流された離脱論に多くの国民が流されたとの見方がマスコミを通じて流れていますが、それは現実を反映しているとは言えないでしょう。離脱か残留かに関しては数ヶ月にわたって激しい議論を国を挙げてずっと戦わせてきて、離脱派の議論も残留派の議論もどちらにも国民は数多く触れてきたはずです。しかも国営放送のBBCやフィナンシャルタイムズ・デーリーミラー・タイムズなどの有力紙は残留派の立場の論壇を展開していましたから、マスコミを通じての論陣としては残留派の見解の方がメジャーであったと言えるでしょう。しかも若くてきれいな女性議員の殺害があり、しかも彼女の誕生日が投票前日の6月22日で、彼女の死を悼む行事がこの誕生日に大々的に行われたことから見ても、むしろ非合理な感情論は残留派を強める方向に動いた可能性の方が高いというべきではないかと思います。

非合理な感情論と言えば、イギリス製品に対して高率の関税がかけられるようになり、イギリス経済に極度のダメージがもたらされるといった議論が離脱派からなされ、印象論として実際に広がりましたが、これは現実的にはありえないでしょう。EU内部において関税によって国内産業の保護を図るという考えはすでに勢力を失ってきており、イギリスとEUとの間で現状の貿易状況に即したFTAを締結することになる、つまり関税ゼロを継続することになるというのが現実的な見通しだと思います。(但し、欧州銀行監督機構のロンドンからの移転、ユーロ建て証券のクリアリングハウス(清算機関)のロンドン設置の内定の取り消しなどもあって、金融においてのダメージはすこぶる大きいと思います。)

また、離脱によって安全保障上の足並みをEUと揃えられなくなるとの議論も非合理な感情論だと思います。安全保障上の利益はイギリスとEU加盟国ではほぼ共通していること、NATOという枠組みとEUという枠組みは同じではないことを冷静に見るべきだと思います。むしろEU規則のために、仮に危険人物であっても、EU加盟国の国籍を持つ人物であれば、入国拒否したり国外退去に処することは難しくなっているのが実際でしょう。

離脱派が持つ不満は主に2点です。1つはEU法が国際条約扱いで、イギリスの国内法よりも優先することです。例えばこのEU法によって、曲がったバナナやキュウリは売ってはいけないといったことまで規制されるというのは耐えられないというのは、主権国家であるならば当然でしょう。(但し、曲がったバナナ・キュウリ法は現在では廃止されています。)

もう1つは移民の問題です。移民の流入を阻止できず、移民の流入によって国内の雇用が奪われ、移民に対する社会保障の経費が大きくかかることになることへの反発があります。移民が主に3K職種に就き、しかもそうした底辺の仕事から抜け出すことが難しいことによって次第に非差別感情を高めていき、社会的な不安定さが増大することによる社会的なコストも大きいです。移民が自分たちの文化や習慣を捨て去ることがなく、異文化を持ち込むことによる文化摩擦はこうした非差別感情と結びついて社会を破壊する力を持ちうることに、イギリス人が危機感を持つのも無理はないでしょう。移民問題については、移民の側も生粋のイギリス人の側もどちらも不満を高め、対立が強くならざるをえない点を見落とすべきではないでしょう。

こうした問題に直面しているのは、決してイギリス1国のみではありません。私からすれば、離脱派の持つ不満はEU全体に広がっている問題でもあり、この問題解決にEUが真剣に取り組まなければ、EU自体が瓦解していく恐れも高いわけです。

この点で、「EU域内労働者の移動の自由を認める場合に限り、イギリスはEUの単一市場に参入することができる」としたEU首脳会議の声明は、自分で自分の首を絞めたに等しいと言うべきでしょう。むしろEU域内の労働者の移動は受け入れ国の承認手続きによって規制され、どの程度の規制にするかは各国の主権に基づくように改変する方が正しい方向性だと考えます。今回の声明を発したことによってEUは自己改革の手足を縛り、これを不満に持つ多くの一般市民との摩擦を大きくせざるをえないわけです。

金融センターとしてのロンドン(シティ)の没落、スコットランドなどの分離独立の動きなどがイギリスにもたらす影響は甚大で、これらの否定面も当然考えざるをえませんが、それらを含めて冷静に議論を組み立てないとフェアではないのではないかと私は考えます。

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