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加計問題によって浮かび上がった岩盤規制の実態



 今回の愛媛県今治市における獣医学部新設をめぐる議論の中で、完全に無視されている大事なことがあります。それは、日本の獣医学教育のレベルが低くて抜本的な改革が必要だということが長年にわたって論じられながら、なかなか進んでこなかったという現実です。

 日本の大学では独立した獣医学部は未だに少なく、農学部などの一学科として獣医学科が置かれていることが一般的です。このような軽い扱いでは専門の獣医学教育を充実させることは極めて困難だとし、専門的な教育を実現するためには複数の大学の獣医学科を統合して格上げした獣医学部を設けるべきであるという議論もかなり前からなされてきました。例えば、平成12年に日本学術会議は、座学中心の日本の獣医教育は欧米で広がっている臨床等の実務教育に重点を置いた獣医学教育に大きな遅れをとっていることを指摘し、一般に私立大学よりも充実した教育環境が期待できる国立大学においてさえ、獣医師国家試験出題科目の17科目に対応した教育すらできていないとし、獣医師養成に大きな支障を来していることを指摘しています。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-17-t933-9.pdf

 このようにこうした問題点が長年にわたって指摘されながら、獣医学改革は遅々として進まず、我が国は狂牛病・口蹄疫・鳥インフルエンザなど従来にはなかった問題にさらされながら、これらに対する専門の獣医師の不足という事態に大いに苦しめられてきました。特に四国は獣医学を扱う大学も研究機関も1つもないという実情の中で、苦悩の度合いも大変大きかっただろうというのは十分に想像できます。四国4県の知事が連名で四国に獣医学部のある大学を作ってもらいたいという要望を出したのは当然のことだったでしょう。

 国際的に求められる水準で獣医師養成教育ができる大学をこれまで獣医学部のなかった四国に作るという意義は、空白地帯を埋めるという意味だけでなく、これまでのレベルを塗り替える獣医学教育の拠点が日本にようやくできるという観点から見ても、極めて意義深いものがあります。四国に獣医学部を作っても卒業生が四国に残るとは限らないというのはその通りではありますが、獣医学の専門家が集まっている先進の研究拠点があるということがいざという事態の発生に際して極めて有益であるということもまた認めるべきでしょう。

 これまで獣医学教育の改革が遅々として進んでこなかったのは、政治力を持つ日本獣医師会が獣医師の既得権益を守りたいとして強力に活動した結果でもありますし、天下り先などを確保のために既存の大学に配慮した許認可に徹したい文部科学省の思惑でもあったでしょう。ここに風穴が空くということが「行政を歪める」ことになるのかどうかは立場によって違うかと思いますが、ここに問題の本質があると私は考えます。

 私はこの加計問題が持ち上がるまでは、政府直属の諮問会議が大きな権限を持つことに否定的な見解を持っていました。国民の投票によって選ばれたわけでもない人たちが「民間議員」と呼ばれて、あたかも正当な選挙によって選ばれた普通の議員と同じような呼ばれ方をすることからして胡散臭さを感じていました。「岩盤規制にドリルで穴を開ける」という安倍総理のものの言い方にも民主的な手続きを軽視する匂いを感じていました。しかしながら、そんな建前論ではどうにもならない現状が政治を覆っていることに今回の騒動を通じて気がつきました。

 また、岩盤規制を突破するための政治主導の仕組みというのであれば、有力な政治家の恣意性が非常に有効に働くことになると考えられるでしょうから、ここに対して重大な懸念を持ってきました。ところが、今回の加計問題をめぐる国会の閉会中審査を通じてわかったのは、政府直属の諮問会議の議長を総理が担っていたとしても、総理の恣意的な意向がそのまま反映されることがないようにどうやら制度が作られているということでした。このことを加戸前愛媛県知事は閉会中審査で「結局構造改革特区で特区の本部長は総理大臣ではありますけれども、実務は全て所管省がやりますから、文部科学省が仕切って農林水産省とお互いにできません、できませんという返事がかかってくるから、とても総理の手の及ばないところで既得権益団体の岩盤に阻まれているんだということを感じながら、しかもそれが15連敗いたしましたから、大相撲で言えば15戦全敗だと引退の声になるわけでございます」と表現しました。第一次安倍政権の時を含めて「対応不可」として門前払いにされ続けた今治市の提案が、民主党の鳩山政権の時に「速やかに検討」に格上げされ、この流れを引き継いで現在の安倍政権下で2017年1月になってようやく「特区認定」されたという一連の経緯の中には、加計理事長と安倍総理とが親友であるがゆえに行政が捻じ曲げられたという要素はないでしょう。総理は今治市から獣医学部の新設に関して特区の申請が出ていることは当然知っていましたが、この獣医学部が加計学園のものであることは特区認定が決まった1月になるまで知らず、その点を知らされた時に驚かれた表情を見せたようです。こうしたことも閉会中審査の審議を経て明らかにされました。

 本来であれば、必要な行政が必要なところに回っていかない現実こそ野党が与党を攻め立てる材料とすべきなのに、野党(維新を除く)は政権の揚げ足取りに終始することしかできていません。この加計問題に至っては、ようやく必要な改革になんとか向かい始めた行政の邪魔を行う立場に立っていると言わざるをえません。まともな政策論議によって政権与党を揺さぶる意欲にも能力にも野党が欠けている中では、諮問会議が大きな権限を持つのもやむをえざるところだと考えるようになりました。

 今回のこの馬鹿騒ぎを通じて、国家・国民のことを考えているのは一体どういう人たちなのかということを、冷静に考えてもらいたいです。

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