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金融緩和だけでも妙薬となりうるのか?


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 The Economist に "The mystery of Jackson Hole" (ジャクソンホールのミステリ-)という記事が出ているのを見つけました。Jackson Hole というのはワイオミング州の都市の名前で、ここで毎年開かれる経済政策シンポジウムには、世界各国の中央銀行総裁や高名な経済学者が集まることで知られています。

 そして今年も Jackson Hole ではこのシンポジウムが開催されたわけですが、この会議の様子を記事は次のようにまとめていました。

 Preying on their minds is a discomfiting fact: nothing they have done has worked, and they don’t know why. (彼らの頭を悩ませているのは、打ちのめされるある事実である。やってきたことが何一つうまくいかず、なぜうまくいかないのかもわからないのだ。)

 中央銀行の総裁というのは、各それぞれの国の金融政策の舵取りを決める役職です。そして今年も世界中からこの中央銀行の総裁たちがジャクソンホールのシンポジウムに集まったけれども、みな自分たちのやってきたことがほとんど効果がなかったという現実に直面して、どうしたらいいんだと頭を抱えている様子だったというわけです。この状態を "The mystery of Jackson Hole" (ジャクソンホールのミステリ-)として表現していたわけです。

 そして、ある会議参加者の発言を引用していました。

 “What’s holding the economy back [despite] such accommodative monetary policy for so long?” (これほどまでの金融緩和政策をこんなに長期に渡って続けてきているのに、どうして経済は上向いてくれないのだ?)

 2007年の初めの頃は、イギリスもユーロもアメリカも、政策金利が5~6%と高い状態にありましたが、その後のリーマンショックとユーロ危機に直面して、現在では0~1%程度のところまで落ちています。非常に大きな金融緩和を実行してきたわけです。ところが失業率はどの地域も2007年段階から4%程度高い状態になったままで、大きな改善はありません。ユーロに至ってはさらに上昇を高めており、11%を越えるまでに達してしまったのです。

 一口に「金融緩和」と言いますが、アメリカとユーロ圏の金融緩和の水準は半端なものではありません。以下のグラフは2007年1月と比較すると、2012年5月には、アメリカのマネタリーベースが3倍以上、ユーロが2倍以上に伸びていることがわかります。(赤線がアメリカ、緑線がユーロ、青線が日本です。)




 さて、日本においても金融緩和が全然足りないという声が一部から起こっています。確かに上のグラフを見る限り、日本の金融緩和は欧米と比べて大人しい水準に留まっているように見えます。しかしながら、欧米の経験を見れば、金融緩和こそが絶対的な効果を持つと考えるのは、あまり現実的とはいえないでしょう。そもそも日本はずっとゼロ金利政策を採用してきたわけで、本来金融緩和の余地がこれ以上さほどあるとはいえないと考えています。

 金融緩和が効果を持つとすれば、それは適切な財政政策と連動した場合のみでしょう。先程欧米の失業率は2007年水準から4%程度高いと書きましたが、アメリカだけは一時の10%程度から8%程度に2%緩和しています。これはアメリカが強力な財政出動を行ったことと、当然大きな関係があると考えるべきです。(念のために、アメリカの失業率は2007年当初では4~5%程度で、幾分改善したとはいえ、現在でも当時より4%程度高い水準にあります。)

 金融政策だけに頼っていてはミステリーから脱却できないこと、デフレから脱却するには強力な財政出動が欠かせないことに、気付くべき時がきていると考えます。

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コメント

1. おはようございます!

朝香豊さん いつもコメントありがとうございます(*^.^*)
更新のメールの度読ませて頂いて要るのですが、私にはなかなかコメント難しくお恥ずかしい限りです。
これから、山程勉強です。
これからも、お邪魔させて頂きます。

2. Re:おはようございます!

>syo-tenさん
いつもコメントありがとうございます!
確かに簡単な話ではないですね。わかりにくくてごめんなさい。

3. “~だけ”じゃダメですよね

「いくら<金融緩和>しても、銀行の口座に積み上がるだけだ」という話がありますよね。
だから「<金融緩和>だけでなく、ドンっと<財政出動>(公共事業)しよう。」という話ですよね?
朝香様、クルーグマンの「さっさと不況を終わらせろ」という本をお読みになりましたか?
あの本にもそのように書いてあります。

“スタンドプレイヤー”前原大臣は先日、<国土強靱化>について「昔の政治に逆戻りするのかという感じがする。公共事業をまたばらまく先祖返りだけは、絶対に認めてはいけない」
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%c1%b0%b8%b6&k=201207/2012072500459
などと批判していました。

また誰かに「日銀に金融緩和を要求すると、格好いいですよ」などと吹き込まれただけなのでしょうね。
「政府と日銀が協力する」っていうのは、<公共事業>を増やすことなのに・・・。

4. Re:“~だけ”じゃダメですよね

>3saka 脳腫瘍、顔面麻痺、片耳になったが人生悪くないさん
全くその通りで、今は金融緩和をしようと思って日銀が国債を買いに行っても、銀行が売ってくれないところまで来ています。それで日銀は本来金利がつくはずのない日銀当座口座に利息(年利0.1%で、1年以下の短期国債と同じ水準)を付けることで、名目上金融緩和をしている形にしています。日銀が価格変動の大きい株式などを直接に購入するするという奥の手もないわけではないですから、金融緩和の余地がないとまでは言いませんが、日銀自体がそこまですべきかどうかは、単純に言ってよいのか、疑問を感じます。

5. Re:Re:おはようございます!

>朝香豊さんへ
とんでもないです。
ついてけるよう頑張らなきゃ(*^.^*)

6. Re:Re:Re:おはようございます!

>syo-tenさん
ご丁寧にありがとうございました。<(_ _)>

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