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加計学園問題は議論に前提を整理して考えたい



 文部科学省の反対を官邸が押し切って加計学園に対する獣医学部設置を認める方向性を打ち出したことを巡って、連日国会が空転しました。「総理のご意向」などと書かれた文書の真偽が議論の中心になり、もともとの官邸側と文部科学省の側との対立点が曖昧にされ、噛み合わない議論が続けられてきました。そこで、官邸側と文部科学省の側との対立点がどこにあったかを明確にするために、「国家戦略特区ワーキンググループ」の議事録を紐解いてみたいと思います。

 平成27年6月8日に開かれた「国家戦略特区ワーキンググループ」には3名のワーキンググループの委員、地方創生担当の内閣府の職員や農林水産省の担当職員に加えて、文部科学省の担当職員も出席して議論が進められています。
国家戦略特区ワーキンググループ議事要旨1

 この中で文部科学省の北山専門教育課長が「文部科学省では獣医系大学の新設等を検討するに当たっては、獣医師の需給見通しを含めて養成数を検討することが不可欠だと考えており…」「無制限に養成するということが質の確保の観点から望ましくない」と発言されています。

 これに対してワーキンググループの本間委員からは「国民の健康、安全に対する確保というか、そのところは農水省さんの試験がある限りは、我々は確保されていると解釈するわけで、それを超えて例えば無制限にというお話をしましたが、無制限にたとえ獣医師がふえたとしても、それはそれだけの知識と技術を持っている人たちがふえるというだけであって、何ら国民にとって害のある話ではない」との発言がありました。

 また、この会議の後の平成27年9月16日に開かれた「国家戦略特区ワーキンググループ」でも、ワーキンググループの本間委員は「獣医師が増えるか増えないかということは文部省のマターではない」との立場から、文部科学省に対して「定員管理の話は別の話として、ないしは考慮に置かずに日本の研究レベルを上げるという観点からぜひ御検討いただきたい」と発言しています。
国家戦略特区ワーキンググループ議事要旨2

 ここから明らかになるのは、官邸としては、獣医学部の新設の要望があるならば、十分な研究環境が実現できるならば数を限定することなく認めても構わないのではないかという方向性にあったのに対して、文部科学省としては定員増を押しとどめたい立場から1校の獣医学部新設も認めたくないという立場に立っていたということでしょう。

 さらに言えば、獣医師の国家試験の合格レベルを引き下げないのであれば、獣医師の国家試験の受験者数が増えても獣医師の質の低下の問題は生じないのではないか、そもそも文部科学省が省の立場で考えるべきは日本の研究レベルを引き上げることであって、獣医学部の卒業生の就職口があるかないかということではないのではないかというワーキンググループの委員たちからの議論に対して、文部科学省の側からは有効な反論はありませんでした。つまり議論としては文部科学省はワーキンググループの委員に対して敗北したと言われても仕方ないのが実際のところです。

 それでも政治的には文部科学省の立場にも配慮して、愛媛県や今治市とタッグを組んで長年に渡って獣医学部の新設を求めてきた加計学園の新設だけを認める一方で、京都産業大学の新設は今回は認めないという決定にしたというのが今回のいきさつでしょう。実際、日本獣医師会の会長短信「春夏秋冬」には藏内勇夫会長が「この間、私や日本獣医師政治連盟の北村委員長を始めとした本会の役職員は、できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方に、本会の考え方にご理解をいただくよう奔走いたしました。このような皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました。」と記されています。
日本獣医師会の会長短信「春夏秋冬」

 私の個人的な見解としては、文部科学省が獣医学部の学部定員に配慮することに意味はあると思いますから、文部科学省の立場を単純に既得権益の擁護者として非難する立場には立っていません。ただ、国際水準と比して我が国の獣医教育水準が著しく劣っていて抜本的な改正が必要だということは随分前から指摘されながらも、改革が遅々として進んでこなかったというのも実際のところでしょう。生徒数に対して教員数が圧倒的に不足しているとか、実習・応用の授業が圧倒的に不足しているとか、施設の老朽化が進んで先進的な教育ができる環境にないとか、様々なことが言われ、この問題を解決するために国公立の獣医学部・獣医学科の集約が必要だということも20年以上前から指摘されてきました。こうした問題の解決のためには予算処置が必要であり、文部科学省単独ではいかんともしがたいところがあったということも理解はできますが、必要な改革を行うのに文部科学省が後ろ向きの姿勢に終始してきたと言われても仕方がないのではないかとも感じます。つまり、筋論としては従前の獣医学部・獣医学科の改変によって教育水準を引き上げていくべきだとは思いますが、それが進まない中では国際水準を満たした獣医学部の新設を認める方向によって風穴をあけるしか方法がなかったとも感じるところがあります。

 こうした全体像をまずは理解した上で、加計学園に対する認可の適否について冷静な議論が展開されることを期待します。

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コメント

お久しぶりです

さて(本記事内容とは直接関係ないのですが)、「ひるおび」がやらかしたようです。


【完全なる捏造!だからテレビは信用できない...】ひる◯びのフェイクニュース!意図的に握手場面をカットして印象操作

https://www.youtube.com/watch?v=EblzAjm_zsQ&t=3s


・・・現在は、このようにネットで裏取りができる時代なのでまだマシなのですが、いちいちこういうことをしないと信用できるかどうか判断できないという状況は、何とかならないでしょうかねえ・・・。

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