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建物の下に盛土がないのは手抜き・欠陥ではない



 豊洲新市場の建物の下に盛土をしていなかったということが手抜き工事であったかのような論調がマスコミを覆っていますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

 確かに公表されてきた土壌・地下水対策の概略図(下掲)と実際の豊洲新市場の建物の実際との間には違いがありますが、私からすれば正確な図よりもこの図のほうが対策のポイントを一般の方々に伝えるという点ではむしろ優れているとも感じられます。

豊洲新市場の盛土

 図の左側を見ていくと、「A.P.+2.0m」と書かれているところがわかると思います。「A.P.」というのはArakawa peilの略で、「荒川工事基準面」(干満の影響を受けて変動する河口近くの荒川の水面の最低水位)のことです。(peilはオランダ語で、明治のはじめにオランダの技師から治水事業を学んだために、この分野にオランダ語が残っているのだそうです。)

 つまり、「A.P.+2.0m」は荒川工事基準面よりも2メートル高いという意味です。A.P.+2.0mもあれば、毛細管現象が働いても地下水(深いところにある汚染土壌の汚染物質を含んでいると推察される地下水)がここまで上がってくることはないであろうという判断です。より正確に書けば、地下水位がA.P.+1.8mより上まで来ないように管理することになっているので、毛細管現象でそれより若干上まで水が上がってくるとしても、A.P.+2.0mまでは来ないであろうという判断です。水位の管理については図の下方に「水位・水質を継続的に監視し、地下水位を一定に保ちます。雨水浸透による水位の上昇が確認された場合は、地下水を組み上げ、処理施設で処理した後、放流します。」との説明書きがありますが、それはこのあたりの事情を説明しているものです。

 そしてさらに念のために、このA.P.+2.0mのところに砕石層を敷きました。つまり、仮に毛細管現象が予想を越えて伸びてきたとしても、砕石層であれば毛細管現象は働かないので、これより上に地下水が上がってくることはないからです。図の右側に砕石層の説明として「毛細管現象防止」と書かれているのはその意味です。砕石層よりも下のところに残されている汚染土に含まれている有害物質が地下水に溶け込んで毛細管現象などで上に上がってくるということを、砕石層で完全に食い止めていると考えればよいでしょう。地下水に溶け込むということがなければ、有害物質が地上まで上がってくるということはほぼ食い止めることができると考えられるからです。(なお、平成28年9月15日現在はまだポンプを稼働させていないことがわかりました。したがって、空洞にたまっている水は地下水が上昇した結果だと考えるのが妥当だと思います。この点を追記しておきます。)

 そうすると、A.P.+2.0mよりも上にある汚染土壌を除去して、そこに問題のない新しい土を入れさえすればよいということになります。ただ、豊洲は東京ガスの工場であった時には、着岸する船に合わせた土地の高さが望ましいため、A.P.+2.0m+2.0m、つまりA.P.+4.0mという低い状態にありました。これでは津波とか高潮とかの対策としては今ひとつ不安があるということで、さらに+2.5mの盛土をして、A.P.+6.5mというのを地上の高さにしたわけです。

 盛土を汚染物質の上昇を防ぐ蓋のような役割だと誤解していると、全体像が見えなくなるかと思います。汚染物質の上昇は地下水位が上がらない限り問題になることはないのです。盛土は汚染土との入れ替えと、津波・高潮対策の意味合いでなされているものです。

 盛土が汚染物質の上昇を防ぐ蓋だと考えているとすれば、建物の地下に盛土がなく空洞になっているのは不安かもしれません。しかし、砕石層より上には汚染物質はほぼ完璧に上がって来られないのですから、ここに盛土があるかどうかは豊洲新市場が食の安心・安全を守れるか守れないかとは全く関係ありません。むしろ地盤としては極めて弱い盛土部分に巨大建物を建築することのほうが、安全面では問題が大きいと言わざるをえません。

 汚染土には揮発性の汚染物質があるから、地下水が来るかどうかだけで問題を考えるのは不適切だという考えの方もいらっしゃるでしょう。そういう方々に考えてもらいたいのは東京ガス時代のことです。東京ガスの工場があった時にも工場労働者の健康維持のための環境基準があったわけです。つまり、強烈な汚染土の塊をわずかなコンクリートでしか遮蔽していなかったとしても、それで問題になる事態には至っていなかったわけです。つまり、土中の揮発性物質がどれほど高濃度であっても、それがコンクリート遮蔽を乗り越えて空気中に出てくることはほとんどないということは、すでに実証されていると考えてもいいでしょう。

 イデオロギーによらずに冷静に事実関係を押さえたいものです。

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コメント

おっしゃる通りです

逆に言えば、築地の地下にはいったい何が埋まっているのやら、建築のイロハも知らないマスゴミが、とにかくイメージでどうこう、では新聞社の印刷所は危険ではないのでしょうか?

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